闇なんて、慣れてしまえば何にも変わらないわ



   そんな責め苦が続けられ一週間が経過した。その日は朝から国務で城を離れており、お前は好きにしていいと暇を貰った。

連日の調教染みた責めはジャミルの心身を極端に疲弊させていた。さっさと射精してしまえば気が楽になるのだろうにそれが望めない現状。カリムが強固に反対していた理由が今になり分かる。あいつはの本性を知っていたのだろうか。あんな女だと知っているのだろうか。

折角の暇だ、何かやりたかったが頭がまるで働かない。とりあえず自室に戻り横になろうと歩き出したその時だ。背後から声をかけられ振り向く。王がいた。の実父であり、この国の実権を持つ男。城内の噂によると親子仲は極めて悪く、確かにがいる間には声をかけて来る事がなかった。

王はジャミルを呼び、アジーム家に渡して欲しいものがあるのだと告げた。すぐすむので共に来てくれと促される。わかりましたと答え王の後ろを歩く。そのまま王に並び部屋へ入った。

室内は暗かった。胸やけしそうな甘ったるい匂いがそこかしこで滾っている。入ってすぐにしまった、と思うも既に身体は動かない。足に力が入らず床に蹲る。この王が自身をいかがわしい目で見ているであろう事は初日から分かっていた。あの好色な眼差し。腹の底から嫌悪感を抱くあの眼差しは知っている。これまでもそういう輩から下世話な誘いを受けた事は数多だ。

アジーム家お抱えの従者として要人の集う場所へ向かえば向かう度に下世話な誘いを受ける頻度は増えた。その都度、カリムが酷く憤慨し追い払っていた為、未だ事なきを得ている。世界はクソだ。強者は弱者を喰らい、そのカスを弱者は貪る。男の足が近づきどうにか視線を上げる。イチモツを勃起させた王が目前に立ち、ジャミルに囁いた。



「あれは気性が激しくていかん、死んだ母親に瓜二つだ。見た目こそ美しいがあれの母親も手が付けられんでな」



腕を掴まれ寝具へ引き摺られる。王は一人喋り続ける。



「あれは見た目こそああだが、中身はまるで男だ」



寝具に引き摺られる度に香の匂いは増す。余りの匂いに頭がくらくらし、ろくに抵抗も出来ない。王はジャミルの身体を軽々と持ち上げ寝具に投げた。こんな状態なのに、ずっと射精を禁止されている身体は少しの刺激でも反応してしまう。王の指が無作法にジャミルの全身を撫で上げる。



「あれの相手をして疲れたろう。すぐに楽にしてやる―――――」



王がジャミルの服を剥がんと布を握り力を込めた。その時だ。幾人もの従者を振り払いながらが乱入して来た。凄まじい剣幕だ。夜ごとにこちらを責めるあの爛れた笑みからは想像もつかないような猛々しい姿。カリムが知っているの姿はこれなのかも知れないと思った。



「幾ら血の繋がった父上だろうと、私のものに手を出す事は許されない!私の獲物に手を出す等、恥を知れ!!」



俺は獲物なのか、と思い笑えたが、一先ず助かった。寝具の上でぼんやりとしているジャミルを見たは、気付けだといい布を口に当てる。すぐにふらついた足もとに力が戻り歩いて部屋に戻る事が出来た。とんでもない目に遭ったがあの強い香のせいで今だ頭は夢うつつだ。現実味がないのはいい事なのかも知れない。



「助かった、礼を言う」
「あれはいつもああなのよ」
「何?」
「ああやって私の獲物を奪うの。よかったわ、お前が汚されていなくて」



は言う。



「汚されていたら、その場でお前を殺していたわ」



自分のものが汚される事がどうしても許せないのだとは言う。俺はお前のものでは無いのだが、と思うが愚問だ。今この場所で主はだ。命の選別も彼女が行う。それにしたって間一髪だったなとゾッとする。



「お前、あの国の出身で従者だというのに身を売っていないのね」
「幸運にもそういった境遇じゃないんでね」
「カリムは随分とお前を大事にしているようね」



はそう呟き、カリムとの思い出話をはじめた。ジャミルはジャミルで相槌を打っているが、実は話している最中から身体に変調をきたしている為、まるで内容が入って来ない。

おかしなくらい性的衝動が込み上げて止まらない。心臓は張り裂けそうな程脈打ち、全身は滾る様に熱い。それなのに貞操帯の中の性器は半勃ちのような半端な状態で、そのもどかしさに耐えられない。頭と身体がまったく逆方向にぶれている。これまではどうにか耐える事が出来たが、これは無理だ。気が狂いそうになる。おかしい。

はっと顔を上げればがこちらを見ていた。いつもの、あの悪戯な眼差し。お前か。目にした瞬間、理性など消え失せそのままに飛びかかった。はするりとジャミルを交わし寝具の方へ誘う。の腕を掴めばそのまま引きずり込まれた。

寝具の上、を押し倒した状態で見下ろす。至極楽しそうに笑むは指先で貞操帯の鍵を弄んでいる。何もかも全て御見通しとでも言いたげに。



「…お前はどうして欲しいの?」
「外せ!!」
「どうして?」
「気が、狂いそうだ!」



がジャミルの首筋を噛んだ。噛まれた先からゾクゾクと耐え難い快感が走り全身を襲う。はジャミルの首に噛みついたまま器用に貞操帯の鍵を開けた。ようやく訪れた、待ち侘びた開放感に震えた。見る見るうちに血液が集まり性器はより大きさを増す。 の目は爛々と輝きこちらを見つめている。



「どうするの」



はあはあと息が上がる。己の呼吸音しか耳に入らない。



「どうしたいの」



はジャミルの乳首を爪先でくりくりと弄る。酷く暑い。喘ぎ声交じりにどうにか振り絞った。



「…っ、ぁ、挿れさせてくれっ」
「お前になら許すわ」



ジャミルの頬を両手で挟みが笑った。初めて見る熱っぽい表情だ。開かれた足の間は、はしたなく濡れそぼっており、あてがうとすぐに侵入を許した。思わず声が漏れる。脳天が痺れ全身が性器のようだ。まるでこの身体は快楽の入れ物で、理性などハナから存在しなかったのではないか。そう思う程ありのままにその身を貪る。最初の射精まではもう兎に角、無我夢中で腰を叩きつけた。

ジュクジュクと止めどなく溢れる愛液と相反して締め付ける肉。も相当に興奮している。舌を絡め唾液を貪りながらこれまで溜めに溜めた精液を発射する。 一国の姫と同衾しているという事実は頭になかった。