思い、なんてものは詰まらないものだ。
特に自身の思いなんてものは。
そう思う槌矢はきっと随分ストイックな人間なのだろう。
興味、そうして目的が完全に決まりきっているのだから仕方がない。
どこまでも行く。どこまでもどこまでも、果てはない。
それでも何れ終わりは来る。リタイアだ。
そんな事は分かっている。
「何してるの?」
「・・・さん」
「濡れてるじゃない」
土砂降りのフィールドをぼんやりと眺めていた。
忘れ去られたサッカーボールが一つ。オフの最中。
「あんたこそ何してるんスか」
「あたしは仕事よ」
「へぇ、何の?」
気のない素振りをしたのはわざとではない。
口にした瞬間しまったと思った。
それでもの顔色はまったく変わっていなかったから
気にする必要もないのだろう。よく分からない。
「お守りっスか」
「え?」
「はは・・・」
悔しかったのだろうか。悔しさは歪みを表出させる。
それだけの力はある。
「伊武とは何の関係もないわよ」
の言葉に意味があったとは思わない。
分からない。考えたくはない。何も考えない。
偶然はない。必然はあるのだろうか。
その境界線は、判別法は何だ。分かるわけがない。
伊武の側にいた彼女の事を思った事実に理由なんてないだろう。
一目惚れなんてものを出来る程素直な人間ではない。
会話の積み重ねが心に染み込んだ。
「俺はあんたの事、好きですけどねぇ」
あんたは。何の前触れもなく吐き出された槌矢の言葉に
は驚き一つ見せなかった。
只じっとの目を見ていた槌矢は槌矢で
沈黙に耐え切れなくなったのだろうか。
視線を逸らし乾いた笑いを漏らすと立ち上がる。
「あの、」
「寒いっスね、やっぱ」
「槌矢」
答えを待たず歩き出した槌矢の背を見送る。
結果はどうなんだというね。
雰囲気好きの結果。
結局伊武は関係あったのか