また明日、またいつか



   女性の呪術師限定の依頼だった。依頼者の性別により術師の性別を限定する案件は割と存在する。まあ、呪術師の世界は古い体質の組織にありがちな男性優位の社会なので男性の方が優遇される場合も多々あり、女性呪術師の母数も少ない為にこうして学生であるが駆り出されたわけだ。

社会情勢とは相反してこの世界には未だに保守的な見方が強い。性犯罪は基本的に被害者側の声が上がりにくい傾向にある。自身が被害者だと知られたくないからだ。

今回の依頼はまさしくそれで、被害者たちが中々声を上げない為に事件化が遅れた事案だった。丁度先輩方も其々の案件に出向いていたし、丁度手の空いていたにお鉢が回って来たのは一時間程前の事だ。

別にいいけど、そう返し高専を後にする。指定されたのは郊外の一軒家だ。閑静な住宅街の一角にひっそりと佇む古い屋敷で、広大な敷地は高い塀に囲まれていた。インターフォンを押しても反応はない。その代わりにギイ、と耳障りな音を立て両開きの門が開いた。

まるで手の入れられていない庭園を眺めながら人は住んでいないのではないか、そう思う。仮に住んでいたとしてもまともな状態ではないだろう。豪勢な庭園には暫くの間、庭師の手が入っていないようだった。

見た目は立派な一軒家だが人の気配がまったくしない。すいません、と声をかけ玄関を開ける。室内は静まり返っていた。



「あ、あの」
「!」
「すいません、インターフォン壊れてて」
「いえ、貴方が依頼主の方ですか」
「は、はい」



奥の部屋からおずおずと出て来たのは若い女性だった。何かに酷く怯えているようで視線が全く合わない。依頼主は彼女だ。



「ええと、問題の部屋はどちらです?」
「あ、あの」
「どうしました?」
「ごめんなさい」



彼女と初めて目が合った。あの怯えた目の色。何が、とき聞き返す間もなく背後から羽交い絞めにされ謀られた事に気づく。



「ご苦労、よくやった」
「…!!」
「俺の、ようやく手に入れる事が出来た」



背後の男は耳側でそう囁き目前で耳を塞ぎ震える女に手をかざした。彼女の頭上からズズ、と呪霊が浮かび上がる。この男は呪霊を自在に操るようだ。夏油のようなタイプなのだろうか。その割にこの男自体の呪力はそう強くない。相手の出方が分からない以上下手に動く事も出来ないのだが―――――



『この女に憑りつけば私を満足させてくれるのね』
「そうだよ」



呪霊はハッキリとした声でそう言った。この男は呪霊と契約をしている。そうしてこの女というのは私の事だ。マズイ、と思った瞬間呪霊はこちらを飲み込む。男の腕がようやく離れた。



「お前、何を」
「もうこれで君は俺から離れられない」
「…?」



次にハッと覚醒した時には見知らぬベットの上で男に向かい両足を広げていて、余りの事態に声も出ない。男はこちらを眺めながら服を脱いでいた。

いや、いやいやこの呪霊、只の淫霊なんじゃないの!?しかもどうやらこの男に強い執着を持っている。



「君に戻ったのかい、
「あんた」
「淫らに頼むよ、思いっきりね」



頭の中で呪霊の意識が膨れ上がる。確かにこの呪霊は喜び満ちている。人の身体でこの男に抱かれる事に最上の喜びを得ている。縛りだろうか。わからない。だけれど、こんな男に犯されるのは御免だ―――――



「ちょいとお邪魔しますよー!!!」
、無事か!?」



最高のタイミングで駆け付けた五条と夏油は、ベットの上で今まさにおっぱじめようとしている二人を目視、確認する。こんな姿を見られて情けないやら恥ずかしいやらなのだが今はそんな事も言ってられない。



「テメー!ぶっ殺す!!!」
「このストーカー野郎が」



そもそも、五条と夏油の二人はのストーカーを別口で探していた。この半年の間、高専宛に所謂『ザーメンミルク』やらの雑なアイコラやら小動物の生首やら何やらと散々送られており、にストーカーがいるのではないかと専らの噂だったのだ。

噂と言うかもれはもう既に事実なのだろうが、当のはといえば割とあっけらかんとしたもので、見つけ次第殺すからいいよーと笑い今だ。



「ほら無理じゃん、お前犯されかけてんじゃん」
「マジでビビった~」
「何なの?危機管理能力ゼロなのお前」
「めっちゃ怒るじゃん五条」
「私も怒っているよ
「何故」



五条と夏油はストーカーをコテンパンにのし速攻でお縄にした。玄関先で倒れていた被害者によれば、この男は淫霊をターゲットに憑りつかせ無理矢理性行為を行っていたらしい。そうしてその事でゆすり次のターゲットを呼び出させていた。とんでもなく卑劣な野郎だ。

警察も動き夏油が男を引き渡す。尚、五条は本当に殺そうとしていた。









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全ての事務処理が終わったのは完全に日が落ちた頃だった。この一軒家はあの男の持ち物で、裕福な両親の遺産を食い潰しながら男はこの家でターゲットを探し劣悪な欲求を満たしていたのだ。



「マジで疲れたわ」
「警察絡むと話長くなるよね~」
「お前さ、何であんなのに犯されかけたんだよ」
「え?」
「あいつクソ弱いじゃん」
「あー」



淫霊が憑りついたんだよね、と口にした瞬間の二人の顔。確かにそんな顔にもなる。そういえばまだ憑りついてるんじゃないのそれ。全然出て来ないけどあいつまだ私の体内に、



『どうする、おまえたち』
「うお」
『私の呪いは条件を満たさないと絶対に解けない』



あの男との間に交わした契約は『50回性行為をする』男の呪力量ではその回数が限界だった。て事は俺だったら無限じゃね、五条が茶々を入れる。

そうしてその回数は現在49回まで清算されている。別に相手が誰であろうとこちらは構わない。只、少なくともあと一回残っている。ここでなくともこの女の身体を借りてあと一回だ。



「どうする、悟」
「あーこれヤバいね」
「ちょ、祓ってよ早く」



五条と夏油はこちらを見ている。いや絶対あの淫霊の野郎何か言いやがったな。序でに言うなら先程からやけに感覚が敏感になっているし何もしていないのに疼き出している。あいつ、あの淫霊野郎、本領発揮してんじゃねー!



「あのさ、
「何」
「私たちは君を大事に思っているんだよ」
「はあ」
「それは理解出来るね?」
「何が言いたいの」



夏油はいつものあの笑っているのかいないのか分からない表情でこちらをじっと見つめている。マズい、と思うも淫霊は意識を奪われ、次に気づいた時には夏油に抱きついていた。淫霊テメー!テメーふざけんなよ!



「どうする?」
「どうするもこうするもないっしょ」
「まぁ、本人が求めてるからね」
「傑、悪っる」
「ちょ」



自分の身体なのにまったくいう事をきかない。まるで当たり前のように夏油を見上げ見つめる。バカみたいに胸がときめき全身が火照った。これから当然セックスをするのだと言わんばかりにだ。

いや、いやいやいやいや。いやいやいやいやちょっと待ってよ淫霊。こいつら同級生なんだって。滅茶苦茶人数の少ない高専の同級生なんだって。四六時中顔を合わせるんだってこんな事やっちゃマズいんだって!せめて他の、まったく関係のない男にしてよ…!

ていうかさ、夏油も夏油でそうなんじゃないの?私と立場はまったく同じはずなんですけど!?それなのに当の夏油といえばニコリと笑い前髪をかき上げて来る始末。愛おしそうに見つめてきてんじゃないって、あんた女をそんな目で見るんだ初めて知ったわ!!滅茶苦茶優しい眼差しなんですねー!



「じゃ、お先」



夏油の唇が当たり前のように重なり胸高鳴るこの身を弄り出す。身体は拒否したいのにこのバカ淫霊のせいでまったく思うように動かない。というか何なら俄然積極的に唇を開き舌を絡めてるんだからもう自分でも何が何やら分かりません!!

夏油のつけている香水が強く香り、そのままブラのホックが外れた感触が続く。流石、上手い。手慣れている。そんな事を考えている場合ではないのだがこちらもこちらで夏油の学ランを脱がせシャツの中でその身体を確かめるように撫でまわしているのだからこの淫霊も淫霊でお前どんだけ飢えてるんだと。

いやしかし、やっぱいい身体してんな夏油、だとかどうでもいい事に関心をしている場合ではない。



「くすぐったいよ、
「何笑ってんのよ夏油あんた」
「積極的だからさ」
「!!」



知らぬ間に夏油の性器を握っていて死ぬほどビビった。そんな事ある!?撫でまわしてるんじゃないよ淫霊!しかも夏油デカ!!デカいね!?



「うぅわ、エッロ」
「ヤバいね、これ」
「覚えてろよお前ら」
「だってお前、自分でやってんだぜ」



五条に返す言葉もない。何故なら完全に仰る通りだからです。嬲られた夏油の性器はしっかりと勃起しており、確かに目の色も変わっている。まあ、それはきっと私も同じなんだろう。最悪だ。こんな獣のような目をしているだなんて。

そのままベットに押し倒された。もどかしそうに下着を脱ぎ夏油の指を招き入れる。



「濡れてる?」
「んっ」
「濡れてる」



夏油の指が体内に侵入してきた。肉ひだを押し分けグッと分け入る。散々疼いていた箇所をようやく突かれ思わず声が漏れた。これは淫霊でなく私だ。私の声だ。そうしてその事に夏油も気づいている。

恥ずかしすぎて顔を背ける。こんな、こんなのってなくない!?淫霊の野郎あいつどこに行きやがった!?何でこういう肝心な時に出てこないわけ!?



「ちょ、顔こっち向けて」
「やっ、ぁ、何」
「勃っちゃった」
「んん!!」



背けた顔を元に戻され目に入ったのは五条の性器で、このバカ口の中に突っ込んできやがった。最悪なんだけど本当に。ありえないんだけどマジで!ヤバいマジで気持ちいい、とかエロいだとか、バカ二人で話している声が聞こえる。



「挿れるよ、
「そういうの一々言うタイプだ」
「言ってあげた方が丁寧だろ」
「えーなら俺も出す前に言った方がいい?」
「口の中に出すなよ、流石に怒るだろも」
「嫌だね」



夏油の身体が僅かに前後し、ググ、と内臓が押し上げられる。強い感触に思わず目を閉じた。そのままゆっくり動き出す。ヤバイ。滅茶苦茶気持ちがいい。五条の性器が口内に入っていなければ完全に喘ぎ声を漏らしていたはずだ。ああ、だけれどマズい。このままではまったく余裕がなくなる―――――



「傑、途中で代われよな」
「待てないのか?」
「お前長ぇーんだよ」
「まあ、確かに」



口の中からズルリと抜かれた性器の行方を眺めていた。五条は少し離れた場所でゴムを付けているようだ。ああ、そういうところはちゃんとしてるんだな、とやけに冷静に思った。

夏油が左足を持ち上げ更に奥深く侵入して来る。正直なところ、この辺りで声は我慢出来なくなったし多分とっくに淫霊は失せていた。何だったのあいつ。マジで。



「すまない、
「あっ、あ、あ」
「私は中々イけなくてね」



もう少しでイきそうなのに夏油は性器を抜いた。散々盛り上げておいて酷いやり口だ。入れ替わるように五条が挿入してくる。すっかり出来上がった膣は簡単に五条を受け入れた。夏油は水を飲んでいる。



「ヤベ、すぐイきそう」
「早すぎるだろ」
「うるせー遅漏」
「五条悟は早漏かよ」
「俺は普通!いや、普通よりは遅いはず」
「どうだか」



相変らず話を続ける男達をぼんやりと眺めながら心待ちにした快楽を享受する。それからはもう駄目で、気づけば五条から夏油に交代していたがよく覚えていない。死ぬほど犯された。









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次に目覚めたのは自室だった。散々犯された後、どうやらあいつらは私を連れて寮に戻ったらしい。どういう精神構造をしていたらそんな真似が出来るのか、まったく理解が出来ない。

最初からこうするつもりで洋服を脱がせなかったんだな、とか他人に着せられた下着って信じられないくらい違和感があるんだな、とかどうでもいい気づきを得る。

そうして次にひりつく性器。とりあえずシャワーでも浴びようと部屋を出れば、それこそ風呂上がりの二人と顔を合わせ気まずい沈黙が訪れた。



「…よ、よぉ」
「身体は大丈夫か?」
「…正直あんま覚えてないから」



咄嗟に嘘を吐いた。これが嘘だと二人は気づいているはずだ。だけれど追及しない。我々には明日もある。



「まあ、俺らは全然覚えてるけどな」
「又、ああいう事になったら言うんだぞ、
「お前ら…」



明日もあるのだがお前らに見せる明日はないのだとの呪力が炸裂する。うるさい、何時だと思ってんのよ!と硝子の声が聞こえた。