世界に向かって叫びたいことはありますか

「ちょっとー!!」
「無駄口叩くんじゃねェ、糞オンナ」
「尋常じゃないってくらい重いんだけど!!」

蛭魔はスタスタと自分勝手に先へ進む。
何事においてもそんな感じだ。
部活が終わるまで待ち(待つ、というスタンスではない。
何故なら蛭魔により無理矢理雑用係に任命されかけている現状だからだ)
山ほどの荷物―大半が蛭魔の私物になるのだがそれを持たされている。

「あんたんトコのマネージャーに持たせなさいよ」
「テメエ最近太ったろ、プラ2は確実だ」
「・・・(何でコイツそんな事知ってんのよ)」

各校の情報収集の為にを使っている。
自身が少しだけ有名な為だ。

幼い頃、物心つく前からは仕事をしていた。
親バカな両親は生まれたての
速攻でモデル事務所に登録したのだ。
母親も結婚するまでモデルをしていたらしく
(しかしそれは雑誌モデル止まりだ)父親はモデル事務所の社長―
そんな二人の馴れ初めは言われなくてもすぐに分かる。

結局望まずとも将来の道とやらが決まっていた
皆の期待通りすくすくと成長した。
正座は一切せずバレエの教室なんかに通いながらだ。
現在同年代辺りのファッション雑誌の専属モデルとなった
の利用価値はそこそこにあったわけだ。

「あんたねェ、マネージャーに見つかったら殺されるよ?マジで」
「だから無駄口叩くなつってんだろーが」
「この前とか本当恐かったんだからね!あの、神龍寺!!」
「ケケケ」

蛭魔の家についた辺りにはすっかり足もむくんでおり
明日の撮影の事を考える。
じっとドアの前で蛭魔を見つめれば
ニヤリと笑われた後に軽いキスをされた。毎回だ。
しかもそれが非常に嬉しいものだから手に負えない。

「今度遊ぼうって」
「んな暇ねーだろ」
「あたしがもっともっと有名になる前に唾付けとかないと」
「フン」

そりゃオメーも同じだろ。
そう言いきる蛭魔の存在を声高々に叫んでしまいたい。

何て言うか前途有望な主人公って初じゃないのか。
何か、でかい女と一緒に歩いて欲しかったのさ。
蛭魔にはさ。