言ってしまったら駄目になる気がするの



   室内で床に横たわったまま、は大きな喘ぎ声を上げながら全身を震わせている。ヴィルはそんなを長椅子に横たわりながら眺めていた。



「よくやったわね、。上出来だったわ。満足よ」



身を起こそうと腕で体を支えるもののすぐに崩れ落ちる。その様が余りにも哀れで無様で、心をくすぐるのだ。

が拘束されていたのはポムフィオーレ寮の塔部分に隠された部屋だ。数時間前に散々とこの身を嬲り身を晦ましたヴィルを見送り内側から開かないドアを幾度も叩いた。当然一切の反応は見られずズルズルと床にへたり込む。

中途半端な状態で切り上げられた身体は疼いたままだ。膣の奥の方が酷く疼き無意識に指が伸びた。ヴィルから散々と弄られたそこは酷く柔らかく蜜を湛える。ゆっくりと指を挿れ疼く個所を弄りたいのだが指先は届かない。それどころか疼きは刻一刻と酷くなる。幾度も自身で慰めたのにまったく満ち足りないのだ。

はっきりと己が身体がおかしいのだと分かる。こんなものは普通でない。私の身体はこんなに淫らではないはずなのに。

ヴィルが部屋を出て行く際、の髪に飾った櫛が原因だとは気づいていない。その櫛にはヴィル特性の催淫剤がたっぷりと塗られており、じわじわとの身体を蝕んでいる。

の指先がすっかりふやけてしまった頃合いに再度ヴィルは訪れた。ヴィルはの有様を目の当たりにしても何も言わず、身体をキレイにするわよ、と手を取った。

ヴィルに手を引かれドアの向こうへ出る。軟禁されていた部屋と比べ外の明かりが燦燦と入り明るい。思わず顔を背けた。ヴィルはそのままを連れバスルームに向かった。はそもそも裸だったが、ヴィルも服を脱いだ。裸のまま二人バスルームに入る。

隅々までキレイにしてあげるわ、と囁いたヴィルはの全身に泡を滑らせ指先を這わせる。指先はヌルヌルと敏感な部分を刺激しながら動く。反射的に声を押し殺した。



「どうしたの、そんなに感じて」
「ちがっ…んんぅっ」
「いやらしい娘ね」
「は、ぁあ、あ」



ヴィルの指は全身を這う。気づけばヴィルにもたれかかり感じる事しか出来ない。ヴィルの指はどんどんと性感を高めつつ、最後の一押しがない。目を閉じ快楽に流されているの顔をまんじりともせず眺める。

快感に慣れていない彼女の身体は抗う術を知らない。与える快楽を逃しもせず全て受け入れる。が無意識に腰を動かし始めた段階で指を離しシャワーで体を流した。ハッと覚醒したが物欲しそうな顔でこちらを見てくる。その素直な浅ましさに好感を抱いた。

バスルームを出た後は念入りなトリートメントだ。の髪を撫でながら、喉が渇いたでしょう、とリンゴを出す。赤と白の珍しい品種で、アタシも頂くわ、とヴィルが一欠けら口にした。続いても食べる。酸味も甘みもとても強く、それでいて果汁も滴らんばかりだ。美味しくて次々と食べた。

トリートメントを終えたヴィルはの髪をドライヤーで乾かし部屋を出て行った。ドアが閉まった瞬間、大きく息を吐き出す。髪を乾かされている最中から我慢ならない程、全身が異常に敏感になっている。ヴィルの指が髪を撫でるだけでビクビクと身体が震える程だ。

昨晩の寸止め、風呂場での焦らし、それ以上の何かだ。全身が耐え難いほど熱を帯び我慢が出来ない。下着はじっとりと濡れており自分でもはっきり分かる程膣口がひくついている。指先でそこをなぞり下着の上から刺激する。あぁ、と声が漏れた。



「1人で何をしているの」
「ぁ…」



部屋を出て行ったはずのヴィルがこちらを見ている。それなのに指を止める事が出来ない。



「ダメ、見ないで…」
「好きに慰めてご覧なさい、見ててあげるわ」
「ダメ、ダメ…」



うわ言の様にそう呟き首を振るも指を止める事が出来ない。椅子に両足を上げ、大きく広げたまま指先で下着の股間部分を弄る。硬く尖ったクリトリスは下着の上からもはっきりとわかるほど勃起しており、そこを指先でカリカリと刺激した。



「アンタ、処女だったらしいじゃない」
「ん、んんぅっ…」
「聞いたわ、可哀想にね。こんな事に巻き込まれて。」
「はぁっ、あっ、あ」
「だからせめてもの憐みをあげるわ」



堕落しなさい、快楽を貪りなさい。アタシがアンタにしてあげられる事はそれくらいしかないわ。

櫛に吹きかけた催淫剤の原液をたっぶりと塗布した。それがあのリンゴだ。理性が追い付かないように快楽を与える。

それがアタシからアンタに与える慰めよ、

だけれど分かっている。幾ら弄れどもはまったく満たされない。そんな彼女の様子を暫く眺めていたが終わる気配もない。近づき手首を掴んだ。そのままアンタにお客よ。そう告げる。

手を引かれベランダへ出るも足は縺れるし頭はまったく働かない。下着姿のままベランダに出ている事にさえ今更気づく始末だ。そんな姿で屋外に出るなんて有り得ないはずなのに分からない。辺りを見回すもこの部屋は高い場所にあり、他からは覗く事が出来ないようだ。石で出来たベランダの隙間から下を見下ろす。



「上手くやるのよ」



ヴィルが囁く。



「上手く出来たらご褒美をあげるわ」



ヴィルはの足元に座った。そのまま足を大きく開かせる。ベランダに両手をついた状態では足を開いた。ヴィルの舌が内腿を舐める。思わず声が出てしまいそうになり咄嗟に口元を覆った。そのまま見下ろす。

エース。エースがいた。

快楽に飲み込まれていた理性が最期の足掻きを見せ、失いかけていた我を取り戻す。表情の一変したを見たヴィルが即座にクリトリスを吸い上げた。の腰がガクガクと震え、涙目でヴィルを見る。エースは色々とこちらに向かい叫んでいるが頭に入ってこない。歯を食いしばりどうにか喘ぎ声を出さないように耐えるのが精一杯だ。

大丈夫だから。振り絞った言葉はそれ。大丈夫だから、ごめん。助けを求める事は出来なかった。

膝が笑い立つ事も出来なくなったを支えヴィルが立ち上がる。そのままを連れ室内に戻った。室内に戻った瞬間、膝から崩れ落たに対し、好きに触っていいわよ、とヴィルは笑った。

自身の指で散々慰めるをヴィルは長椅子に横たわり眺めている。指で幾ら慰めようと満ち足りない事には気づいている。だけれどこちらからは差し伸べない。お前がここまで這い蹲り、乞うのよ。

どうにか床を這い長椅子まで辿り着いたは潤んだ目で訴える。可愛い可愛い、可哀想な娘。



「どうしたいのか、きちんと自分の口で伝えなさい」
「いれて、いれてください」
「違うわ」



そうじゃない。
ヴィルの目は滾る様に燃え盛っている。



「わたしを、犯して。ください」



ゾクゾクとこみ上げる感触は嗜虐心か。
堕ちた、そう思った。

の唇に指を捻じ込み、彼女の肩を床に押し付けながら挿入する。は終始感じていたしこちらもそうだ。片足を肩に掛け深く侵入する。



「…何よ、アンタも仲間に入る?」
「いや、僕は遠慮しておくよ。この美しい光景を眺めさせておくれ」



いつの間にか部屋に入って来ていたルークは入り口付近で壁に背をつきこちらを眺めている。好きにしたらいい、と返したヴィルはの足を肩に掛けたまま深い場所に射精した。










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部屋に戻る途中でレオナに声をかけられ驚いた。エースをハーツラビュル寮まで送りようやくサバナクロー寮に戻ったところだった。



「どうだったんだ?」
「あ、いや…」
「ねちっこそうだもんな、あいつ」



そう笑い欠伸をひとつだ。そのまま立ち去ろうとするレオナをジャックは呼び止める。



「あんたはこういう事に加担するタイプじゃないと思ってました」
「そういうんじゃねーよ」
「そういう、って」
「お前が思ってるような事じゃねー。もっと根の深い、ややこしい問題なんだよ。が、ってよりあれだ。プライドの問題だな」
「だからってあいつを巻き込まなくても」
「だからだよ。だから、あいつはここにいるべき存在じゃなかった。仕方ねーだろ、存在しちまったんだから。今更、後戻りは出来ねーんだよ」
「…」



あの泣きそうなの顔や黙ったまま寮に戻ったエースの姿が頭から離れない。酷く億劫な気持ちだ。

それに、こんな思いをしたって明日は来る。いつものように、いつものメンバーと顔を合わせるのに、だけがいないままなのだ。