嫌に下品なネオンが煌めく街並みを見る。特に感慨深いわけでもないのだ。
珍しく目的なしに立ち入ったこんな場所でサンジは溜息さえ吐く。
最も老舗なのだろう貫禄さえ漂う二階建ての店、
ゴチック調の階段を上り店内へ赴こう。
船から逃げ出したあの女は恐らくここにいるはずだ。
何故、何の為に。そうしてやはり何故。
下卑た匂いがまったくしない美しい内装を見渡していれば
燕尾で身を固めた初老の男がオーダーを取りに来た。
の名を呟く。男の目が幾許か光ったような気がした。
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通された部屋は二階の一番奥にあった。廊下の明かりは淡く暗い。
重い音を響かせながら開いたドアの中にはいた。
部屋全体が赤く染まっている。その真ん中にはいた。
ベッドの上に座り。
「・・・お前」
「いらっしゃい、サンジ」
「何やってんだよ」
性の匂いが篭った部屋だ。
船の上とはまったく違う為りをしたがそこにいる。
生肌を見せ塗れた眼差しでこちらを伺う女を自分は知っているのだろうか。
「誤解しないで欲しいんだけど、」
「何が」
「あたし、別にここで働いてるわけじゃあないのよ?」
「はぁ?」
「ここは、あたしの店なの」
そうしてここはあたしの部屋。
一人置いてきぼりを喰らっているサンジはまだ一歩を踏み出せないでいる。
目の前にはあれだけ捜したがいるというのに。
長い煙管を手に取り火をつける。
網目の粗い網タイツをはいた脚を雑に組みなおしまるで威嚇しているようだ。
「何で突然出て行ったんだよ」
「用が済んだから」
「用?」
「あんたには関係のない事よ」
「・・・何だよそれ」
この女はこんな眼差しをしていただろうか。
甘く冷えた目をしていただろうか。
「そもそも、どうして来たのよサンジ」
「どうしてって・・・」
「そんなにあたしに会いたかったっていうの」
笑う。は笑う。
「けどあんた、帰んなよ」
出来るだけ早く。走って。
ベッドから降りたはサンジに近づきながらそう言う。
春を契った仲だと思っていたのはどうやらサンジだけだったようで、
まあ自身のそんな思い違いが悲しかったわけではない。
近づいて来たの眼差しが余りに他人行儀で、そうして連れなくて。
これまで接した彼女の姿は全て偽りだったのかと思え、
恐らくそれが哀しかったのだ。
「もうここに来ちゃ駄目よ」
「・・・何だよ、それ」
「あんた達がグランドラインを目指してるんなら、何れどこかで会うわ」
きっと。
そう告げたはふと視線を外し又眼差しを変えた。
と同時にサンジも感じる。何か違和感、雰囲気そうして空気が変わった。
「サンジ」
「・・・」
「早く行って」
「・・・あぁ」
柔らかく背を押されたような気がする。
気のせいだろうか。気のせいだ。きっと。
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「何だぁ?臭ぇな、おい」
「早かったわね」
「客でも来てたってのか?なぁ、」
ズカズカと遠慮もなしに踏み込むドフラミンゴを見ている。
彼の大きな手はの頬を包み軽くキスをする為のものだ。
若しくは命を奪う。
「男か」
「さぁ」
「手前、逃がしたな」
「何を言い出すのよ」
「臭いがしてやがる。窓開けな、」
まるで自分の部屋のように寝転がったドフラミンゴを横目に
窓へ近づいたはそこでこちらを見上げているサンジを見つける。
はっと息を飲めばドフラミンゴに気づかれそうでゆっくりと窓を開けた。
余りに久々の更新
2007/9/12