そんな言葉を口走ったのだろうか(そしてそれはいつの話なのだろう)、そんな事を毎度思う。
無責任なのだろうか、そう思えば別に自分だけではないと思えるのだ。
皆同じ。そう。目の前のも同じだ。だから特に言葉が見つからない。
本当の事を知りたがる理由は恐れるからだと言い、
聞いたからといってその恐れが消えるわけではない。尚更恐れは深まるだろう。


見えないものは怖ろしい、分からないものは怖ろしい。
知れたところで同じなのだ。それを知っている。
よく喋るわりに自分の話をしない事が何よりの証拠だ。
サンジもも。ゾロもだ。好きではない、嫌いでもない。どうもない。
お前の事なんて、どうも思っちゃいないよ。


「あたしもそうだけど、あんたも大概よね」
「は?」
「何か、嘘吐かせるのよね」
「何だよそれ」
「本当の事は聞きたくないってのが丸分かり」


だからあたしはわざと嘘吐いてあげてんのよ。
そんな下らない事を呟いたは何故かやけに呆れている。
夜中の甲板にて煙草を吸いながら下らない会話を。
吸殻を投げれば闇に消える。
音は何もせず只ゆっくりと波が押し寄せるだけだ。
今日はどうも月が現れては消えるので気持ちは落ち着かず。


「って言うかさ、お前の本当って何だよ」
「さぁ?本当っていうか、あたしの気持ちよね。要は。
あんたはそういうの聞きたくない聞きたくないって逃げてばっか。
別にさぁ、あんたの事なんてどうも思ってないってのよ」
「スゲエ、話が全然分かんねぇ」


欺け、欺け。頭の中で声がする。


「そんなもん、あたしだって同じ船の中であーだこーだやりゃしないっての」
「何だよ、別れたら最悪ってヤツか?」
「自分の居場所無くすような真似、しないのよあたしは」
「ハハ、聞いてねーし」
「上っ面だけで好きだ好きだ言ってるあんたと同じ」


どうにも今日はやけにが突っかかるもので
少しだけ辟易としたサンジは新しい煙草に火をつける。
何て楽しくない会話なのだろう、そう思う。


下らない話ばかりを垂れ流し続けていればいいのだ。
その場が楽しければいいのだ。
そうすれば自分も楽しい、救われる。報われる。


「つーか、酷くねぇ?この言われよう」
「あんたに気なんて使わないわぁ」
「俺何か、やたら傷ついたわ」


煙を吐き出す彼女の唇、その上にある鼻、そして睫。
全体をぼんやりと眺めながら思う。
の真意、何を探っているのか。知っている。だから。


「俺、の事大好きだから」


欺け、欺け、欺く


もの凄く、意味が分からん。
2007/7/9