好きになるのに理由っていると思いますか






だから先刻からはずっとタオルをたたんでいたわけで、
そんな中たまたま部室に戻ったキッドに
他愛もない話をしていただけだ。
夕焼けが染み入るこんな時間帯は余りよくないと思いながら
から渡されたタオルで汗をふいている。

オレンジに染まった彼女の背中が普段以上に切なく見えるからだ。
そうして会話の途中、何の前触れもなく発された彼女からの質問。
勘繰る必要はない。恐らく。

「理由、ねェ・・・」
「ねーそんなの分かんないですよねー」
「そういうのは後から分かるモンなんじゃないのかねェ」
「そうですよね」

ふう、と訳アリ風に溜息なんて吐き出した
未だこちらに、キッドに背を向けたままタオルを畳んでいる。
オレンジが赤味を増しキッドの全身を染めた。
じきに黒く、蒼く染まる。

「何か、あったの?」

いけない。
そんな四文字が瞬間脳裏を過ぎった。
首を突っ込んではいけない。訊いてどうする。
興味に背中を押されてどうする。

「あの―」

彼女の唇が言葉を模る瞬間。
何を耳にしようとも後悔なんてしてはならない。

キッド達の部室は何だかこう、夕焼けのイメージ