一緒に生きていこうだなんて迷いごとを
それこそ真摯な眼差しで呟かれたわけだ。
眼差しばかりは真摯であったものの片手には酒ビン、
場所は酒盛りが行われている船の上なのだから信憑性はないと判断した。
常に陽気に振舞うこの男がどれだけ煽れば酒に飲まれるのかは知らない。
それでも信じるに値するかどうかは分からないでいる。
こと、恋愛方面に関しては。
その以外の全ての分野に関してはこれ以上はないというほど信用しているというのに。


やれやれと呟き酒を置いたシャンクスはの隣に腰掛け先ほどの台詞を呟いた。
数メートル先で行われている騒動に気をとられ聞こえていない振りをした。
面倒だとも思えたからだ。この男に振り回されるのは面倒だ。
片腕しかない癖に身動きが出来なくなるほど強くを縛り付けるから面倒だ。
どこにも行けなくなるほどに。


シャンクスが自分を側に置いておく理由を知っている。
先に死なれては厄介だと思っている。
どうせ死ぬのならば己の側で死んでもらいたいと、
お前は一人で出歩けばすぐにでも殺されていると言われているのと同じだ。
確かにシャンクスの側にいれば安全だろう。
よっぽどの事がない限り危うく命を落とすなんて事はまずない。それでも。


「明日になったらここを離れるわ」
「・・・どうして」
「どうしてって」


用事なんかありゃしねェだろう。
シャンクスはそう言いボトルを煽る。
用事もねェんだったらここにいたらいいじゃねェか。
そうとも言った。


何も言えなくなる瞬間だ。
シャンクスと話をしていれば彼は必ず逃げ道をなくす言い方をする。
まず外堀を埋め、それから物を言う。やり切れなくなる。


「ここにいたら」


どうやらこちらも随分酔いが回っているようで
揺ら揺らとふらつく頭を知りながら口を開いた。
これまで思えども言えなかった言葉だ。


「自由がなくなる音が聞こえるわ」
「そりゃあそうだ」
「何?」
「なくしていってんだ、そりゃ聞こえるさ」


当然のように、それとも必然なのか。
シャンクスの顔を見る事が出来ないでいる。
少しは戸惑いもするかと思いきや
即答したシャンクスは何を考えているのだろう、いたのだろう。
思惑は全て外れ、ああ、又だ。又自由がなくなる音がする。


「俺は別に、お前の幸せなんかを望んじゃいねェぜ」


俺の幸せを求めてるんだ、この俺の。
嘘だけは吐かないシャンクスが口にする言葉は全て真実であり、彼の思いだろう。
そんな事は知っていると言えないままに自由はなくなる。
とっくに溶けなくなっていた背中、イカロスの肩甲骨が軋む気がした。

おおお!この企画の更新いつ振りだ!
もう定番になってしまった(ここのサイトでのみ)
わがままシャンクスですね。度を過ぎている。
2008/5/6