何をしても退屈なのだ。

だからといって何もしなければ余計に詰まらない。
何か面白い遊びはないものかと辺りを見回せば携帯が目に付いた。
つい最近購入した一番新しいモデル。
メールを打ってようやく使いづらいと知った。
いざ手にしても分からなかった、その辺りが実に自分らしいと思えた。


部屋の中でたった一人寝転んだまま天井を見上げている。
こんな状態が一番嫌だ。やってられない。
将五がメールでもしてくれればいいのだ。
しかしあの男は余りメールを送ってこない。
というか彼は携帯自体を余り使わないのだから仕方がないのだろう。
着信にも気づかないくらいだ。


手を伸ばし液晶を凝視、誰からもかかって来ない―
なのでこちらから連絡を取った。
ねえ、暇なんだけど。相手してよ。
きっと返事は返って来ないだろう。


一人でいる事に慣れていないのだ。
これまでダラダラと生きてきて、それなのに慣れないでいる。
こんな自分が情けなくて情けなくて、それでも捨てきれない。可愛い。


〜おるね?」
「・・・いなーい」
「ちょ、入れんね。この暑さで死ぬごたる」
「なーんで、あんたを部屋に入れなきゃなんないのよ」
「お前の大好きな九里虎ちゃんがこのままじゃあ死ぬばい」
「・・・あんたが」


暑さくらいで死ぬわけないでしょう。
呆れたようにそう呟きながらドアを開ける。
全身から熱気を放出している男、九里虎は汗だくのまま入り込んで来た。
フローリングに九里虎の足跡が付く。


「おおーこりゃ、エアコンは最高ばい」
「ちょっと、あんたが来てからやたら暑いんだけど」
「何か飲むもんなかね、冷えーたヤツ」
「あんた・・・遠慮も知らないのね・・・」
「そげんもん、犬にくれてやったくさ」


ベッドに大の字になった九里虎は笑いながらそう言い、携帯を弄りだした。
そもそも何故九里虎がこの部屋にまるで我が物顔で入り込んでいるのだろう。


「あんた、何であたしの部屋にいるのよ」
「暑かけんたい」
「パチンコ屋にでも行きなさいよ」
「・・・行って来たったい」
「・・・負けたのね」


どうやら図星だったらしく九里虎はうつ伏せた。








結局九里虎は数時間ゴロゴロとだらしなく時間を消費し、
唐突に鳴り響いた携帯と共に消え去った。
案の定将五からのメールは届いていない。
煙草の吸殻が増えるだけだ。他には何もない。


九里虎が来て僅かばかり淋しさは紛れたものの、
どうしても紛れない部分に根付いた淋しさは已然そのままだ。
一人になりたくない癖に、決まった一人以外とは一緒になりたくないだけ。
紛れないからだ。我侭。


「あぁ、もう・・・」


何よこれ。何なのよ。
一人そう呟けば尚更空しくなりは携帯を手に取る。
鳴らすのは将五の携帯、それだけだ。




悲劇ごっこのヒロインにナイフと毒をくれてやれ!

UPし忘れていた・・・?
クソ暑い最中に書いたと思われます