どんな女だと思った。それが第一印象だ。
相手にどれほどの迷惑がかかろうと、
それが俗にいう危機と呼ばれるものだったとしても厭わない。
私を欲しいのならば命を投げ打てと言った女神と同じだ。
何が違うのかといえば彼女は、は女神でも何でもなく只の女だという点か。
性質の悪い女ではある。そんな事は分かっている。だから皆放っておけないのだろう。
ゾロも同じだった。


危ない橋ばかりを好んで渡るに付き合わされたゾロは
今日も行くあてのない彼女を見ている。
目的も何もない、帰る場所さえないのだ。
そんなだから命を天秤にかけたがるのも仕方がない。
価値のないものに惜しみなど湧かない。
他人にとっての価値が高ければ高いほど有効な手段として使えるから。
只それを押し付けるなとは思う。皆が同じ価値観だと思うな。


「ねぇゾロ」


あたしなんか助けちゃって。
どうも酔ったは笑いながらそう言う。
殺し遊ぶ。飲み溺れる。そんなリズムは崩れない。
安い酒で簡単に酔える分やはりは幸せな女なのだ。
戦いの最中、時折はふと気を抜く。わざとだ。
今すぐにでも死んでいいという気持ちの露見。
そんなを、死にたがるを助ける道理はないと分かっている。


「あいつらが、悲しむんじゃねぇのか」

「嘘吐きね、あんた。やっぱり嘘吐きだわ」

「何だよ」

「あんたが悲しむんでしょう」


酒のボトルで指されたゾロは露骨に嫌な顔をする。
そんなわけあるか、そう吐き捨てた。
馬鹿馬鹿しい。腹の底からそう思っている。


「けどあんたさぁ」


もしあたしがこの崖から飛び降りたって助けるでしょう。
それは愛よ。間違いない。
酒に酔ったの口は余りにも軽すぎる。軽薄すぎる。
なのに核心はついているのだからやってられない。
を見ていれば言葉が、誰の言葉かは分からないが兎に角言葉が過ぎるのだ。
縋れ瞬くなそれは罪だ
誰の言葉なのだろう。


「・・・つーか」


お前が呼ぶんじゃねぇのか。
僅かばかり距離が離れた瞬間ポツリとそう呟く。
の背はこちらに大きく手を伸ばした罠のようなものだ。
誰もが差し伸べる、彼女の背が完全に姿を消す前に。


「あたし簡単に死ぬわよ」

「うるせぇ」

「本当に、あんたなんかに止められないから」

「うるせぇ上に馬鹿な女だな」


先へ先へと進むを見ながら鬼火の熱を受けた。


まあ、ゾロです。
振り回されゾロ。何その新感覚。
2007/6/10