防腐剤は食べられない



   マジで死ぬ死ぬ死ぬ死ぬっていうか半分くらい死んでるんじゃない!?いや死ぬ死ぬ死ぬ死ぬって!!!と【死ぬ】がゲシュタルト崩壊するんじゃないかと言わんばかりの様子で銀時が転がり込んで来たのが数秒前の出来事だ。

ここはかぶき町の裏通りのその又奥にある、知る人ぞ知るよくない路地裏。所謂裏風俗が軒を連ねる薄暗い界隈だ。本番行為はやってませんよという店側の主張と、口コミで広がるあの店マジで最高なんですけど、が一生平行線を走る店構え。店主はという見た感じキレイ目のお姉さんであり、それがこの店のウリでもある。

見た感じキレイ目のお姉さんであるところのとこの俺、銀時は実際そこそこ昔からの知り合いであり(という事は必然的にあいつはそんなに若くないお姉さんという事実に至るんですよねぇ)ていうか何でお前こんな裏風俗店とか経営してんの?それ…それどういうプレイ?俺そういうのめっちゃ興奮するんだけど、そういう事?

流石に神楽達には公に出来ない場所だ。こそこそと顔を出し(金がないからご利用は出来ないんだが)に会う。そういうちょっと秘密の遊びみたいなやり取りってドキドキするよね。これってもう既に付き合ってるんじゃないの俺達。少なくとも相思相愛だよね?

だから死ぬ時はお前の側でって事でその店に飛び込んで来た銀時は当然知る由もなかったのだが、丁度今この時、店は立ち入りを受けていたわけで、何をやっているんだという眼差しのと土方がそこにはいた。いや、マジでびっくりしたんですけど。コイツこんなとこで何してんの?



「土方さん、先週も来てなかった?」
「そうか?」
「そうか?じゃないよね来てたよね」
「この手の店は毎週手入れをしねぇとな」
「いやいや流石にそれはないよね、正気かな?」
「こんなヤクザな商売、さっさと手を切りな」



は??????何????何なのこの公僕は?????職権乱用とはまさにこの事ですか???このバカ毎週こんなバカ面下げてここに来てんの??手を切るも何もこいつここの店長じゃん??ヤクザな商売じゃなくてこいつがヤクザなんだよ、このという女が圧倒的にヤクザなの。俺はこいつのそんなところもまるっと受け止めて愛してるわけなんだけど、このバカは何を、



「おいおい…真選組の犬が何だぁ…?」
「…高杉テメェ!」
「ちょっ」
「営業妨害も甚だしいねぇ、そんなにこいつが気に入りかい」



えええええーーー!た、高杉テメェーーーー!!?!?つーかあの野郎、高杉がオーナーだったのかよ!!!あいつ資金源に関してはのらりくらり交わしてやがったけど、まさかそこだとは夢にも思わねぇだろうがあああああ!!!

もう完全に資金源じゃねぇかこの店!ロンダリングしちゃってるんじゃないのそれぇ!いやっ、そんなお前も俺は愛してるけどね!?!?!?っていうか今それどころじゃないんだけど、



、この野郎と今すぐ手を切れ」
「弱ェヤツほどよく吼えやがる」
「弱味でも握られてるってのか」
「コイツは俺の大事な手駒なんだよ」



土方と高杉は互いに刀を抜き一触即発といった雰囲気だ。そんな最中、はといえば面倒くせえなといった面持ちで欠伸をしている。そうそう、お前はそういう女。そんなお前が俺は大好き。だから、



「おおおーーーい!銀時に客人だぞ!!!!」
「はっ?桂?」
「ダーーーーーリンサガシタヨ!!!」
「!!!!!!!」



まさにそいつから逃げ回ってたってのに、バカ桂(あいつは産まれてから死ぬまでずっとバカ。マジで凄い。永久にバカなんだよどういう事?)がご丁寧に店内にまでご案内しやがった。

銀時はとっさにの背後に隠れ(切れてないんだけど)こそこそと様子を伺っていた。ていうかなんで桂、あいつが我先に俺を捜してんだよ死刑執行人かあいつは。



「あんた、何してんの」
「お前に会いに来たんだけどさぁ、銀さんは」
「いやいや、あれ何よ」
「いやー」
「アイシテルヨギンサン!!!!」
「愛してるって言ってるけど!?」
「俺はお前を愛してるからさああああ!!!」



桂がご案内して来たのは『ワンナイトの相手を死ぬまで求めるという習性の天人』であり、その姿かたちはまるでタコの如し。あんたあれとヤったの…?という目で銀さんを見るんじゃありません!!!卑怯にもあいつらはそれなりに化けるんですぅー!それこそ昨晩は絶世の美女だったんですぅー!



「おい、テメエ」
「あれ?元気?すげえ久しぶりじゃね?」
から離れろ」
「いや、俺ら一蓮托生だから」
「あの化け物引き取ってさっさと帰ってよ銀時」
「お前あれとヤるとか飢え過ぎじゃねェのか」
「殺すぞ。後、に付き纏うの止めて貰えませんかストーカーですかこの野郎。あの上司にしてお前ですか」



を軸に睨み合う三人の男はタコ型の天人を文字通りタコ殴りにしながら通りへ転がって行く。店の女達はこの程度の騒動では怖がる事もないだろう。ここはかぶき町、何でもありの町だ。