どうして思い出というやつは時が経つにつれ酷く美化されてしまうのだろう。
現状にちっとも満足していないからだろうか。
手に入らないものを追いかけている時の高揚感に似ているのだろう。
手に入ればすぐに飽きる割に死ぬほど求める。その過程が楽しいだけだ。


ギリギリの線で満足できない状態がたまらない快感を味わせてくれる。
その味に惹かれていたのだろう。余りにも曖昧で、そうして美味だった為。


「とっ捕まりに行ったのか?手前は」
「会いに行ったのよ」
「で、結局このザマじゃねぇか」


お前はまったく進歩のねぇヤツだ。
そう言ったドフラミンゴは岩場に腰掛ける。
上等な召し物が汚れようと余り気にならないらしい。
高価なものを身につけたがる割に扱いにはとんと無頓着だ。
余り自分を大事にしない点と似ている。


「どうしてかしら、ドフラミンゴ」
「俺に聞かれてもなぁ」
「じゃあ質問を変えるわ。どうしたらいいのかしら」
「どうもこうも、ねぇだろ」


決して交わる事がない。それは揺ぎ無い事実だ。
も分かっているのだと思う。それでも認めたくないのだろう。
諦めの悪ぃ女だと毎度ながら思う。


「あいつは手前を捕まえたがってんだろうが」
「ねぇ、余りにも虚しい展開じゃない」
「惚れる相手、間違えたんだろうよ」


どこに、何に惹かれたのだろうと考えていた。ずっとだ。
話しながら他の事を考えるのは案外簡単であり、
と会話する時ドフラミンゴは毎度そうしている。
はあの男の一体どこに惚れ込んだというのだろう。
軽口を叩きまわっている事実を知っているのだろうか。
その淑女、淫乱につき。
そんな事を言って回っている。他意はない、と嘘を吐く。
あいつは誰とでも寝る、目的の為なら手段なんて選びゃしねぇぜ。
それはあながち間違いではないので皆疑わない。
あの男は何がどうなっても、太陽が沈む方向を間違えたとしてもに惚れないだろう。


「海軍の下っ端じゃねぇか」
「そう下っ端でもないわよ」
「手前と俺に比べりゃあ格下もいいトコだぜ」


目の前で延々と下らない色恋沙汰の愚痴を垂れ流すを見ながら
どうにか話題を変えたがったドフラミンゴは下らねぇと呟き流れを切る。
そうしてガキの遊びじゃあるまいし、そう吐き捨てた。


人の恋愛にまったく興味のない男、ドフラミンゴ。
書き終わり、「友達か!」と思いました。
海軍の下っ端=煙。失礼な!出世したわ!
2007/5/15