弔いの幻想

あんたには可愛げがないのよ。だから嫌い。
はっきりとそう告げたの手を掴む。
気の強さは良好、この程度は完全に許容範囲内。
女は男より弱い。それは肉体的に。
そのくらい、お前も分かってるだろう。
眼差しの交差がそれを知らせる役目を果たす。


「ちょっと、勘弁してよマルコ」
「どうせ暇だろ」
「悪いけど、あたし今から」


は基本的に悪趣味な女だから男の趣味さえ限りなく悪い。
そういう女の匂いは悪趣味な男ならば敏感に分かるもので
だからマルコも手を離せずにいるのだろう。
女の種類としてもは悪趣味な部類に入る。
だからやはり。
なぁ、俺とお前はこうなる運命なんじゃあないかな。


「何?どれ?あのドレッドの彼?」
「あんたに関係ないでしょ」
「関係ないけど興味はあるね」
「教えると思うの、あたしが。あんたに」


僅かに力を込める。
細いの手首なんてすぐに折れるだろう。
まだは引かない。この女はいつまでも引かないだろう。
可愛げがないと言われた事に対しては事実だと思う。
可愛げがないから怖ろしいのだ。


「俺に転んだ方が、色々と便利だよ
「打算で動くって、そういうのが大嫌いなのよ」
「それはさ、要は俺の事が大嫌いだって、そういう事?」
「・・・ねぇ?」


試されかける自分に酷く陶酔する。知れていると思う。
はこちらを見ている。ずっと見ている。


「どの道俺は逃がさないけど」
「あんたの彼女がさぁ、外で泣いてるわよ」
「どの?」
「この前死にかけた彼女じゃない子よ」
「そういうのは、個人の自由だからね」
「何?勝手に好きになって勝手に死にかけたって事?」
「そうだろ」


試すようにそう呟き唇を舐めるマルコはの腕を離さない。
外で泣いているような、あんな保守的で母性的な女に興味はないのだ。
自分の母親のように只泣き待つだけの女。
詰まらない、面白みの欠片もない。


「俺が悪人にはなりたくないからね、
互いに話し合ってやっていこうと思うんだよ。
「話し合う事なんてないし、話し合ったところで平行線でしょう。
あんたとあたしじゃあ」
「俺は我慢しない主義なんだ」


そんなものしたって何の得にもなりゃしない。
駆け引きを続けたい気持ちと早く手に入れたい気持ち。
相反する気持ちが交差する、これが堪らない。
の携帯がけたたましく鳴り響いたのをきっかけに互いに素を消す。
気持ちの悪い日常を演じる為に背を向けた。




初マルコ。
イメージ的に最悪なキャラじゃないのか。
(しかしそういう奴が好きです/どうしようもない)