眠れぬの自問自答

特に要求されたわけでもないが
こんな夜道を一人で帰らせるわけにも行かず
(兎に角この辺りは物騒だ、女の一人歩きには)
送っていくと告げた拓海をは見上げた。
他意はない、下心なんてもっての他だなんて
言い訳をせずともどうやら疑われていないらしい。
日ごろの行いはこんな時に役に立つ。こんな時に足首を掴む。
そう距離はないのアパートへ向かい歩き出せばが躓いた。
少しだけ笑った。


話をしていたファミレスに単車は置いたままを送るのだ。
仕事終わりのから連絡を受けファミレスへ向かったのが丁度二時間前。
からの連絡があったのは大体一週間ぶりくらいで、
特に用はなくともまあ他愛もない話をする。
互いに仕事の話をし、
の嫌いなパセリを無理矢理皿に乗せられたりしながら。


「最近さあ、何かあった?」
「え?どういう事?」
「なーんか雰囲気変わったよねー」
「・・・マジで?」
「何がかは分かんないけど」


武装に入った話はあえてしていない。
とはまったく関係のない話だし、言う必要性を感じないからだ。
これから先もが武装と係わりあう事はないだろうし
(大体あってはならないだろう)
話をしたところで理解も及ばないだろう。
説明が面倒だという箇所もある。


「っていうか最近何か微妙に物騒じゃない?」
「何が?」
「昼間とかさ、集団がいるよね」
「ま、近づくなよ。噛み付かれるぞ」
「あれであたしより年下って、ねぇ?」


まるで違う世界に住んでいるからこそそのままにしておきたいのだ。
そうしては自分と正反対の世界に住むヤツと暮らす。
危機がまるでない世界で平々凡々に暮らす。
きっと、いや。俺はそう願う。


の事が好きだという気持ちは知っているのだ。
それでも今の自分では叶わないと分かっている。
守りきる事が出来ないかも知れない。
幾つかの、何かしらの危機から。そんなものは許せない。
彼女を危機に晒す位なら安全な場所で幸せになってもらいたいのだ。
酷く我侭な思いだと知っている。


「あんたもねぇ」


その先に続く言葉を、の言葉の続きを知っている。
これまで幾度も耳にしてきた言葉だからだ。
そうして最も嫌な、聞きたくない言葉。


丁度タイミングよくの住むアパートが見えて来た辺り、
無理矢理に話を変えた拓海は押し切れない気持ちを吐き出した。

まあ、最新刊を読んだ上での拓海