恐らく馬鹿にされているのだろう。
そんな事は、そうしてあの男の考えそうな事は重々承知なわけだ。
簡単に他人を陥れ命を奪うあの男に付け狙われる理由は分からない。
分からないというのは詭弁だ、
分かりたくないだけだとは思う。馬鹿馬鹿しいのだ。


「何してんのよ」
「随分景色が変わっちまって」
「はぁ?」
「色が、欲しいわけだ」


俺は。
礼儀正しいドフラミンゴはそう告げ一礼を。
怪訝そうな眼差しを逸らす事さえ出来なかったは僅かにたじろいだ。
雨粒が染み込んだ暗い色の壁はじっとりと湿っている。
ヒヤリとした感触が背中からダイレクトに伝わり
おぼろげだが古い記憶が蘇りそうになる。
やはり思い出さなかった。勘違いの類だ。


「あんた、それ以上派手になってどうすんのよ」
「だーから、俺じゃねぇんだよ」
「単に追い掛け回したいだけでしょ」


捕まえるまでが楽しいだけのお遊びだ。


「楽しまなきゃ意味がねぇ」


俺が生きてる意味がねぇだろう。
お前の生きている意味だなんて知りはしないと思いながら
ドフラミンゴの生きている理由を考える。
自分自身生きる理由なんて分かりはしないのに
他人の事なんて分かるのだろうか。
分かる道理はない。こじ付けならどうとでも。


「まあ、いいじゃない」
「フフ」
「何れ分かるわ」
「どうだか」
「そう思うでしょ?」
「さぁなぁ」


決して自ら答えを導き出そうとはしない。
追われる小動物の疾走劇は延々繰り返される。
写る景色は果てなく変わらずそれでも変わる事を、
景色が、色が変わる事を望んでいる。
それなのにドフラミンゴは真実に気躓く事を恐れている。
ああ、それでも。




それは君も同じ。



これはこれで幸せそうだ
2007/1/13