影が伸びて闇が僕を覆う



   最近、目覚めが極端に悪い。まったく疲れが取れていないし、何ならズンと思い倦怠感に苛まれる。目覚めた瞬間からそれで、下腹部がやたら怠くベットから降りるさえ一苦労だ。ずるずると足を引き摺りシャワールームへ向かう。

鏡に映る己が顔は特に変わりなく、おかしいなと思いながら寝間着を脱いだ。身体のところどころに薄い痣のようなものがついている。このオンボロ寮は古い。虫にでも噛まれたのだろうか。シーツを洗濯しなければ。

そのままシャワーを浴び無理矢理に頭を覚ました。貧血に似た症状だ。壁に頭をつけどうにか耐える。グラグラと視界が回り気持ちが悪い。体調でも崩したのだろうか。この世界にはの知らない病原菌がいるのかも知れない。熱などの諸症状は一切ないのだけれど、ここ最近ずっと続くこの体調不良は目に余る。



「…っ」



下腹部が熱を持ち体内からドロリと溢れ出た。おりものにしては量が多い。霞む視線を足元に向ける。シャワーの水に巻き込まれ流れるそれ。精液?どうして。

この学園に来てからというもの、誰かとセックスした事はない。そもそもこちらは(一応ながら)男装をしているわけで、今のところ誰からも指摘されていない。女だという事を確認した者はいないはずだ。

恐る恐る膣に手を伸ばす。酷く柔らかくなっているそこに指を挿れた。濡れている…?指を二本挿れ中身をかきだす。ボト、ボトと白い塊が足元に落ちては流れた。間違いない。これは精液だ。脳が理解した瞬間、腰が砕けた。

私には、何の記憶も、ない。

その日、は初めて授業を休んだ。いつも通り迎えに来たエース達には体調が悪いと告げた。ドアを開ける事は出来なかった。









どういうつもりだ、と吐き出したマレウスは口元を抑え眼前の光景に見入っていた。どういうつもりだ、リリア。見つかってしまったのぅ、と笑ったリリアは自身の腿の上に跨っている女を細腰を掴み身を起こした。女はもどかしそうに腰を動かしリリアの性器を嬲っている。



「どうじゃ、マレウス。十分に化けたじゃろう?」
「…」
「ワシも年甲斐もなく張り切ってしまってのぅ」



この有様なんだと笑う。リリアの姿はすっかりと元の大きさに戻っており、確かにいつ振りだろうかと思う。精気を大量に喰らったリリアは溢れんばかりの力を持て余している。その源は―――――



に、何をしたんだ」
「ワシは何もしてはおらぬよ」
「…」
はニンフに魅入られたんじゃな」



最初に目にしたのがワシで助かったじゃろう、とリリアは言う。どこからか紛れ込んだニンフが男装をしているを発見し、悪戯心でその身を借りたようだ。妖精の中には人に悪さをするものもいる。

ニンフに憑りつかれたは獲物を捜し校内を彷徨っていた。誰に見つかっても同じような結末にはなっていただろう。何はともあれ濃い雌の匂いを感じ外に出たリリアには捕獲された。



「お前の愛しい人の子じゃぞ」
「…」
「存分に喰らうが良い」
「僕は、」




僅かに開いた唇からちらりと舌が覗いた。白く透ける柔らかな布に包まれた身体はじっとりと汗ばんでいた。リリアから離れたはふらふらと覚束ない足取りでマレウスの元へ近づき腕を取った。ぼんやりとした虚ろな眼差しは色に冒され情欲に焦がれている。



「止せ、
「欲しいの」
、僕は」



の手がマレウスの胸元から下腹部へと動く。既に勃起している性器を見つけ嬉しそうに舌なめずりをした。普段の朗らかな姿からは想像もつかないような痴態だ。全裸のリリアは祭壇の上に片膝を立て座りこちらを眺めている。

マレウスの前に跪きは彼の性器を取り出した。上目遣いで眺めながら舌先を付ける。為すがままだ。の為すがままにこの身は犯される。の柔らかな口内に包まれた性器は早い段階から先走り、はそれを舌先で舐めとる。どんどんと呼吸が早くなる。



「どうじゃ、マレウス」
「…」
「ワシが仕込んだんじゃ、具合はよかろう?」



はマレウスの性器を嬲りながら自身の性器を弄っている。感覚も視覚も爛れている。反射的にの頭に手を置いた。



「…ッ、ぁ、出るっ!」
「ん!」



の口内に発射された精液を彼女はごくりと飲み込み、ちゅうちゅうと吸い取る。ああ、もう。僕には何が何なのか、分からない―――――

そのままリリアの座る祭壇に移動し、その上で膝をつかせた。所謂四つん這いの格好だ。の腰を掴みグッと挿入する。狭い入口は侵入を押し返す。強い力で押し込んだ。が大きく喘ぐ。



「どうじゃ、。マレウスのモノは」
「あっ!あっ!ぁ、あ!」
「ちゃぁんと、口で言うじゃ」
「おっきぃぃ…」
「じゃそうじゃ、よかったのぅ、マレウス」



よく出来たのぅ、。リリアはそう言い、の髪を撫でながら咥えさせた。ここはディアソムニア寮の地下にある祭壇室で、主にリリアが儀式を執り行う際に利用する部屋だ。部屋の造り上、酷く声が響く。

に咥えさえたままリリアは上機嫌で話してくれた。を捕らえ、ここで犯した事。この時間の記憶はにはないという事。最初は拙かったがようやくそこそこのものになってきたという事―――――



「お前は僕がをどう思っているか知ってるだろう」
「知っておるぞ?ワシはお前の事なら何でも知っておる」
「だったら、」
「故によ」
「何?」
「おぬしのイチモツはデカすぎる。女が壊れよるわ」



の膣はぎゅうぎゅうとマレウスの性器を締め付ける。奥を突けば突く程、は感じているようで熱い体液がドロドロと止めどなく溢れている。そろそろこちらも限界だ。精液が込み上げると同時に背後からを抱き締める。そのままマレウスは中に射精したし、リリアは口内に射精した。

一通り満足したはリリアがオンボロ寮まで送っているらしい。ニンフが消えるまでこれは続くのだろうか。漠然とそう思っていた。その日以降もは当たり前のようにあの淫らな姿で祭壇室にいたし、リリアとマレウスの性器を舐め受け入れた。こんな事はやめなければならないと思うも、ニンフに操られたは淫らに精を求める。自分以外の他の男に抱かれる事は許し難く、済し崩し的に受け入れた。その結果がこれだ。

暫く学内で姿の見えなかったから呼び出され、今、眼前で相談を受けている。こんな話、ツノ太郎にしか出来なくて。事の詳細は伏せ、何かに憑りつかれているようなのだと怯えながら話すを前に酷く興奮している僕がいる。

ビクビクと怯えるは猜疑の塊になり今尚、オンボロ寮から出る事が出来ないでいる。それは駄目だ。それはよくない。お前の為にならない。だったら―――――

興奮を抑えきれず思わず顔を手で覆った。だったら僕の所に来たらどうだ。思いがけない僥倖。リリアも待っている。そう告げた刹那、濁るの眼。ああ、駄目だ。お前はもう救われない。そうして、



『あなた様なら、私を追い払う事など造作もないはず…』
「僕がいいというまでそうしてるんだ」
『仰せのままに…』



僕はもうお前を喰らう事しか出来ない。