繋ぎとめられたい迷わぬものに



   あんたよくあきもせずこんな真似やってるわね。は顔を合わせる度に飽き飽きと言った様子でそう言う。基本的に依頼するのはトラブルの処理だ。余り公にしたくない案件を秘密裏に行って貰う。

呪詛師の知り合いは数多いるが、のようにまるで心無い人間は少ない。この女は生まれに負があり望まずとも呪詛師にならざるを得なかった。

元より呪いを糧としてきた一族の末裔であり、時代時代の闇に紛れ暗躍して来た。の母親がその一族の出であり、彼女は呪いの全てをに託した。決して日の目を見る事の出来ない強い力。

彼女の力を欲す勢力は数多もあったが、彼女はその全てを門前払いした。誰の為にも生きず、何になる事もしない。彼女が導き出した結論がそれだ。

一族を縛り付けた『呪い』の威力は凄まじく、人を呪わば穴二つとはよく言ったもので、一族は徐々に、しかし確実に数を減らし今となってはだけが血を引く者となった。母親はが17の時に死んだ。これまで行った呪いの反動で苦しみ抜き死んだ。それが呪いを糧とした者の末路なのだと知っていた。

呪いの力はこの身に宿っているが、それがどういう結末を招くものかは未知数だった。それから色々と調べ、母親たちは対価を得る為に犠牲を払っていたのだと知る。であればこちらは一切の犠牲を払わない。この手に収まる範囲の呪いを行う。

そう決め生きて来たというのに、この夏油という極めて胡散臭い男に付き纏われている。何とかという妙な宗教の教祖らしいが、依頼して来る内容はやけに血生臭い。

依頼者の素性は深く探らないと決めている為、こちらは話す事もないのだが、どうしても顔を見て打ち合わせをしたいのだと連絡を寄越す。幾度となく仲間にしたいと言われたし、その都度何度も断って来た。

途中からは流石に展開も読め、意識的に顔を合わせる事を避けた。そうして今だ。余りにもしつこい夏油の誘いに負けた形となる。彼は待ち合わせ先に教団本部を指定した。それも会う事に決めた理由の一つだ。

これまではどこぞの店だったりホテルだったりと目的が透けて見えすぎた為、避けていたが場所が教団本部ともなればそうもいくまい。どうやら今日は年に一度の大きな祝い事の日らしい。教団本部は盛大に飾り付けられ、数千人からの信者が全国から集まっていた。



「…ちょっと」
「いいから」



夏油の指示通り裏口から教団本部へ入る。そのまま大講堂のバックヤードへ来てくれとの事だった。信者たちは今か今かと夏油を待ち焦がれている。開始時刻は既に過ぎていた。

夏油は一人、バックヤードにいた。の姿を見て嬉しそうに微笑む。普段とは違う五条袈裟姿の彼は確かに教祖然と見え、馬子にも衣裳だなと思った。



「で、何の用」
「こっちに」
「え?」
「もっと近くに来てくれないか」



分厚い緞帳の向こう側には数千人単位の信者たちが待ち構えている。何を見せたいのかこちらを呼ぶ夏油の側へ近づいた。夏油の手が肩に回され、しまったと思った瞬間だ。グッと引き寄せられる。夏油の身体は大きい。こちらなどすっぽりと隠れてしまう程だ。



「ちょっとやめてよ」
「大きな声を出せば知れてしまうよ」
「あんた、何考えて」



至近距離でこちらをじっと見つめる夏油から視線を逸らせず、それなのにこの身体はまったく動かない。夏油の唇がの唇を覆った。遠慮なしに舌が侵入して来る。僅かなうめき声が漏れた。

夏油の指は丁寧な口調とは裏腹に、それこそ遠慮なしにこの身を弄る。もつれ合いながら狭いバックヤードの壁に押し付けられた。背後から抱き締められ壁に押し付けられている状態だ。

夏油は耳側で触って、そう囁き左手を自身の性器に誘う。固く勃起しているのが分かった。どうするまでもなく然程濡れてもいないこちらの性器に押し付けられる。

丁度そのタイミングで教祖を待ちかねた信者たちが一斉に詠唱し出した。地響きと共にその音に抱きこまれる。その間に性器は無理矢理侵入を果たしていた。



「…っ、教祖、様がこんな事していいの」
「猿相手の真似事だよ」
「これも、そうなの」
「禊さ」



夏油の腕は背後から身動き一つ取れないようの身体を抱き締めている。そのまま壁に押し付けられる形で性器を突き上げられ、こちらは声を抑えるだけで精一杯だ。

最初は痛み、次に痺れ。最終的には気持ちよくなる。痛みに慣れたこの身体は何事にも適応する。自身の指を噛み吐息で逃がす。夏油がの片足を持ち上げより深く侵入を試みた。の膣内、奥の方がグッと締まる。



「これじゃあ禊にならないね」
「…っ、何、言って」
「頑張って声を殺すんだよ、



でなければ猿共にばれてしまう。耳側でそう囁いた夏油は開いた右手、その人差し指と中指を舐めの腰からその先に延ばす。やめて、小さく呟いたが意味がない。足を広げられがら空きとなった結合部、その上部にそそり立つクリトリスを摘まんだ。



「………!!!」
「あー…」
「やっ、め」
「気持ちいいかい、



夏油の手をどうにか止めたいが身体がいう事を聞かない。膝から力が抜け今にも崩れ落ちそうになる。



「仲間になるかい、
「嫌、だ」
「どうして」
「…!」
「まだ素直になれないのかい」
「っ、はぁっ、あ」
「だったらまだ続けるよ」



お前が許してと泣くまでイカせ続けようと囁いた夏油は一旦止めていた指先を又、動かし始める。壁についていた右手がついに力を失い身体ごと床に崩れ落ちた。夏油が腰を掴み無理矢理継続させる。もう既に気が気でないというのに、緞帳の向こう側から聞こえて来る詠唱の声ばかりが鳴り響いていた。