大事なものが綺麗だなんて誰が言った?
、所謂『小エビ』ちゃん。小さくって、何かぴょこぴょこしてて、目が離せなくって、美味しそう。第一印象はそんな感じ。いつの間にかこの学園に入り込んでいたヒトの子。魔力のない只のヒト。
そんなの初めて見たし、やっぱ陸には変な生き物が沢山いるなって面白かった。あのオンボロ寮に住んでるなんてとこも面白いし、まあ兎に角全部面白い。
俺は面白いものが好きだし、楽しい事が好きで、の事を考えるとそのどっちもが満たされる気がする。だから俺はの事が好き。多分、そうなんだと思う。
だ・け・ど。
ジェイドもの事が好きなんだと思うんだよねぇ。口には出さないし、そんなのは俺だってそうだよ。俺だっての事がどうだって話、ジェイドにしない。だけど、見てれば分かる。ジェイドの事なら俺は何だって分かる。の事は、分からない。目で見えるものしか俺には分からない。
だけれど、俺はジェイドが幸せならいいや。何かもうよく分かんないけど、俺が唯一分かるのはジェイドの事だから、それでいい。だから身を引くって言うのかな、こういうの。俺はそんなつもりで、いたんだけど―――――
「ちょっ、フロイド」
「こっち来てー」
「や、何?」
痛いんだけど。
つい先刻の話だ。食堂にいた所、レオナから声をかけられ立ち話をしていた。サバナクローの誇り高き寮長は周りの生徒より少しだけ年上で、正直な所、話が合う。こちらの年齢確認は不思議とされず、あえて明言も避けている。
レオナくらい不遜な態度の男相手の方が気も使わなくていいし、多少なりとも気がある男からそういう感触交じりで接されると悪い気はしない。そのくらいの下心があったっていいでしょう?
二人で話をしていれば、お前に客だぜ。レオナが笑った。肩に置かれた手、長い指先には見覚えがあった。
「ねえ、何なの」
「あ、ここ、ここー」
「ていうかここ一体」
連れて行かれたのはオクタヴィネル寮の一角で、仄暗い倉庫のような場所だった。まるで海の底のように冷えた壁に押し付けられる。フロイドは背が高い。
「で、何してたの」
「何?」
「この、尻軽女」
「は!?」
目と鼻の先にずい、とフロイドの顔が迫った。
「何、が」
「誰でもいいの~?」
距離が余りにも近く、思わずこちらが顔を背けた。フロイドは厭わず話続ける。右肘を壁に付け、の左耳をなぞる様に囁いた。
「みんなにいい顔して、八方美人なのかな。は」
「何であんたにそんな事言われないと―――――」
「だって、それじゃあ俺が我慢した意味ないじゃん」
何が。
そんな愚問は誰にも届かず、フロイドの舌が耳から首筋をべロリと舐めた。薄々そんな予感はしていたが、流石にこちらも腹が立っているしそんな気にも慣れない。やめてよとすり抜けようと思ったが男の腕は長くすぐに捕まった。そのまま床に投げられる。
「だって俺、我慢とか無理だし。苦手だし。そんなんしたくないし」
「ふざけ、」
「だけどジェイドの為にやろうと思ったのに」
両手の自由を奪われ、争っている内にいつの間にかシャツのボタンは弾けていた。ブラをたくし上げられ無防備な乳房を晒し、男の侵入さえ防げない。
人であろうがなかろうが、二足歩行であれば似たようなやり方で犯すのだな、と頭の隅では無駄に冷静にそんな事を考えている。この状況が余り現実的ではなかったからだ。
熱を帯びてもおかしくない状況だろうに、フロイドの身体は不自然なほど冷えている。元々体温が低いのだろう。とりあえず早く終わってくれと願い、事の終息を待つ。どう抗おうともこの男に敵うわけがない。ここで選ぶ事の出来る最善策は被害を最小限に抑える、只それだけだ。
体内のフロイドが僅かに脈打ち、ズルリと性器が抜かれた。腹の辺りに吐き出される。事を見計らい、身を起こした。
「あんた、こんな事してタダで済むと、」
「小エビちゃん、まだ自分の立場がわかってないみたいだねぇ」
「!」
「そんな口、二度と叩けなくなるくらい可愛がってあげる」
―――――そう言ったフロイドはいつものニヤけ顔のまま、シャツを脱いだ。まるでこれからが本番なのだと言いたげに。いつ解放されるのかも分からず、嘘みたいに体力のある男に組み敷かれ好きに犯され、フロイドは宣言通り二度とそんな口が叩けなくなるほどこの身を犯した。気まぐれな彼の気が済むまでだ。
明け方近くになりようやく解放され、他の誰にも見つからないようにオンボロ寮へ逃げ込む。グリムを起こさないように細心の注意を払ってシャワーを浴びるも、べっとりとしみついた生臭さは中々とれなかった。