純銀の心臓を磨いておくれ

   月に一度クルーウェルが『Mr.Sのミステリーショップ』に顔を出す事は余り知られていない。その訪問は基本的に日も暮れた時間帯になるし、その頃にもなると店自体は閉まっているからだ。

閉店後の店舗で行われる大人の会話の内容は、主に避妊魔法薬の売れ行きの話になる。クルーウェルが精製した避妊魔法薬は今や世界中で使用されており、その卸は全てこのサムに一任されているからだ。購入は18歳からとなっており、インターネット販売をメインに展開している。

身分証の提示が必要となる為セキュリティのしっかりとした受発注システムが必要となり、サム独断でイデアに発注、結果彼の組んだシステムは最高に質のいいもので、避妊魔法薬をトラブルなく世界中に拡販している。現在でもメンテはイデアが行なっているらしい。

月に一度クルーウェルが店を訪れる理由は、受発注のデータ確認をする為だ。ビジネスに私情を挟むつもりなど毛頭ない。副業は当然、学園長であるクロウリーも了承しているところであるし、仔犬共の躾にも大いに役立っている。



「キングスカラーはいつも通り、クローバーも変わらず…んん?」
「どうしたんだい、先生」
「…珍しいな」



優秀な生徒は18歳の段階でに避妊魔法薬を使う事が出来る。否、優秀であればもっと早い段階で使う事が可能だ。只、この魔法薬を手に入れるハードルは想像よりも高い。

購入者全員の情報はイデアがデータ化してサムに渡している。それを眺めながら、この仔犬には新しい女が出来たらしい、だとかこっちは別れたようだ、だとか、いよいよ使う事が出来るようになったのか、等と生徒たちの管理にも役立っているわけだ。

若い仔犬に自制を求める事程無意味な真似はない。自身の過去を振り返ってもそうだ。自衛するのはいい事だ。だからクルーウェルもこの薬を作った。



「ああ、あの小鬼ちゃんの事かい」
「…」
相手は誰だ…?









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モデルとして出演する大きなショーの為に1週間学園を離れるウィルは、それこそ忙しなく準備をしているところだった。大手ファッション誌が主催する名の知れたショーで評論家達も多数招かれている。正直なところモデルとしては大きなキャリアアップを望める大チャンスだ。故にヴィル側の気合も相当なものとなっており、バタバタと忙しなく準備を進めている最中だ。クルーウェルに話しかけられた。彼もこのショーの事は知っていて、出演が決まった際には盛大にお祝いをしてくれた。



「調子は良さそうだな、シェーンハイト」
「ええ、おかげさまで」
「オレも見に行きたかったよ」
「先生には仔犬の指導がありますものね」
「あぁ」



そうだな。



「仔犬の世話はオレに任せておけ」
「えっ?」



何の気なしの会話の中、言い知れぬ気持ち悪さを感じ顔を上げた。クルーウェルは普段と同じ涼しい顔でそこにいて、こちらを見ている。



「1週間も離れるんだ、心配だろう?」



何が。
そこは明言しない。余りの気持ち悪さにもう少し詳しく突っ込みたかったのだが時間がそれを許さない。そのままクルーウェルとは別れ学園を離れる。一抹の不安はの事だが、打てるだけの手は打った。問題はないように思えていた。









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ヴィルが学園を離れる前日、呼び出されたは部屋に入るなり服を脱げと言われぎょっとした。ぎょっとしたものの、彼の言う事に抵抗出来るはずもなく、渋々とズボンを脱ぎ下着も下ろす。

あんたはボーッとしてるからね、と言いながらヴィルはの下半身に向かい魔法をかける。一見何がどうなったわけでもないのだが、貞操帯をつけたらしい。自室に戻り一人で確認してみた。見た目には何も変わらないのだが、透明な何かに覆われて膣口に触れる事が出来ない。これは束縛なのだろうか、それともまるで信用されていないのだろうか。

確かにレオナとの一件以来、ヴィルの態度は変わった。男になった。これまでであればお茶をして終わるような時間でさえ触れて来るし、他の男との接触に関しては殊の外厳しく(レオナに関しては問答無用だ、近づく事さえ許されない)こちらの行動を制限する事が出来ない分、知れた夜の激しさといったらなく、完全にこちらの体力が持たない。

ヴィルには言っていないが(どんな目に遭うか分からないからだ)レオナからは度々『俺が欲しくなったら部屋まで来いよ』等と囁かれているわけで、今回のこの対応は理にかなっていると我ながら思えた。これでは確かに挿入が出来ない。だからといって排泄には支障がない為、とりあえずいつものように過ごす事にした。

ヴィルがいないとなると何となく皆、接触が増える。日頃からどう見られているか思い知る瞬間だ。だからといって彼は別にに対し好きだとかどうだとか、そういった言葉をかけた事はない。だからの方も言わない。そういう事でなかった場合のダメージが余りにも大きすぎる。こんな事をしていても傷つくのは恐ろしいのだ。

だからといってこんな状況をズルズルと続けるのもよくないなあと思いながら初日の夜を迎える。夜になるとヴィルから連絡がくる事になっている。在宅確認のようなものだ。やはりこれはやり過ぎなのではないか、というかヴィルのいない間くらいエースやデュース達と遊びたいし、その辺りを話せば分かってくれるのではないか―――――等と淡い期待を抱いてた。それが15分前の出来事。今となっては虚しい希望だ。己がどれだけ生温い考えをしていたのか嫌と言う程分かる。

体内で何かが浅く蠢いている。ずっとだ。これは予測していなかった。15分間じっと身悶えし耐え、指定された時間通りに鳴る着信を取る。



「ヤダ、艶かしい声してどうしたの?」
「ヴィルさん、これ…!」
「アタシがいない間、アンタが退屈しないようにと思って」



この目に見えない透明な貞操帯は5センチ程度の突起のついた部分を膣口に挿入しているような状態で、今はその突起部分が振動している状態だとヴィルは言う。オンオフは術師であるヴィルが決めているようだ。

要は自分の目の届かない間、がおいたをしないよう、大人しく部屋にいるように電話の時間を決め、その1時間ほど前から振動するようにしているらしい。今回は手始めという事で15分前に始動させた。



「それ、アタシ以外は解除出来ないから」



浅い所で動くそれのせいで身体はジンジンと疼く。どうにもこのヴィルとセックスをするようになってから段々と感じやすくなっている気がしている。たかがこの程度の振動で蓄積される快感がいつまでたっても消え失せない。決してイけないのだが、抑えきれず悩ましい声が漏れる。



「…まったく、しょうがない子ね」



そう言うヴィルの声もやけに熱っぽい。ああ、これは。これは又、彼のプレイが始まってしまう。その場合、私は彼に抗う事が出来ない―――――



「全身が見えるようにスマホをセットさせて、足を広げて」



ヴィルの指示通りに動く液晶の中のヴィルも興奮しているようで、美しい顔の中に光る二つの目が獣の様に光って見えた。あの目だ。あの目を見た時にヴィルの事を男だと認識する。言われるがままに広げた足の間にあるのは見た目には下着をつけた普通の下半身だ。当然、至極濡れている。



「下着をとって」



言われるがままに下着を取る。突起を咥えている穴はぽっかりと開き、肉襞が蠢く様子が目に飛び込んで来た。想像以上の光景に唾を飲む。これは、想像の何倍もいやらしい光景だ。当のにその自覚がないところが尚良い。



「指を咥えて。たっぷり唾液をつけて」



一定間隔の浅い振動をじっと耐えているに告げる。そのまますっかり膨れ上がったクリトリスを優しく撫でさせればの腰が跳ねる。刺激が強すぎたようだ。



「もっと優しく、周りをゆっくり撫でて。アタシがやってるみたいに」



言葉で誘いながらに自慰をさせる。中に指を挿れる事は出来ない。あえて動きも強くしない。は必死にクリトリスを弄り、三度ほどクリイキをした辺りで終わらせた。こちらが発射したタイミングだ。おやすみ。そう言い通信を切る。それが三日続いた。

自身で慰め幾度もイってはいるが、中イキが出来ない為、消化不良のような悶々とした状態が続く。三日目からは自身の欲求不満にはっきりと気づいていた。そんなの様子を眺めている男がいた―――――