雨に降られる事が多いのか、
いやそれよりもたまたまこの地域がやけに雨が多いだけだろう。
太陽の姿を余り目にした覚えがない。
こんなやっかいな地域は早く抜け出したいと思いながらも
この雨の所為で中々先へ進まない。
そんなわけでは今日も見知らぬ宿屋の前で雨宿りをするはめになっていた。
タバコは湿気るし冷えは増すわで酷く不機嫌になる。
この辺りの人々はどうやらなれっこのようで皆急ぎ足で先を急いでいた。
「・・・お嬢さん」
「!」
「使いな」
そんな折、唐突に差し出された傘を反射的に掴んでしまったは顔を上げる。
大きな男だ。大きな男がそこにいた。
顔を見るより先に傘を掴んでしまった事実を酷く悔やむ。
何故手を出してしまったのだろう。
「いや、あの」
「あんたも災難だな」
「え?」
男は笑ったように思える。きっと笑った。
そうしてそのまま雨の中へ消えた男の背を何となく見ていた。
返す事はないのだろうと知っていた。
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「・・・おい」
「あ。あんた。早く迎えに来なさいよ」
「手前は何を差してやがるんだ」
雨の地域の先に聳えるドフラミンゴの国を目指していたは
結局予定を五日程度遅れ到着した。
そもそも呼んだのはこの男なのだ
(しかし大した用ではないのだろう、分かっていた)
「何をって、傘よ」
「閉じてみな」
「はぁ?」
あんた何言ってんのよ。
呆れた顔のドフラミンゴを見上げながらは傘を閉じる。
その瞬間目に入る見覚えのあるロゴ。これは。
「・・・えぇ?」
「手前、ここに来るまでの間、何してやがったんだ」
「え、えぇ〜」
あの雨の日、災難だなと呟いた男の顔を思い出す。
あの大きな男。消えゆく大きな背中。
海軍のロゴが入った傘を片手に誰だったのかを考える。
恐らく知っていたのだろう、こちらの事情もがどういった人物なのかを。
すっかり晴れた空と同じ、影で動く輩も姿を消す。
やはり二度と会う事はないのだ。
雨男は晴天に傘を差す。
頭の中を過ぎったそんな他愛もない言葉を見透かしたのか
ドフラミンゴが馬鹿かと吐き捨てた。
雨の似合う男が青キジだった、それだけの話。
完全にお前の脳内じゃねえかという。
2007/6/6