しいふりをしてるだけ






「お前は本当に馬鹿だね」


突如降ってきた言葉の主は白蘭であり、
言葉のすぐ後に大きな手が髪を撫でた。
その仕草は余りにも柔らかく優しかったのだけれどもは息を飲む。
ビリビリと肌が痛んだ、恐らく殺気でだ。
そもそも白蘭がいつこの部屋に入って来たのかも分からず
彼の目的も分かっていない。
床を見つめたのすぐ隣に白蘭はいるのだ。
まるで呼吸さえ分かり合える距離に。


「・・・何?」
「お邪魔しちゃった」
「何の用なの、白蘭」


我ながら余りにも剣のある物言いだと思った。
恐らく白蘭もそう思っただろう。
それでも彼は臆する事なく僅かに笑った。


「だって、。きっと傷ついてるだろうなあと思って」
「何?」
「殺しちゃったんでしょう?」


白蘭の言葉を全て聞く前に耳鳴りが始まっていた。
吐き気もだ。
そう。殺した。
指示があったからだ。断る事が出来たはずもない。


「まるでドラマみたい。ねぇ。可哀想に。可哀想に
「止めてよ」
「感情を優先したってよかったのに」
「うるさい」
「どうして殺したの。愛した人」


この男―白蘭に殺されるくらいならば己の手で殺したかっただけだ。
気持ちを奪われている事実を知られ、
それからは生きた心地がしなかった。
逃げる事も考えたが無理だと知っていた。


あの男はに愛された事も知らず、
只苦しみ悲しみ死んでいったのだ。
憎んでもいただろう。


生まれて初めて命を奪い吐き気を覚えた
白い顔をしたまま死体の側に倒れこむ。
そこで死んでしまいたかった。
結局いつまでたっても戻らない
(心配したのだろうか?)γが迎えに来て発見した。


「可哀想に、可哀想に
「あんたの思惑通りでよかったわね、白蘭」
「・・・」


ばれてたの。
そう呟いた白蘭はすっと立ち上がり嫌いにならないでねと笑う。
もう答える余力さえないは口を閉じたまま、
まだ床を見ていた。

スゲエ久々の更新です