悪い女だ。は。
あれは完全に悪い女がモデル化したようなものだと称したのは 確かスモーカーだったと記憶している。
まあそれも可愛いじゃないのと答えた青キジは青キジで心ここにあらず、
ミニゲームか何かをやっていたものだから。

要するにその時点での被害者はスモーカーだったのだろうと予想できる。 大体にして寡黙なあの男がうっかりとでも口を滑らす程辟易しているのであれば 相当に悪い女なのだろう。どうだろう。


「あれー?」
「・・・あんたねぇ」
「嫌なトコで出て来んのねーあんた」


暗闇に立っている女の気配は感じ取る事が出来ず、
何故気づいたのかといえばタバコの灯りがぼんやりと浮かんでいたからだ。 古い王国が新しい輩に独占され没した。
以前にも似たような事件が起こったがあれは七武海の一人がやらかした不祥事。
今回は違う(らしい)


「何やってんの」
「あんたこそ何やってんのよ」
「まさか、あんたの仕業じゃないでしょうね」
「あんたあたしの事なんだと思ってるのよ」
「そういえば捜してたけどねぇ、センゴクさんが」
「えっ、マジで!?」
「・・・嘘だよ」


お目付け役から早々に逃げ出したは各地を飛び回っているらしい。
スモーカーという大きな被害者を出した後の出来事。
センゴクはセンゴクでが逃げ出した事実を知るや否や
捜し出せとのお触れを大々的に出しはしたのだがが捕まる道理もない。
そこらの下っ端風情に捕まる程度ならばセンゴクの隠し玉にはなっていないだろう。
何れにしろ隠し玉としてもまったく使えていないのだから。


「この国ってねー凄い財宝があるんだってさ」
「・・・」
「あたしの故郷らしいよ」


隠し玉と言われる位だからの素性はまったく明かされていない。
は手探りで背後の壁を触り何かを掴む。
低い地響きが鳴り僅かだが背後の壁が動き出した。
青キジはずっとそれを見ている。


「そいつは本当の話なのかい」
「さあ」
「・・・あんたは嘘が好きだね」
「嘘が嫌いな奴なんていないわ」
「あんたは何者だ」


年は自分よりも下に思える。
センゴクとの繋がりにしても謎が多すぎるこの女は何者だろう。
そうして隠し玉と呼ばれているにも関わらず何一つとして活動を起こしていない理由は。
単に飼い殺されているだけだといえば終わりなのかも知れない。
いや、やはり疑問は残る。何故。


「あんた能力者なんでしょ?」
「・・・」
「あたしの父親は学者でさぁ」


扉はゆっくりと開ききり黄金色の輝きを漏らす。


「海楼石を作った」


が黄金に輝きながら振り返る。


「そして、海楼石を無効にするやり方も発見して―」
「・・・」
「殺された」


それは余りにも突然の出来事であり、
独裁者の采配によく似ていると思った。
父親の研究室に入り浸る事が好きだった。
その日も研究室に向かったは大きな手のひらに行く手を阻まれる。
遠くに見える研究室のドアは開いていたと思う。喧騒が。


「・・・そいつが―」
「隠し財宝見っけ」

「運ぶの手伝ってよ青キジ」
「あんたがそれでいいってんなら構いやしねぇが」
「どうにかなるっての?どうにもなりゃしないじゃない。生きてるだけ儲けモンなのよ」
「悔しいか」
「いいから早く運んで」
「・・・」
「あんた達の軍資金になるんだから」


この世の悪いもの全てに囲まれ生きるという女は悪い女だろう。
それしか術を知らなかったものだから。



何の話なんだ。
センゴクさんを始めて出しはしたものの。
完全に海軍が悪い組織に。
2007/1/23