お前と一緒にいた時間全てが苦痛に満ち、
それはさながら地獄のようだったと言われた途端笑えた。
あたしが一体何をしたって言うのよ。
そう言えども心当たりが多過ぎる。


只事実をそのまま、余りにも正直に伝えられたものだからそれが悔しく、
だからはそのまま男を殺したのだ。
感情は怒りそれだけ。恋しくも愛しくもなかった為後悔は生まれない。
殺したのも初めてではなかった為どうも思わない。誰かしらが始末をするだろう。


空しさばかりが募りやり切れなくなる。どうしてこの両手は血に塗れるのだろうか。
あの男はいいカモになった。それだけだ。幾度目かのカモだ。


「いよぉ、
「・・・何よ」
「何だ?久々だってのに」


その口の利き方は。
巻きタバコの匂いが強く香る。
不愉快そうに視線を上げればこんな街にはまったく相応しくない男がいた。







「おいアバズレ、やけに元気がねぇじゃねぇか」
「あんたも大して元気ないでしょう」
「俺はあれだ・・・二日酔い」


トマトジュースしか飲みたくねぇ。
この男、ドフラミンゴは一体何をしにこの街へ来たのだろう。
この街はの街だ。ドフラミンゴの街ではない。
そもそもこんなに小汚い風景は彼の美意識に相応しくないのだ。
完全に切り捨てる。


「・・・うん?何だ、手前」
「何よ」
「又殺したのか?血の匂いがしやがる」
「相変わらず鼻の利く男ね」
「相変わらず堪え性のねぇ女だな」


だから男から逃げられるんだよ。
二日酔いらしいドフラミンゴは唾を吐き捨てながら口を動かす。
何だろう、この男はうちにトマトジュースを飲みにでも来るつもりなのだろうか。


「あんた、何してんのよ」
「手前の面ぁ、拝もうと思ってよ」
「何も出ないわよ」
「何か出た例があったか?なぁ」


誰に対しても同じだ。は何も渡さない。
誰にでもだ。得るだけ、奪うだけ。
口を開けば出て来るものは嘘ばかり。
誰かを表面的に喜ばせる嘘ばかりだ。
それでもそんな嘘を皆欲しがる。需要と供給は未だに続く。


「あたしと何して遊ぶのよ、あんた」
「冗談じゃねぇ。手前なんかと遊ぶかよ」
「ついさっき、いいカモ殺しちゃったのよあたし」


だからあんた繋ぎでなってくれない。
心にもない事を言えば引かないドフラミンゴが笑った。


そう。地獄だと、形容してほしくなかった。それだけだ。
自分と過ごした時間をそれだけには例えられたくなかった。
の唯一だろう、唯一の自尊心。そんな下らないもの。


「まぁなぁ、お前がお願いするんなら考えてやらねぇ事もねぇぜ」
「あんたまだ酔ってんの?」
「フ、今のうちだぜ。俺は守れねぇ約束はしねぇ」
「・・・」


馬鹿言ってんじゃないわよ。
やはりそんな言葉を返したを見つめたのだろうか。
ドフラミンゴは口元を微かに歪め又唾を吐き捨てた。

だからドフラミンゴはどういう立ち位置なんだ。
まあ、普通だったらお願いするよね・・・
2007/8/8