思い出すことすら叶わぬ

   設定しておいたアラームが鳴り、無意識にそれを消した。眠れず身体は酷く疲れているのに頭だけが冴え渡っている。それでもベッドの上から動く事が出来ず時間ばかりが過ぎた。

このままでは駄目だ。ここにいては。そう思うもどこへ行く?どこにも行く宛などない。ここしか居場所はないのだ。そうこうしている内に部屋のドアがノックされる。約束の時は来た。



「おい、。準備は出来たのか?」
「…!」
「入るぞ」



ジャミルはいつものように平然と部屋へ入って来た。いつもと違うのはばかりで、ベッドの上で座り強張った表情で見つめて来るに気づき察する。

気づいた。ようやく気づいたのか、お前。肩にかけていたバックを置き、ベットへ近づきながら話しかける。が後退った。



「…まだ着替えてもいないのか、遅刻するぞ」
「近づかないで」
「酷いな」



彼氏に対して。
が思わず掴みかかろうとした瞬間、ジャミルが彼女の両手を掴み顔を覗き込んだ。今にも口付けそうな距離だ。至近距離で視線が合う。



「どうした、
「あんた、何を考えて」
「お前が俺を愛してるんだろう?」



目前でジャミルが囁く。身体が動かない、目を逸らす事が出来ない。意識が遠のく―――――









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胡坐をかいたジャミルの上に座り、大きく足を広げ膝を曲げている。所謂、背面座位の状態だ。ジャミルの性器が丁度の割れ目の下に位置し、彼女の体液でぬらぬらと光っていた。



「やぁだぁ♡もう我慢できなぁい♡♡」
「まだダメだ」
「やぁ♡♡」



腰を捩りジャミルの性器に擦り付ける。この状態で30分程度経過したのか。最初は然程濡れていなかったの性器は、与えられる羞恥ですぐにとろけた。



「ちゃんと聞かせてくれ」
「ぁ♡んんっ♡♡」
「昨晩はどうだった?」



見送る前に自室での身体を散々と弄び悶々とした状態で送り返している。あえて興奮状態で寮に送り、覚醒後の身体を持て余させるよう調整した。そうする事によって彼女は自発的に自慰行為行う。この一週間ほどそれを繰り返し、報告させている。



「んっ♡あ♡…我慢出来なくてぇ♡♡♡」
「やってみせてくれ」
「やぁ♡♡♡」
「言う事を聞かないとご褒美はお預けだ」



そう言い頬に口付ければ、彼女はおずおずと腕を伸ばす。溢れ出す体液を指先で救いビンビンに尖ったクリトリスを指先で嬲る。はぁはぁと荒くなる呼吸を見計らい、顔を上げさせ口付けた。の舌を吸い、口内を舐め上げればが余計に感じている事が分かる。ジャミル指先はの耳朶や乳首を指先で弄んでおり、がビクビクと身を震わせた。

先程からひくひくと蠢くの肉は熱い体液を垂れ流しながらジャミルの性器に吸い付いている。口づけている最中には軽く達した。口の端から涎を垂らし胸を大きく上下させている。余程弄り倒したのかクリトリスは赤く腫れていた。



「挿れてぇ…♡♡♡」
「自分で挿れるんだ」



腰を上げジャミルの性器を掴む。腫れぼったくなった大陰唇を割った瞬間、ふっと正気に戻った。は何、小さな声でそう呟いたはずだ。全身を襲う限界まで高められた快楽に思考が追い付かない。



「やっ、ぁ、何!?」



ジャミルがの腰を掴み勢いよく腰を押し上げた。一気に性器が挿入され数日焦らされた身体はあっという間に達する。膣が幾度も痙攣し快感がなくならない。



「あっ、あっ、んんん!!!」
「よっほど我慢していたみたいだな」
「……!!!!」
「可愛いな、は」



耳側で囁かれ背中から駆け上る感触が脳まで達する。そのままの背を押し、体位を変えた。彼女の腰を掴み激しく打ち付ける。の右腕が逃げる様に伸ばされ。シーツをきつく握り喘ぐ。恐らくこれは抗いようもない多幸感。もう何も分からない。焦らされていた身体がようやく大きな快感を得ようとした瞬間、ジャミルが動きを止めた。



「ぁっ…あ、なん、で」
「なぁ、
「なに」
「俺とお前は付き合ってるよな?」
「ぁ…」



数秒。ほんの数秒だ。
言葉に詰まったを見たジャミルの眉間に深い影が差し、間髪入れずクリトリスをコリコリと指先で挟み動かした。思いもよらぬタイミングにが悲鳴に似た喘ぎ声を上げ身を捩る。やめて、だとか強い、だとか、は叫ぶも答えるまで執拗に攻め続ける。逃げようとするの身体を押さえ込み幾度も達させた。



「やらっ、や、やぁっ」
「答えろ、
「いくっ、いくっいくいく」
「ちゃんと言うまで終わらないぞ」
「ごめっ、な、さ」
「聞きたいのはそんな言葉じゃない」
「付き合ってるぅ………」



ジャミルの指がクリトリスから離れた瞬間、息も絶え絶えのの口から吐き出された言葉だ。その言葉を耳にした瞬間、ジャミルは満面の笑みで濡れた指先を舐め、そうだよな、と返し勢いよくピストンを再開した。

ぐったりとしたの身体を好きに揺さぶり、の右足を肩にかけ深いところまで侵入する。これまで届かなかった深い場所、ずっと疼いていた場所を激しく擦られが喘ぐ。



「お前は俺のものだ」
「あっ、あっ、あっ!」
「誰にも渡さない」



ジャミルは耳側で延々と囁く。まるで呪詛のようにだ。そんなジャミルの声、姿に酷く興奮している自身に気づいている。自身でも何度目か分からない絶頂の後、一番大きい波が押し寄せた。意識朦朧のは呼吸を求めるように唇を動かしている。



「ん!」
「は、」



そんな彼女の呼吸を奪わんとジャミルは口付ける。の舌を絡め取りながら深い場所に射精した。









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お前はなにも心配しなくていい。ジャミルはそう言った。お前は何も心配しなくていい、何も考えなくていい。俺が全て上手くやってやる。だって俺はお前の恋人だからな。

疲れ切った身体は指先一つも動かせない。こちらは動けないほど疲れているが、ジャミルはベッドから降り水分を補給していた。ペットボトルを渡されるも受け取る余力さえない。の下腹部に向けジャミルは何事かを呟き、口移しで水を飲ませて来た。冷たい水分は全身を潤し気持ちが良い。先程ジャミルが排出した精液が内腿に垂れているがそれを拭う事さえ侭ならない。

明日も早いぞと、まるで何事もなかったかのように話しかけて来るジャミルは所謂『彼氏』のような会話を投げかけて来る。それをどう受け止めるべきなのか整理が出来ていない。どうすべきなのか答えは出ている。受け入れざるを得ない。それに今は抗えない眠気に襲われながら逃げる事さえかなわない。頭は働いていない。だってもう何も考えなくていい。

おやすみ、と囁いたジャミルが頬に口付けを背後から抱き締めた。すぐに逃げ出した方がいいのだろうに、汗ばんだ肌と肌は密着し離れない。背後から蛇のように絡みつくジャミルの肌は驚くほど密着し少しも離れやしないのだ。