愛と呼ぶには軽すぎて恋にしては重すぎる



   親父に呼ばれてジェイドと出かけたんだけどさ。本当、最悪で。そもそも親父から呼び出される事自体がまあ最悪なんだけど、断ったら断ったで滅茶苦茶面倒な事になるのは目に見えてるから結局行かざるを得なくなるわけ。もう全然行きたくなかったんだけど行った。

場所は親父が昔から使ってる陸の隠れ家の中の一つ。隠れ家は海の中にも陸の上にも山ほどある。親父が仕事で使う事もあれば、用途不明で使っている場合もあるし、余計な詮索はしないに限る。これまでもそういう事は幾度となくあって、その時その時の気に入った愛人を紹介されたりとマジで下らない真似を親父はしてきた。愛人とか息子に紹介してくるなっての。

今回もその類の話なんだろうな、と道中ジェイドと話していて、親父の女の好みについて言及していればだ。ジェイドにそっくりの女が出てきたもんでマジで萎えた。ジェイドっていうか母ちゃんにそっくりなんだよ。母ちゃんが若返った感じ。そんなのもうマジで最悪じゃん。マジで最悪だよ!

は?隠し子?って思ったんだけど、親父が言うには生き残りらしい。何か色々あって掻っ攫われてたんだってさ。名前はって言うんだと。いや、知らねー!って思ったけど何かやたら親父が饒舌だしジェイドも喰い気味に話しかけてるからオレだけ帰るわけにもいかねーじゃん?

いや、ジェイドとかどういう気持ちで話しかけてんだよってオレは思ったけどね。同じ顔してんじゃん。結局、そこで夕飯を食べてさ。今日は泊まってけとか言われて。はー?今までそんな事言ったためしなかったじゃんって思ったけど酒も入ってるし親父上機嫌だし何も言えなかったんだよね。

後、何回も言うけどジェイドが喰い気味過ぎるんだって。は終始愛想笑いっていうか、多分嫌がってたんだよ。だって嫌じゃん、これがお前の弟二人だよって急に紹介されてもビビるでしょ。しかもその片割れは自分と同じ顔してるんだぜ。嫌だろそんなの。

オレらの姉って事で(そもそも姉なの?妹なの?どっちでもいーんじゃねーの?)得する事もないだろーし、マジでどんな気持ちでそこにいるんだよって思ってたんだけどさ。オレらと同じ歳なのに学校に通ってるわけでもなさそうだしさ。魔力はありそうな感じに見えるんだけど隠し子(ってわけでもねーんだろうけど)だから隠してんのかな?とかさ、オレなりに色々気を回したつもりだったんだけどさ。

オレ以外と几帳面っていうか、実は意外と知らない場所で眠れなかったりするんだけどさ、そん時もえぇーこの枕マジで無理なんだけどーとか思いながら天井見てたんだけど、聞こえてくるわけ。押し殺した女の声。あの、押し殺した、ヤってる時特有の温度感。壁一つ隔てた隣の部屋から聞こえてくんの!!!

もうさ!!!最悪とかってレベルじゃないでしょそんなの!!!は、はぁ!?!?つい数時間前に姉ちゃんだって紹介された女と親父が隣の部屋でやってるとかマジで無理なんだけど!気持ち悪りー!親父だってもう嘘じゃん、わざとじゃんそんなの。オレらをプレイに巻き込んでんじゃんそんなの!

オレもうそこで寝れなくなっちゃってさ。何かジェイドは寝てたみたいだから置いて出て行ったんだよね。明け方までファミレスで時間潰してさ。6時くらいにこっそり戻ったの。親父もいい歳なんだから流石にそんな夜通しやっちゃいねーだろってのがオレの予想だったんだけどさ。だけど。まさかなんだよ。

まさかのジェイドが知らねー女を連れ込んで首絞めながらのセックスの真っ最中。え?そんな事ある?は?そんな性癖あんの?いや、じゃなくて



「ちょっ、ジェイド~?」
「おやっ、フロイド…ちょっと待ってくださいね」
「それ、絞めすぎじゃね?死んじゃうってその女」
「おや!私とした事が…」
「ていうか、何で?」



ジェイドに首を絞められ半死半生の状態になっていた女は、射精された後にふと意識を取り戻し裸のまま服を抱え逃げる様に出て行った。そりゃそうだ。あの女どうしたのって聞けば、親父とのセックスですげえ興奮したんだと。もうマジでねぇ~~~~!

オレが萎えて出て行った後にジェイドも街に出て、立ちんぼの女を引っ掛けてきたらしい。ねえ、どういう事?それハナから殺すつもりだったんじゃね?



「親父もジェイドもどうかしてるって~~」
「フロイド、貴方はどうもないんですね」
「ないよ!だって母ちゃんでジェイドじゃん」
「…そうですか?」
「そうだって!」



どうやらこの屋内でオレと同じ気持ちだったのはだけらしく、リビングで顔を合わせるや否やマジで気持ち悪いってジェイドに言っててウケた。壁一つ隔てた状態で、知らねー女連れ込んでさ。絶対相当ヤベ―事言いながらヤってたんだろーなって思った。

だってジェイドはその女じゃなくてとヤりたかったわけだし、そのは親父とヤってたけだろー。もうその状況が最悪すぎてオレは記憶を封印する事に決めたんだけど、とりあえず何食わぬ顔して四人で食卓を囲んだよ。マジで母ちゃんには絶対言えねぇわ。