もう誰でもいいからお願いします



   自分でもそれなりに自覚はしている。このNRCに来てからというもの、暫くは大人しくしていたのだけれど(流石にまるで知らない場所で無防備には出来ない)ある程度馴れ、すっかり普段の自分に戻った。

自分でもよくない癖だと分かっているし、元の世界でもそれが原因で頻繁にトラブルへと巻き込まれてもいたのだが、最早これは性分だ。そういえば母親も姉も、皆同じような真似をしていた。

元の世界ではそれこそ中学生の頃から家庭教師や母親の仕事仲間など、自分よりも明らかに年上の男をたらしこみ暮らしやすい生活を営んでいたのだし(中学時代は同世代の男にはまるで興味がなかった)高校に上がるとそれらに他学校の生徒が加わった。

好きだとか嫌いだとか、そういった感情が希薄だと気づいたのはこの時期だ。同じように尻の軽い友達達に囲まれ、パパ活女子との会話を楽しんでいた際に、皆それなりの愛情があるのだと知った。愛というか情だ。金銭を授与する行為とは他に、好きな男がいたり貢ぐ相手がいたりと酷く不安定な心のバランスをとっていた。

はどうなの。そう聞かれどうかな、と笑う。本命ってどの人なの。その時は一番金回りのいいIT社長の名を上げたが、その実、本命などいない事も自覚していた。あえて選ぶとしたら自分自身だ。我が身可愛さにこんな真似をしている。だってみんな、自分が可愛くて仕方がないでしょう?



「…ヤバいんじゃないの、センセー」
「躾のなってない仔犬だな」
「ずっと見てたの知ってる」



大学に入っても生活は変わらなかった。むしろリスク回避の為これまで手を出してこなかった男達がこぞって集まって来た。大学の四年間だけを搾取する男達が存在する事も知っている。多少知恵のついた賢しい娘を食い物にする奴らだ。だったらこちらも、お前たちを食い荒らしてやるよ。

そんな最中、気づけばNRCにいた。男子校だ。驚きもしたし、マズいな、とも思った。自制出来る気がしない。まあ、その予感は当然あたった。

授業中にじっと視線を送る。クルーウェルはの視線に気づいていた。視線を送り続け半月くらいか。この、まんじりともしない駆け引きの時間が最高に興奮する。廊下ですれ違う時、授業中。食堂で。視線がかち合う瞬間、今か今かと待ち侘びる。早くこの餌に喰いつけ。

ある日、はクルーウェルに呼び出された。課題の件という建前だった。



「あまり声は出すな」
「んっ…ん、」



クルーウェルの指が舌を挟み口の中を蹂躙する。声を出すなという事だ。鍵を閉めているとはいえ、すぐそこに生徒がいるかも知れない。少なくともがここに呼び出された事を知っている。



「俺は反対したんだ、お前を、ここに置くなんて」
「はぁっ、あ」
「こうなる事は目に見えてた」



クルーウェルは背後から首筋に吸い付く。これだ。男が陥落するこの瞬間に堪らなく興奮する。ああだこうだと言い訳をしながらこの身を貪る。理性が本能に取って代わられる。人でなく獣になる。普段あれだけ澄ましている癖に―――――ぞくぞくする。

壁に手をついたままクルーウェルがの片足を持ち上げた。この体位で挿れてくるところも好きだ、見る目に間違いはなかったのだと感じ入る。壁とクルーウェルに挟まれたままグッと入り込まれため息交じりに喘いだ。この男、やはり最高だ―――――



「…お前、随分と感度がいいな」
「んっ、ん、あ」
「なぁ、
「ヤダ、何…」



クルーウェルが身体を密着させた。耳側で囁く。



「俺以外にも誰かいるのか?」
「何それ…」



とは言いつつも興奮が収まらない。今この瞬間の顔を見られずに助かった。死ぬほど笑っている。動きを止めたクルーウェルは暫く首筋を舐めたり軽く噛んだりしていたが、のらりくらりとはぐらかし続けるに業を煮やしたらしい。



「すぐ分かるんだがな」
「!」
「なぁ、!」
「あ」



もう一度片足をぐいと持ち上げ、反対側の手で執拗にクリトリスを弄る。これまで触れられていなかった部分への急な刺激に腰が砕けた。幾度も達し、もう嫌だと言えどもクルーウェルはその手を止めない。



「他の奴ともヤってるんだろ?どの駄犬だ?」
「あっ、あっ!!も、やめっ♡♡」
「淫乱な雌犬が…!」



散々嬲られたクリトリスから指が離れたかと思えば高速でピストンされ頭の中が痺れた。クルーウェルは両手での腰を掴み激しく腰を打ち付けている。これ、これだ。これを求めていた。この一瞬だけは身も心も満たされる。

クルーウェルがいくぞ、と囁き背後から抱き締めて来る。この世界の避妊法は様々だ。中で出した後に魔法で処理する事もあるし、クルーウェルのようにそもそもゴムの様に男性器を魔法で覆っておく事も出来るらしい。何て便利な世界。まるで私の為に誂えたかのようだ。

はあはあと肩で息をしながら床に崩れ落ちる。悪い先生ね、と呟けば彼は射精したばかりの性器を咥えろと言う。断る理由もない。髪をかき上げながら手を伸ばす。クルーウェルの目を見ながら舌を伸ばせば、彼の酷く興奮した眼差しが目に入り、やはりこの身は心底満足するのだ。