横顔を見つめそんな行為に気づかれないようすぐ背けた。

もしかしたら彼女はとっくに気づいているのかも知れない。
そうしてあえて気づいていない振りをしているのかも知れない。
どの道予測だ。本当のところは誰にも分からない。


帰り道がてら見つけてしまい独特のエンジン音に彼女も気づく。
彼女に気づかれたいが為ふかしてしまったかも知れない。分からない。
いい顔をしたいのだろうか。そんな気はないのだ。
それなのに を乗せ走り出している。あいつの元に届ける為に。
一度や二度ではない。幾度も乗せている。皆知っている。皆承知の上だ。
誰も勘繰らないしきっと誰にも下心はないのだから。
まだあいつはバイトの時間帯で家には帰っていない。
バイト先で帰りを待つというのも有りだ。それでもまだ時間はある。


「どっか寄ってく?」
「どこに?」
「時間、潰すんだろ」


前だけを見て風だけを感じる予定のはずなのに
身体に巻きついた の腕を、心音を感じている。全身でだ。
親愛なるユダへ。そんな言葉が頭の中を駆け巡り心の中が深く冷えた。
この心音が にどうか届きませんように。
そんな事を思っていれば危うく赤信号を見過ごしそうで将五は溜息を吐き出した。

誰が彼氏なんだという。
決めてないという事実。