男の声が耳を過ぎる。
何故頭に残らないのだろう、そんな事を考えていれば何か問われ思わず笑んだ。
気づかせたかっただけだ。一刻も早くこの男に気づかせ、否感づかせたかった。
そもそも一番悪いのは自身だと知っている。
只罪悪感なんてものはまるで覚えないのだし嫌悪感、これは余りにも失礼な言い方になる。
面倒になったのだろう。所詮その程度の人間だ、自分は。
ああ、それかどうだろう。恐れているのかも知れない。
意外と間抜けな自分と言う生き物はいざ瀬戸際に立たされようやく現状を理解出来るのだ。
余りにも稚拙なCPU。廃棄寸前。


連れられここまで来たはいいもののゾロの思惑はまるで分からない。
余り喋らない男だからだ。
喋らない男だからといって大人しい道理がなく(相手はゾロだ)
無理に断る事も出来ない辺り今更ながらこの状況を愉しんでいるのかも知れない。
身の程知らずというのか単に間抜けというのか。どちらもだろう。
寒いのか、確かゾロはそう言った。
何故そんな事を言うのかと思えば僅か指先が震えていたからだ。
何も、あんたが怖いからだとは言えない。立場が悪くなる。


「・・・用事でもあんのか」
「何?」
「そわそわしてよ」


海が見渡せるといえば聞こえはいいのだろうが用は断崖だ。
風が強くは煽られる。
しっかりと地に足のついたゾロならまだしも、
紙の如く薄っぺらい自身なんて簡単に吹き飛ばされるだろう。


情に弱いとは思わず(それは間違いだったのだろう)思わず手を伸ばした。
互いに信じてはいなかったのだろう、それでも掴んだ。
刹那さは身を削らせる。自ずとだ。
どうなってもいいと思ったのは我侭なの頭の中でだけ、
これから先の事を思い考えたのはゾロだ。
真摯さは時に刃を向く。身を引くか引かないか。
そんな二択はあってないようなものだろう。身を引く男ではない。互いに。
悪い餌は自身であり悪い遊びを仕向けたのもだ。
それでも責任を問わない理由は面子だろうか。分からない。


「なぁ、
「何」
「どういう表情だ、それ」
「寒いのよ」
「いいや、そりゃ違うな」


口惜しく手放したくない、ただそれだけで
グイと一歩踏み込んだゾロは決して下がらないだろう。
手に入れたところで何れ飽きる事を知りながらだ。


「冗談ってのは」


ゾロの声が風に乗り海原へ流れていく。


「通じる相手と通じねェ相手がいるんだぜ」


もうじき陽は落ちるのだろうか。


「相手、選べ」


ゾロとの距離がやけに近いと思っていれば急に腕を掴まれ微かな悲鳴さえ飲み込んだ。


ゾロとかいつ振りだろう、書いたの。
今朝あってたアニメ(出勤前にTVをつけたらやってた)
のゾロが頑張っていたので・・・つい・・・
2007/5/15