生け花

延々と小言を聞かされ続けそれこそ腹の中は煮えくり返っているわけだ。
表出さないのは面倒事を避けたいが為。
わざわざ自ら火種をつけるまでもない。
だから は先程から生け花を活けている。
昨晩酒に酔った近藤から頼まれたものだ。床の間に飾る。


しかしどうしてこの男は延々小言を言い続けているのだろう。
それこそ、小言の内容は果たして何なのだろうか。
聞いていないのだから内容がまったく分からないでいる。
相槌さえ打たないのだ。
それでも言い続けている土方は怒っているのだろうか。毎度だ。


「―で、聞いてんのか?」
「何?」
「まぁた聞いてねぇのか、お前」
「分かってるんじゃない。話の長い男ね」
「・・・馬鹿女」


パチリパチリと茎の切れる音が響き渡る。
この男が首を斬る音と同じだ。


「結局、何が言いたいわけ」
「何やってんだ」
「何って・・・活けてんのよ」
「んな事ぁ見てりゃ分かるんだよ」
俺が言いたいのは。だっただろうか。
その刹那襖が音をたて倒れ込み近藤や沖田が流れ込んできた。
驚き目を大きく開いたままの を横目に
不機嫌に輪をかけた土方がジロリと一瞥をくれてやる。


「・・・ さん」
「な、何?」
「妬いてるんですぜ、土方さんは」
「は?」
「近藤さんなんかに対して」


最後の花が手の中で軽く萎びた感触だ。
思わず土方を見れば今にも斬りかかりそうな剣幕で沖田を睨み付けていた。

久々の土方。
黙ってやきもちを妬く男。