夢の遊園地、これにて閉店

   あの日、どうやって戻って来たのか覚えていない。グリムによると、レオナに担がれて戻って来たらしい。お前、体調でも悪いのか?と心配されドキリとした。

目覚めればもう翌日の朝で、スマホにはエースやデュースから他愛もないメッセージが幾つか、レオナからは(当然と言えば当然なのだが)一切のメッセージはなく安心したのもつかの間、残った一通のメッセージに気が重くなる。

ヴィルからメッセージはたった一言、『明日9時にいつもの場所に』。そもそも昨日の課題もヴィルの指導のもと行っており、要は無断でバックレた形になっているのだ。下手にメッセージを送るのはやめ、直接口頭で謝罪をするべきだと判断するも、どう伝えるべきか迷う。蝶を探しに行ったら犯されました、とでも言うのか。答えは出ないまま、『何時もの場所』に向かった。









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ポムフィオーレ寮のボールルームは休日の午前中はヴィルの貸し切りになる。言い訳のしようがないなと思いながらとりあえず謝り倒すかと思いゆっくりとドアを開いた。ヴィルはいつも通りの様子でそこにいた。休みの日はここでにヨガを交えたストレッチやバレエを教えている。昨日は、と言いかけたをいいのよと制し流す。ヴィルの様子はまるでいつもと変わらず、杞憂だったかなと安心した。

これ、今度タイアップしようと思ってるハーブティーなのよ、感想を聞かせて。準備をしている途中にヴィルから手渡される薄紫のグラス。代謝を促進する効果があるらしい。花のような甘い味がして、最後の最後にじんわりと苦みが残る。変わった味だった。

軽くストレッチを行い、いつものようにレッスンバーの前に立つ。最初はいつも通りのレッスンだったのだが、途中から様子が変わって来た。まず、前触れもなく酷く暑い。汗だくになったを見たヴィルは上着を脱ぎなさいと言うも、は中々脱がない。理由は先日の情事の痕が色濃く残っている為だ。今朝シャワーを浴びている時に気づいた。

のらりくらりと言う事をきかないに腹を立て(たのだとは思っている)たヴィルが半ば無理矢理上着を脱がしにかかった。



「嫌だ、やめてください」
「何なのよ」
「私、今」



鏡に映し出される赤い痣だらけの身体。心臓の音が体内で爆発しそうだ。レッスンバーを強く握る。



「どうしたの、。その痣」



鏡越しに映るヴィルの眼差し。どうにか誤魔化そうと言葉を選びかけた瞬間、自身の口から突いて出る言葉―――――



「昨日、レオナさんと」



何故そんな事を言ってしまったのかが分からず動揺するも、ヴィルは顔色一つ変えず言葉を投げ続ける。



「昨日って、アンタが蝶を探しに植物園に行った時?」
「蝶が、レオナさんの耳に」



レッスンバーに捕まり、右足を上げているの背後にぴたりと寄り添い、ヴィルが耳側で囁いた。



「アタシ、近づくなって言ったわよね?」



ヴィルの指先が痣をなぞる様に撫でる。身体がおかしい。隠し事が出来ないし、息が上がる、感度が上がっている。まるで、昨日みたいに。上着を脱いだはキャミソール姿で、はあはあと呼吸が上がる度に胸が上下する。それなのに姿勢が崩れそうになると、姿勢!と喝が入る。

一つ、二つ。ヴィルが痣を数え、指先がキャミソールの紐にかかった。肩を滑り落ちブラだけの姿だ。こんな所にまで。あの男の痕が。腹が立つ。の乳房には赤い痣と歯形が残っている。彼女は気づいていないが、首の後ろにも歯形はついている。小さく喘いでいるの顎を掴み、顔を上げさせた。



「こんな顔して、はしたない」



ブラを外され咄嗟に身を隠そうとするも、パン!と乾いた音が響き許されない。



「どうしてアタシの言う事をきけなかったの?」
パン!
「あ、ごめんなさいっ!」
「あんな男にっ、汚されて!」
パン!



ポールを握る手が汗で滑る。お尻を叩かれる度に身体は逃げようともがくもヴィルの右手はの顎を掴み、左手は全身を撫でている。



「あっ、あ、ヤダ、」
「キレイな乳房。肌も白くて、形も良くて上向きで」



顎を掴んでいたヴィルの指がの唇を割り、舌を掴んだ。唾液が指を伝う。



「こんなに、あの男の色に染まって!」



ぎゅっと乳首を摘ままれ捻られた。



「んん!!!」



がビクビクと背を震わせた。レッスンバーから足が落ち、背後のヴィルがを支える形になる。



「やれやれ、仕方のない子ね」



ヴィルの声を聞きながら、彼も男だったんだな、と漠然と思う。あの佇まいであの喋りなので何となくそういう対象ではないのかなと勝手に思っていた。その勘違いに気づく。

へたり込んだのジョガーパンツを脱がせ、鏡に向かって足を広げさせた。背後にはヴィル。膝を立てた開脚だ。昨日の今日という事もあり、もうベタベタに下着は濡れていた。



「ヤダ、もう許して、ごめんなさい」
「駄目よ、ちゃんと見なさい」



昨日はレオナの勢いに恥ずかしさを感じる暇もなかったが、今回のヴィルのやり方に耐え切れず涙が零れる。クロッチ部分は濡れ過ぎて透けている。ヴィルはそこを指先でツツ、となぞる。



「どうして泣いてるの」
「あっ、あ、だって、こんなの」



起立しているクリトリスを弾くとが大きく喘いだ。透けた生地の奥でひくひくと肉が蠢く。ドロリ、と濃い体液が溢れた。



「これ、アタシがあげた下着じゃない」



そう言いながらヴィルが紐を解いたが、左右の紐が解かれても体液のせいでべたりとくっつき離れない。



「紐を解いても濡れ過ぎちゃって取れないわ」
「…っ」
「自分で剥がして」



そう言い、自身に剥がさせる。ひくひくともの欲しそうに動く肉ひだの上、痛い程赤く膨れたクリトリスが休む暇もなかった身体を知らせる。



「獣の舌はざらついてたでしょう?ねえ、。」



止めどなく溢れる体液を指先で掬い、腫れたクリトリスをぬるぬるとてからせ強い力で捻った。が大きな声で喘ぎ身体を捩るも、大きく開いた足はヴィルの足で固定されている為、逃げる事が出来ない。何度イッてもやめず、幾度も繰り返す。



「どう?獣の愛撫とどっちがいい?」



ヴィルは耳側で囁くも、快感が強すぎて声にならず、何度もイかされる。イくたびに同じ質問を繰り返され、ようやく息も絶え絶えの状態でこれがいい、と答えた頃にはクリトリスは更に腫れていた。



「あーあ、見て御覧なさい、酷い顔」



涙と涎でぐしゃぐしゃの顔。その顔を見てゾクゾクと興奮する。この子はわたしのもの。誰にも渡さない。私だけのもの。私だけのものよ。

の腰を掴み膝で立たせる。ヴィルの性器は痛い程屹立していて、やはり男の人だったんだなと今更ながら思った。



「自分で挿れて」



が右手で大陰唇を開き、グッと腰を下ろす。濡れているので割とすんなり入るものの、入口で止まる。少しだけもたついたの両手首を掴みグイ、と引っ張った。一気に奥まで挿入されが喘ぎながら身を反った。その一連の様を鏡越しに見ていた。最高の場面。がヴィルの性器を掴み、挿れやすいように肉を分け感じながら腰を下ろす一連の様子。そんな様子をアリーナで見る事が出来るなんて、死ぬほど興奮した。

拙く腰を動かすを一通り堪能し、全然ダメね、と耳打ちし立たせる。挿入したままレッスンバーに捕まらせバックから激しく突き上げた。脳が痺れる程気持ちがいい。これは私だけのもの。私だけのものよ。二度と、許さない。突く度に膣内は軽く痙攣しがそろそろイクだろうな、というところでピタリと動きを止める。



「もっと気持ちよくなりたいなら、右足を上げなさい」



ヴィルの呼吸も上がっている。おずおずと足を上げるの右足を掴みバーに上げた。激しく突きながら赤く腫れたクリトリスをぐりぐりと弄る。の締め付けが増し、ヤダヤダと悲鳴のような喘ぎ声を上げる。



「本当にやめていいの?」
「あぁーっ!あー!だめぇぇっ、だめぇっ!」
「こんな格好で大きな声で喘いで恥ずかしい」



バーに上げた右足の指にぎゅっと力が入り、がエビぞりにのけ反った。同時に発射したヴィルは、ポタポタと垂れる己の精液を見ながら、何事か術を唱えた。










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気付けばヴィルに抱かれていた。どうやらあのまま眠っていたらしい。あら気づいたの。最中の激しさは一切身を潜め、ヴィルはいつもの口調でそう呟きの額に口付けた。

そのまま手を引かれ二人でシャワー室へ向かう。ヴィルが喋り始めたのはシャワーの熱気で辺りが見えなくなってからだ。の身体を洗うのもヴィルで、キメの細かい泡が全身を埋め尽す。何となく断る術もなくされるがままだ。

足を開きなさいと言われきわどいなと思いながら言う通りにする。シャワーヘッドを片手にヴィルが跪いた。無意識に一歩後退り冷えた壁に背があたる。ヴィルの指がの性器に分け入り中で指を開いた。そのままかきだす。



「妊娠の心配はないわ。安心なさい」
「…」
「杞憂じゃなくて、そういう魔法があるのよ」



そう言われ確かにホッとした。



「誰もが使えるわけじゃないけど、あの男も使えるみたいね」
「!」



足元には白い塊が水流に交じり流れてゆく。好きも何も、誰も言わない。こんな事になった理由を口にしない。ヴィルは何か言いたげな顔をしたままシャワーヘッドを定位置に戻す。頭上から水しぶきが降り注ぐ中、ヴィルが身を屈め口付けてきた。

これは一体。どういう事なんですか。聞く事も出来ないままに、それでも何事もなかったかのように朝は来る。誰も何も言わない。説明責任は負わない。

これまでと何一つ変わらず、はオンボロ寮の監督生として生活していて、相変わらずヴィルのお気に入りだ。傍から見る分には。



「何か最近、エッチぃんだよねぇ、小エビちゃん」
「最近、雰囲気変わったよねぇ、ちゃん」
「毒でも、盛られたのかも知れないな」



その変化は、知る人ぞ、知る。