開けますか、捨てますか、破りますか



   背後から抱き締められ首筋を噛まれ思わず身を屈めた。背後に立つ喜助はの口に指を差し入れ舌を挟みぐりぐりと弄んでいる。ガリガリと甘噛みされる度に膝から力が抜け、どうしたんですか、と楽しそうに囁く男の声に翻弄されているのだ。柱に手を付き、崩れ落ちそうになる身をどうにか支える。やめて、と言いたいが言葉は喜助の指に奪われている。首をいやいやと左右に振るも残された喜助の腕は遠慮なしにこちらの身体を這いまわる。

浦原商店は建物で、入口入ってすぐに土間があり、その奥に居間がある。幼い頃この街に住んでいた。中学に上がる直前に両親が離婚し、は母親と共にこの街を離れそれからはまったくだ。父親が死んだという報を受けるまで一切近寄らなかった。

父親は所謂仕事人間というやつで、母親と離婚した後も再婚せず仕事一筋だったらしい。一切の連絡は寄越さなかったものの養育費の支払いは滞った事がなかった。彼なりのけじめだったのかも知れない。

父親の葬儀に行けと告げたのも母親だった。遺産相続の問題があったのだ。まったく顔を見せなかったを父方の親族は歓迎しなかった。



「っ…あ、ダメ、やめて…」
「彼氏サンに、悪いスか」
「…っ!」



バッと服をブラごとまくり上げ喜助の指が乳首をカリカリと弾いた。自身の唾液で濡れた指先はぬるぬると乳首を刺激する。ほら、こっちも。反対の指が口の中に突っ込まれ舌を弄ぶ。両指が乳首を弾き摘まみ、コリコリと刺激する。ビクビクと全身が反応し止める事が出来ない。喜助はこちらの反応を見て嬉しそうに緩急をつける。ガクガクと膝が笑い、いよいよ身体を支える事が出来なくなった。身体は完全に喜助に預けられている。



「何でそんなに感じてるんスか、ねえ、さん」
「あっ、あっ、だめ」
「本当にやめて欲しいんですか」



こんなに濡れて。喜助の指が下着の隙間から膣に入り込んだ。下着の意味を為さないほど濡れており、感じている事を知られないようにと膝を擦りつけたせいか、愛液は内腿を汚している。喜助は指を二本挿れ、最初は深いところまで動かし、途中から小刻みに早く動かし始めた。ぎゅうぎゅうと指を締め付けている事が自分でも分かる。



「だめ、だ、め」
「何が」
「あっ、あっ、そこっ」
「ばれやしませんよ」
「やめっ」
「アタシとあんただけの秘密でしょう」



もう少しでイキそうなところで指が抜かれ、もどかしそうに喜助を見上げた。ここまで身体を弄られ我慢が出来る道理もない。自身の体液に塗れた指を喜助が口元に突き付けた。何も言わず口を開き舌で舐めた。



「挿れていいですか、さん」
「…」
「このままじゃ入っちゃいますよ」
「んっ…」
「こんなにもの欲しそうにひくついて」
「あ、ああっ!!」



柱に背を向け、机に手を付かせる。喜助はの片足を持ち上げ一気に突き入れた。激しい一撃は子宮口に響き軽く達した。あらら。もういっちゃった。喜助が笑う。



「ぎゅうぎゅうと締め付けて、そんなに具合がいいですか」
「ぁあーっ!あっ、あっ!あ!」
「アタシも気持ちいいですよ、さん」



喜助は激しく腰を打ち付け、自分でもわけが分からないくらい幾度も達した。三度目から達する度に体内から熱い液体が溢れる。もうやめて、死んじゃう。途切れ途切れにそう言えども喜助は動きを止めず、まだまだ、まぁだ全然足りやしないんですよ。と耳側で囁き剥き出しになったクリトリスを指で挟んだ。イキ疲れたが悲鳴を上げ、再度強く絞め付ける。



「や、あ、やめてぇっ!死んじゃう、これ」
「いいんですよ、さん」
「はぁっ、は、あ!あぁっ!!」
「死んじまっても」



背後から突き上げる喜助が呼吸を奪うように口付けた。机の上でぐったりと身を投げたは喜助の好きに揺さぶられ、ゆっくりと意識を失っていった。









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はっと目覚めればもう既に日が昇っていた。裸のまま布団に寝かされていたらしい。おはよう。隣で喜助が肩ひじをつきこちらを覗き込んでいた。ああ。すぐに思い出す。私は昨日この男と。それと同時に弁護士との打ち合わせを思い出す。



「ヤバい!時間が!」
「あぁ、それなら大丈夫ですよ」
「は?」
「あんたが昨日会ったのは偽の弁護士だ」



今は近づかない方が良い、と喜助は言う。意味が分からないとスマホに手を伸ばせば喜助がその腕を取り又、口づけて来た。ちょっと、唇の隙間からそう言えば、これ、どうしてくれるんです。硬くなった性器を触らせそう囁く。



「昨日あれだけやったのに!?」
「アタシも若くて」
「いやちょっと」



そのまま散々貪り合い、次の朝だ。一日中セックスをしていたのかと思うと現実味がない。流石に疲労困憊したは眠り込んでしまい、彼女を撫でながら客人を迎える。

の父親とは古い仲だ。この街を守る古い式神を祭る人物で、喜助も懇意にしていた。彼らの宗派は昔から諍いが絶えず、彼は自分の代でそれら全てを清算しようと考えていた。その思惑がご破算したのだと知ったのは彼の死だ。その前日に彼から依頼を受けていた。娘を守ってくれ。



『その娘を寄越せ…』
「そいつは聞けないねェ」



三日三晩こうして来客を受ける。力尽くで処理してもいいのだが、こちらの世界にはこちらの世界の均衡がある。儀式に則り終わらせる方がいい。全てが終わるまでを足止めしなければならず、こうしてセックス三昧のまるで若者みたいな時間を過ごす。無報酬なんだ、このくらいのご褒美は頂かないと。無事に追い払い三日目を迎える。こいつは名残惜しいやと、一人呟いた。