ここじゃねぇ、ありゃあどこだったかな。
暇な時間の潰し方はとっくに覚えているらしいスモーカーは
葉巻を燻らせながら何となく話し始めている。


とても雪が深い国の話だ。年中雪が降っているような国。
死んだように静まり返った街並みと時折聞こえる空の音―
余りに雪が深い為に住人は古くから伝わる地下道を生活の拠点としていた。
故に地上には人影がない。そんな話だ。


それでも海軍は地上で生活をしている。
妙な、そうして不気味な国だったとスモーカーは呟き笑った。


「―で、さ」


あんたはあたしも捕まえずに一体何をしているの。
毎度のやり取りを始めたに視線さえ向けない。


「最近あんた、諦めてるの?」
「何をだ?」
「あたしを捕まえるの」
「馬鹿言うな」


そんな気分になれねぇだけだ。
面倒臭そうに髪を弄る。
その仕草が堪らなく好きだ。


港が微かに見える丘の上、その先には大海原が広がっている。
見晴らしのいいこの場所がどうやら気に入っているらしい。
スモーカーも、も。


「じゃあ早く逃げなきゃあね」
「あぁ?」
「あんたがヤル気を出す前にさぁ」
「まぁ、いいじゃねぇか」


騙したりはしねぇよ。
スモーカーが言う。は笑う。
この感覚が、感触が堪らない。背筋が緩く冷えるようなそんな感じ。
好きなんだろう、そう思えるからだ。


「今日は夜勤なの?」
「あぁ」
「後、長くて一時間くらいかな」
「日が昇る前に戻りゃあいいだろ」
「何か話してよ」


あんたの夢の話とか。
地上のアイデンティティは確実にここにある。
スモーカーの思い出、過去の話なんかを聞いていれば
むしゃくしゃしてしまう心と同じだ。
この男が過去に誰かと作った思い出なんてものは反吐が出るほど気に入らない。
聞きたいのは今、そして未来の話。
今より古い話なんて聞きたくもない。

久々にスモーカーというか久々の更新。
むしろ今年に入って初じゃないのか。
どうなの、どうなの私。
2008/2/24