頭では理解出来ていると信じて疑わず、
それでも心の何れかでは縋りにも似た希望を抱いていたのだろうと思えた。
夢見がち、理想を、希望を欲する。
それは悪い事ではないのだろう、
それでも現実とふいに比較すればやけに落胆し色褪せてしまうから皆やらないのだ。
どちらかを選択する事は出来る。現実か理想か。
どちらを見るかは本人次第だ。誰も強要はしない。
単に面倒くさく、そうして褪せてしまったのだろう。
それ以外に理由が、原因が見当たらない。
それと共にこれからはモノクロ、
若しくはセピアの世界を見続ける事になるのだろうと思った。
色はない。どの道これまでと同じ色の世界を目にする事はなくなるのだ。
それだけは淋しい事のようで、だから泣くのだろうか。
泣く理由は情けないからだ。


「好き、なのよ・・・あんただけが好きなのよあたしは」
「へェ」
「それだけは間違いないわ。あたしが好きなのはあんたなのよ」


幾度も頭の中で繰り返した言葉だ。忘れないように。
は男の、ドフラミンゴの名を刻む。
これまで無駄に刻み付けてそれでも今更足りないと嘆く。
足りない。足りなければなくなってしまう。
だって目前のこの男の色は完全に褪せてしまっているじゃない。
気づかれないようもう一度刻んだ。押し隠す、ひた隠しに。
ああ、それでも知れて欲しい。一抹の希望を抱く。
二人でやり直せるかしら。


「・・・手前は、飽きちまったのさ、この俺に」
「好きよ」
「なぁ、


鮮やかだったはずの男は言う。
だから希望なんてものは抱くだけ無駄なのだ。儚いものなのだ。
一番残酷な言葉を吐き出したのは自分自身のはずなのに
どうしてここまで心が冷えていくのだろう。


いけない、このままではドフラミンゴが消えてしまう。
違う。消しているのは自分なのだ。
それでも認めない。何に縋るというのだろう。


「さしずめ―」


死因は退屈による虚無死でございます。そんなところか。
気持ちなどまるでないように
言葉だけを吐き出すドフラミンゴは生きているのだろうか。分からない。
昔口走ったうわ言のような約束が頭の中で回っている。
そんな事もあったじゃねェかとドフラミンゴが吐く手前、
裏切ったのだろうかという疑問が湧いて、又湧いた。


あの頃気が狂い掛けるように繰り返した
気に入りの曲をかけれども愛しさは戻らず、
それでも涙ばかりが無駄に垂れ流された。


2007/4/21