願いを三度唱えて涙を三度流す



   この関係が凡そよくない事だと気づいている。銀時との所謂セフレのような関係はダラダラと滞る事無く続いていた。

最初は酔いの回った銀時に半ば無理矢理だ。二次会、三次会と人が減っていく中、脱落組に見せかけ抜け出した。銀時に手を引かれ断らなかったのだからこちらも当然、同罪だ。

酒に侵された銀時はいつもの銀時とはまるで別人のように強引での言葉など耳に入らない。反射的に吐き出す制止の言葉を唇で塞ぎ、の腕を片手で封じ酒臭い息で全身を満たす。耳の縁を舐め甘噛みしばがら首筋から鎖骨、乳房まで痕をつけまるで貪る様に喰らい尽す。

こちらも酒に浮かされた身体だ。与えられる快感を素直に受け入れ喘ぐ唇を指先でなぞりそのまま口の中に差し込む。指で舌を弄びまるでその為の生き物みたいだ。数時間前まで言葉を交わしていた相手とは到底思えない。

感情のやり取りなどまるで無意味だ。快楽を貪り合うだけの獣の様だ。銀時との馴れ初めはそんなもので、翌朝の気まずさといったらなかった。あの、酷く白々しい銀時の横顔。そんな態度を取るくらいなら最初から手を出すなよと思った。

関係は一度こっきりで終わりかと思ったのだが、その翌々日に二度目は訪れた。又、酒の席だった。逢瀬に酒が絡まなくなったのはそれから二月後の事で、何となくセックスだけをする関係は口火を切った。

どちらも何も言わなかったが恋人に昇華する事はない関係だ。それだけは分かっていた。だからだ。



「ちょっ…もう止めてよ」
「えぇ?」
「ヤダって」
「最近、ご機嫌斜めだねえ」
「銀時」



別にこの関係に問題はないのだろう。銀時を責める気はないし、己を顧みるつもりもない。只、無為だ。何の意味もない。

それに最近、セックスだけでない関係の男も出来た。銀時との関係と並行して続けるほど他人を嘲るわけではない。それに、この男が引き留めるとも思えなかった。仮にそうだったとしても心は揺れるのだろうか。そんな言葉を、求めているのか。



「もう、こういうのやんないって言ったじゃん」
「こういうのってどういうの?」
「ちょ、ヤダ」



夜中に訪れた銀時を追い返そうとしたが敢え無く失敗した。片足をドアに挟み大声で騒ぐ銀時を渋々室内に招き入れすぐに背後から抱き締められる。既に銀時の性器は勃起しており、グイグイと押し付けられ辟易とする。その為に銀時はこの部屋を訪れる。いつだってそうだ。

キャミソールをたくし上げ肌を撫でまわす。背後から押しつぶされそうになりながら前屈みになるけれど銀時の指は乳房に到達し指先で乳首を摘まんだ。幾度も身体を重ねた結果、こちらの性感帯はすっかり筒抜けになっている。両乳首を指先でクリクリと転がしながら耳側で囁く。



「んっ…!やめっ」
「てかさぁ、もうやんないって何?」
「それっ、ずるいからぁっ!」
「俺以外の男と付き合うとか、そういう話?」
「やぁっ、あっ、あっ」
「てかさぁ、



銀時はいつもこうだ。別れ話の度にセックスで誤魔化す。この関係を清算しようと一歩引けば知り尽くした身体を好きに嬲り知った様に笑うのだ。だけれど知っている。銀時から別れ話が出た時。それがこの関係の終わりだとこちらは分かっている。



「嫌だったら逃げないとダメでしょ」
「やだぁぁ…」



散々嬲った乳首から右手が離れびしょびしょに濡れた下着に移動する。触ったらすぐ濡れるからねぇ、は。銀さんの指がそんなに好きですか。下着をずらし指を挿れる。ぐちゅぐちゅと、わざと大きな音を立てながら抜き差しする。こうなってしまうともう抵抗する気も失せ為すがままだ。

こちらを辱めるように大きく足を広げさせ何度も指でイかせる。Gスポットの場所も知られている。潮を吹くのは疲れるから何度も吹かせるのはやめてと言っているのに、こういう話の時はわざと何度も弄って来る。

散々潮を吹きぐったりとした後は舌先で執拗にクリトリスを舐め吸い上げる。こちらは息も絶え絶えだ。朦朧とした意識の中、銀時がこちらの足を持ち上げる姿が見えた。挿れるのだろうと思い目を閉じる。銀時の性器がぐっと膣口に押し付けられ正常位の体勢で近づく。



「こんなんで銀さんから離れられんの?」



唇の真上で銀時はそう囁くのだ。