ひざまずいて足をお食べ。
そんな事を笑いながら言われたように思う。
何をどうしたらいいものかと困惑仕切ったを見て又笑う。
どうにも白蘭は暇を持て余しているのだろう。
足元には細切れの肉片がこれでもと散らばっているのに。
白を好むこの男の衣服は小さな赤い丸が散りばめられている。
クリーニングに出しても無駄だろう。
「ねーぇ、。ごめんねぇ」
「もうじき迎えは来ますから」
「うっかり鍵さぁ、落としちゃって」
本当でも嘘でもまあ構いはしない。
下水溝の無い場所で下水溝に落としたと言われれば反論する気もなくなる。
こんなにも薄暗い地下室で白蘭と二人きり。ぞっとしない。
挙句の果てに散らばる肉片。恐ろしさも消し飛ぶだろう。
「何かイケナイ事とかする?」
「しませんよ」
「やっちゃおうよ、」
「嫌ですよ」
「ケチ」
言葉と表情、それよりも狭い室内を埋め尽くそうとする影だ。白蘭の影に怯えている。
気づかれないように位置を変えながら様子だけを必死に伺っていた。
白蘭の長い腕がこちらへ向かえば容易く捕らえられるのだろうし、実際問題逃げ場は無い。
それでも彼が力ずくで事に及ばないだけ救われている。
「どうする?もし、誰も来なくて、ずっとここに閉じ込められたら」
「あり得ないでしょう」
「だーから、もし!もしもの話をしよう」
「・・・暇なんですか?」
「だって、と二人きりって珍しいからさ」
愛や恋、愛しい、欲しい。
そんな感情よりも先に恐ろしさが出てしまうのだから仕方が無い。
愛せない類なのだ。心の中では愛していたとしてもそれを恐怖が隠す。完璧に。
白蘭は満足しないだろう。
「向かい合って、じっくり話すんだよ。こうやって」
「近いんですけど」
「薄暗いから顔が見えない」
「・・・ちょっと」
「顔が、」
逃げる事は出来ない。背は壁にあたる。
顔が見えないと呟きながら身を乗り出した白蘭の目は閉じられないまま唇だけが触れる。
離れた直後の肩に顎を乗せ、何が可笑しいのか一人笑っていた。
何が可笑しいって、
そりゃ私だろう。私の頭だろうよ・・・