死へのリレー

   最近ようやくレベルカンストしてさぁ、何て言いながら部屋へ入り込むを止める術は今のところない。彼女は勝手に入り込むし、こちらは言いも悪いも言えず毎度ながらもじもじとするだけなのだ。

どうしてこんな事になったのかは定かではない。只、何となく魔法史の授業で隣同士になり(何か魔法使えないらしい、ウケる)授業終わりに一言、二言話をした。気がする。そうしたらこうなっていた。意味が分からないがそれが凡そ事実だ。

オンボロ寮の監督生らしいは意外とゲーム好きで、だけれど彼女の寮にはゲームが出来る環境がない。故にイデアの部屋へ入り浸る事となった。らしい。

距離の詰め方がエグい、だとか僕だって一応男なんですけど、年頃の男女が同じ部屋にいるってどうなんですか、だとか、ていうかここまで距離無しで接触(接触!)してくるって事はそれって果たしてどういう意味なんですかね!?だとか、まあ言いたい事は山ほどあるのだが、当然ながら一切口には出さない。

今まさに画面内で敵を殺したは確か人の子で、この学校でこうしている分には一向に構わないのだけれど(だけどが入り浸りだして、急激に視線を感じる頻が増えた。何なら今もドアの向こうに数人の気配を感じる。超怖くないですか、そういうの)ここを卒業して、それから世に出て。そんな先の事なんて考えたくもないし未来の話は嫌いだ。永遠の命なんて辛い事ばかりだろ。別れの数だけ重ねるだけですし。

とか考えてたらやっぱりどうしたって嫌な気持ちになる、嫌な、というか、ざわつく。落ち着きのない、そわそわとした、例えようのない感情。


「…お腹減ってる?」
「あ、それザクロでしょ」
「そ、そう」
「それ超美味しいよね、いいの?」
「早く食べないと悪くなっちゃうから…」


何て言い訳、我ながら最悪で笑っちゃう。
がここへ来てから少しずつ差し入れを食べて貰っている。一番最初はドキドキした。だっては何も知らない。それがどういう事なのか一切知らない。人の子が死者の国の食物を口にする事がどういう意味を持つのか。

やっぱこれ美味しいわ、と笑うを見て、こちらも歪んだ笑顔で返す。多分これが恋ってヤツなんでしょうなぁ。もう一粒、の指がザクロの粒を運んだ。かわいそうに。

やっぱり君は、運命の女神に見放されているんだ。