ハロー、ハロー、僕に声を



   小エビちゃん忘れ物してったでしょ。確かフロイドはそう言いながらドアを開けたと記憶している。オンボロ寮には自分とグリムしか住んでいない為、皆と別れた後、寝るまでの時間帯だからと気を抜いていた。

丁度着替えをしている最中だったはシャツを肌蹴た状態で、かったるそうにドアを開けたフロイドと目が合ったわけだ。どうやら彼はがモストロ・ラウンジに忘れたスマホを届けに来たらしい。まったく気づかなかった。

わっと声を上げたは反射的にしゃがみ込んだ。眠そうな顔をしたフロイドは数秒黙り、後ろ手にドアを閉める。一瞬の出来事だったが、ばれただろうか。混乱したまま言葉を探す。



「え、なにそれ」
「ちょ、今着替えてるんで」
「は?ちょっと見せてよ」
「いやっ、ちょっと」



ばれたのだと認識する前にフロイドが近づいて来た。シャツはボタンを全て外している状態で立ち上がる事が出来ない。しゃがみ込んだまま身を逸らしどうにかフロイドを避けようとするも、彼はまずの左手を取った。立ってよ。そう言い腕を引っ張る。振り払おうとするもフロイドの力はやたら強く、無理矢理に立たされた。もう片方の腕も掴まれ頭上で固定される。



「えぇ~?何これ」
「痛っ…」
「小エビちゃん、メスだったんだぁ」



おもしろ。フロイドはそう言ったと思う。はっきりしないのはその刹那口付けられたからで、全身に鳥肌が走った。右手での両手首を掴んだフロイドはもう片方の手で露わになった乳房を触る。フロイドの手のひらは大きい。片方の乳房を掴みやわやわと揉む。

ベロベロと口内を舐めまわすフロイドの舌は長くて、こちらがどれだけ歯を食いしばろうとも下唇を噛み、隙間から侵入する。高く掲げられた腕が痛くて堪らない。爪先だけが辛うじて床につく状態だ。無力ながらもどうにか身を捩るが大した意味はなかった。

暫くの間そうやって呼吸を奪われ、両腕が痺れてきたくらいにベッドへ投げられた。投げられた瞬間、逃げなければと体勢を持ち直すも今度は片足をフロイドに掴まれる。



「ジタバタすんなって。逃げらんねーの分かんだろ」
「嫌だっ、やめて」
「は?うぜー」



フロイドはこちらの身体をまるで紙のように容易く扱う。掴んだ足を引っ張りさして広くもないベットに押し付けてきた。フロイドは身体も大きいし当然力も強い。背中を抑え付けられ身動きの取れないのズボンを器用に脱がす。どうにか抜け出そうともがくも身体の自由は完全に奪われた。



「全然濡れてねーじゃん、って当たり前かぁ」
「嫌だ嫌だ!本当やめてよ!!」
「うるせー」
「痛っ…!」



濡れていない膣に指を突っ込んだフロイドは何事かを呟き、一旦抜いた。どうやら指を舐め濡らしたようだ。そのままもう一度突っ込んで来た。長い指が強張る膣をこじ開け無理矢理に侵入する。

痛みと恥ずかしさ、情けなさで涙がこみあげて来る。どうして。どうして私がこんな目に。泣き顔を見られたくなく顔を背けた。室内には自身の押し殺した嗚咽が響き渡っている。最悪の状況だ。心が強張りまるで濡れないの身体に腹をたてたのだろう。フロイドが腕を離した。



「あーもう萎えっからそういうの」
「…!」
「泣くのやめてくんねーかなー」



泣けば終わるのかと、そう思った瞬間、喉の奥から嗚咽が込み上げる。熱い涙が目の脇を流れ落ちた。潤んだ視界にうつるフロイドは心底嫌そうな顔をしたままこちらを見下ろしている。

何その顔、その、何ものも見てないようなその目。数時間前まで普通に会話を交わしていた相手とは到底思えない冷たい穴だ。

ベッドに座ったフロイドは抑え付けていた手を離している。終わったのだろうか。こちらもゆっくりと身を起こした。



「俺さぁ、泣かれんのとか嫌なんだよね、めんどくせーから」
「…」
「痛ぇのが嫌だって事?痛ぇから泣いてんの?」
「ちが」
「指挿れた感じ、初めてじゃなさそーだし」



左手を広げ指をにぎにぎと動かす。フロイドの態度は恐ろしい程に普段と変わらない。ベッドに胡坐をかき、じっとを見ている。身を起こしたままその視線から逃れたく足を曲げた。脱がされたズボンは足首辺りまで下がっており身動きが取れない。



「こういう事、したくない」
「は?」
「何で、急に」



お前がメスだからだよ、とフロイドは言った。酷くイラついた様子で吐き捨てるようにだ。ぬっと伸ばされた腕は長く、思わず背後に避けようとも背の後ろはすぐに壁だ。逃げる事は出来ない。



「ヤダって!!」
「いーからこっち来いって!」
「痛いよ、ねぇ!ちょっと!」
「マジでコイツ言う事聞かねー」



結局のところ、そのままフロイドめがけ倒れ込んだは彼の両足に絡み取られ身動きが出来なくなった。大きく開いた両足の上からフロイドの足が絡み閉じる事が出来ない。前屈みになったフロイドはの肩に顎を置き、鼻先で指を遊ばせた。



「なに」
「気持ちよけりゃガタガタ言わないよねぇ?」
「や」
「だいじょーぶ、俺、上手いから」



開いた右手はの顎に触れグイと持ち上げた。フロイドの唇が重なる。離してと言いかけた舌を噛み、ぬるぬると口内を舐め上げる。両手でフロイドの身体を押すがまるで意味がない。

彼の身体は微動だにしない。いやいやと顔を振るがどこまでも彼の舌はついてくる。息つく間もない。フロイドの左手はの下半身を撫でる。爪先で股関節から膣までを撫で、下着の上からカリカリと掻く。呼吸を奪われたまま刺激を与えられ続け思いの外、容易く膣は分泌液を出し始めた。

徐々に固くなり出したクリトリスを重点的に刺激し、ビクビクとが反応する度、強く摘まむ。そうこうしていれば下着はぐっしょりと濡れた。フロイドの指が下着の脇から中へと侵入する。



「ん、んんっ…!」
「はーい、一丁上がりぃ」
「ぁぅ、ぁ、ヤダ」
「ぐっちょぐちょじゃーん」
「は、ぁ」



フロイドの指は長い。骨ばった指が二本、膣内をかきまわす。奥の方を散々刺激し、熱が溜まった所で折り曲げズリズリと壁を擦る。自分でも驚くほど容易く潮を吹いた。自分でも抑えきれない程の喘ぎ声が漏れる。

肩で息をするから足を外したフロイドは、そのまま彼女の身体をベットに押し付けた。フロイドの性器が触れる。



「逃げんなよ」
「…!」
「あー…」



気持ちいい。フロイドの性器がぐっと押し入れられこちらも思わずため息を吐き出した。勝手に侵入して来た癖に余りにも我が物顔だ。ずりずりとゆっくり腰を動かしていたフロイドがの片足を持ち上げる。より一層深い場所まで一気に突き入れた。の背が反り締め付けがきつくなる。



「…なぁに?小エビちゃん…」



イっちゃったの?耳側で囁かれもう駄目だ。フロイドの声にも熱が籠っている。そこから先は余り記憶がない。ひたすら感じて幾度も達し、気づけば隣でフロイドが寝ていた。全身は嘘みたいに冷え、膣はヒリヒリと痛んだ。

その日からフロイドは幾度となく関係を求めてきた。が難色を示せば、お前がメスだってばらしちゃおっかな。そう言われ断る事が出来なかった。この関係が嫌で嫌で仕方がなかったものの、心も身体も慣れる。いいか悪いかは分からないが順応する。事実がどうあれ生きていかねばならないからだ。

回数を重ねる内に恥じらいも失せ、行為には慣れた。これはもうこういうもので、軸は秘密の共有なのだ。だから、



『人とは面白いもので、そうなのだから仕方がない、と受け入れる事があるそうですよ。防衛本能の一種なんでしょうねぇ』



まったく、人間というのは何と哀れな生き物なんでしょう。ジェイドの言葉が何となく忘れられないでいる。

いや、だってそんなの意味わかんねーし。だったら何で最初に嫌だ嫌だって言ってたのって話だし。あの時と今、何が変わったのかって実際、何も変わってねーし。

今日も今日とてを呼び出した。最近はすぐに来るようになった。昔みたいに泣いたりもしないし、こうして二人きりになればすぐに潤んだ眼差しでこちらを見上げる。そんなを見れば否応なしに劣情が湧き出る。まるでその為だけの生き物のようで興奮する。



「お前ほんとバカだわ」



そう言い唇を突いたフロイドの指先を咥えたはやはり何も言わず、ぬるぬると舌で指先を嬲る。



「だからバカだって言ってんの」



どうしようもなく疼くのはこちらも同じだ。
バカは、どっちだ。