掠め取られたその唇
を手元に置いておく理由はたった一つだ。あの娘の生き血を頂くつもりで、最良の状態になるように調整していた。
最初に嗅いだ香りで確信していた。確かには処女だったはずだ。だから他の虫がつかないよう囲い込み、体内から美味しさを増すよう食べるものから管理する事にした。
ヴィルの管理下に置いてからというもの、お肌の調子が上がった、だとか痩せた、だとか(まあ当然だ。効果的なストレッチやサプリメントを摂取しているのだから)は喜んでいるようだったし、悪い話ではなかったはずだ。
こちらの思惑通り、は見る見るうちに垢抜けその美しさに一層の磨きをかけた。効果が見えれば信頼は増す。はすっかりこちらに懐いていると思っていた。熟し切ったところを美味しく頂く。その手筈は完璧に揃っていたはずだ。それなのに彼女は―――――
は他の男を好きになった。誰か、他の男を。自分以外の誰かを。初めてから他の男の匂いを感じとった、あの瞬間の事は忘れられない。未だに夢に見る。あの、僅かに香る見知らぬ男の匂い―――――
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はっと目覚めると見知らぬ部屋にいた。灯りは蝋燭の心許ないものしかなく酷く寒い。石で造られた台座に寝かせられたまま、四肢は鎖に繋がれているようだ。時折響く水音がより一層おどろおどろしさを増した。四肢を繋いだ鎖は酷く重く動かす事が出来ない。
「…目が覚めたのかしら」
「ヴィル!?」
その目で私を見るな。その唇で名を呼ぶな。
「これ、どういう」
「アタシがアンタをどれだけ大事に思っているのか、アンタには伝わらないのね」
「なに」
「残念よ」
アンタの身体からは他の男の匂いがする。
「やめて」
「…こんなにキレイなのに」
「やめて」
「汚されて」
許せない。ヴィルはそう呟き、が拘束されている台座に上がり込んだ開いた足の間に膝を突き、そのまま彼女の右足を持ち上げる。思い鎖がじゃらじゃらと音を立てた。そのまま濡れていない性器に無理矢理押し込めば、が悲鳴を上げる。
「平気でしょう、別に。初めてでもないんだし」
「やめて!痛い!痛いの!」
まるで濡れていない膣は侵入を拒むよう押し入れる性器を押し返す。数秒かけじっくりと挿入した。肉が裂ける痛み位には泣いていた。
「血が出てるわ」
膣から滲む血を指でなぞり舐めれば、どうしようもなく漲る。今にもの首筋にかぶりつきたいが耐えた。愛している。愛している。
「このまま、2人で死にましょうか」
「嫌…」
「2人繋がったまま息絶えて、発見される」
あんたの思い人はどう思うのかしらね。耳そばで囁く。
こうして二人繋がったまま飢えて死ぬの。アタシとアンタ、どっちが先に死ぬのかしら。第一発見者はきっとルークね。ここの場所を知ってるのはルークくらいのものよ。発見した彼はアタシ達をどう思うかしら。美しいと思うわ。きっとね。そのまま剥製にしてくれてもいいわ。アタシとアンタの剥製。まるで番の獣みたいね。
気の狂いそうな言葉を一方的に投げつけながらヴィルは小一時間動かない。顔を背け涙を流すの反応を伺うように耳側で囁き時折口付けた。肉を裂いた性器は苦しいほどに締め付けられていたが、徐々に体液が流れスムーズに動くようになってきた。膣内は変化する。痛いだけのはずが、体内に確かにいる性器の存在が酷く大きく少しでも力を入れると疼くような感覚に襲われた。
「…どうしたのよ。そんなに。ぎゅうぎゅうと締め付けて」
「違っ」
「なぁに?動いて欲しいの?」
首を振るを眺めながら、ヴィルが一度、大きく腰を動かした。膣内がぎゅっと締まりが喘ぐ。そのまま膣内に力がこもり全身を震わせた。
「アンタ、イっちゃったのね」
「……!!!」
「さっきまで痛い痛いって泣いてた癖に」
この淫乱。
そう囁き激しく責め立てる。の身体を眺めながら悠々と腰を動かすヴィルは自身の指をの口内に差し込む。指先で舌を挟み指先で口内さえ犯す。自分でも信じられないくらい敏感になっており幾度も達した。自分の身体ではないようだ。こんな身体は私のものではない。私を犯すヴィル等見たくない―――――
「こんな事しといて、元の関係に戻ろうなんて思ってないわ」
「やめて…やめてヴィル」
「アンタはアタシのもの」
「いや」
ヴィルがの首筋を舐めた。これまで気にした事もなかったけれど、鋭利な犬歯が薄い唇から覗く。四肢は変わらず動かない。ヴィルの手がの口を塞いだ。
「さようなら、」
「…!」
「目覚めたらアンタはアタシのものよ」
どうにかもがこうと首を振るの唇が誰か他の男の名を呼んだが、押さえた手の中で握り潰す。性器をの体内に留めたまま白いその首筋に刃を立てる。射精の幾倍も気持ちがいいだろう。