船の先端に追い詰めて、まったくもって四面楚歌。
前方からは刃、背後にはうねる荒波、そして鮫。
だなんてまったく絵に描いたような処刑の仕方だ。
だからお前は知らない方がいいよ。
そう言い目を閉じさせ耳を塞いだシャンクスは決して優しくなかったのだろう。
結局指示を出すのはシャンクスなのだから。


幼い頃たまたまそんな場面に遭遇したは船室に座らされ
シャンクスにより簡単な魔法をかけられた。
少しの間だけかかる記憶喪失。
だからその後、恐らく闇の海、
そんな場所で死に絶える人々を知らずどんちゃん騒ぎを愉しんだ。


思い出したのではなく、覚えていたのだ。ずっと。
それでも気づかない振りをしていた。
余り重要な事柄ではなかったのだろう。にとって。


そうして今まさにそんな光景を目の当たりにしている。
今回は、シャンクスの魔法はなかった。


「・・・ねぇ、ベン。これは一体」
「あいつらは、お頭を殺して名を上げようって企んだ輩だ」
「これから一体」
「お嬢、あんたは知ってるはずだ」


何回も見てる。
言葉少なめにそう告げたベンは皆が集った場所へ向かう。
あの人ごみの中に命の儚い輩がいるのだ。
シャンクスはまだ船室から出て来ていない。
シャンクスが出て来るまで猶予がある。何をするのかは分からない。
怒号の渦巻く船上は確かに狂気の匂いがする。



「シャンクス」
「お前は近くで見なくていいのか」
「え?」
「愉しいぞ」


シャンクスはそう言い笑った。雲が月を隠した瞬間だ。
通り過ぎるシャンクスからは冷たい風が吹いた。気のせいだろう。
やはり足が動かなかったをそのままにシャンクスは集団の中に消える。
怒号が一瞬にして歓声へと変わった。













なぁ、。俺は人間放棄しようと思う。お前の目の前で。
だからもっと側に来てくれないか。もっと近くで見てくれないか。
昔のように。笑いながら背を押したあの頃のように。
又、二人で一緒に愉しもう。
お前もそろそろ現実を、そしてこの俺を目にしてもいいんじゃあないか。













フラフラと頼りない足取りで進むに対し
船員達はモーゼ宜しく道を開けた。
板の上、下は海。そこに男がいた。目隠しをされている。
その男のすぐ隣にシャンクス。


「・・・こっちへ、
「・・・」
「ほら」


笑んだシャンクスがの手を取る。やけに温い。
そのまま少し前へ出、落とされる予定の男と対面した。一方的に。


「あぁ」
「どうした、
「シャンクス―」


腹の底から絞り出した声はシャンクスの名を刻んだ。
風が吹く、風が。涙と鼻水、そして涎。
恐怖により自我を壊した男は何れにせよ死んでいただろう。否、既に死んでいる。


「お前が愛した男だろう」


そしてお前を捨てた男だ。
お膳立てされたようなこの舞台に身震いさえしなかった
そのまま男の身体を押す。
まるで玩具のように海へ放り出された男は僅かな飛沫と共に消えた。
一斉に沸き起こる歓声、嬉しそうなシャンクスの顔。
何もかもが現実離れしていると思えた。


「手前ら!宴だ!!」


シャンクスの一声と共に始まる宴へと連れられるは呆然と掌を見つめる。
お前が悪いんじゃあない、俺たちが悪いのさ。
ベンがポツリと呟いた。
弾かれたように涙が湧いたが飲み込みそんな事はないと呟いた。


どんなだと。
スイマセン、何か急に書きたくなって・・・ 2007/6/30