迷惑だとは思いつつも、やたらと発信だけが積み重なる。

恐らく彼女の携帯には不在着信が積み重なっているのだろう、自分の仕業だ。
それというのも とまったく連絡が取れないからであり、
まあそれは今日に限らず毎度だ。
連絡は必ず から。黒澤からの連絡はそう伝わらない。
何故だろうとその理由を考えた事もなく、
考えた事のなかった自身がどうにかしていたのだと気づく。

それにしても今夜ばかりは無性に会いたくこうやって単車を走らせているわけだ。
関係は明確ではない。
それについても考えた事がなくやはり自分の責任なのだろうかと思えた。
既に死んだ信号機を横目に寒空の下延々単車を走らせる。
あの、自分より年上の女の事を考えるわけだ。

出会いは確か誰かが開いていた合コンの二次会。
黒澤自身参加してはいなかった。
只その二次会の先が黒澤がバイトをしていた居酒屋であり、
そこで と遭遇したわけだ。

完全に舐められきっている合コンだった。
女達は年下である男達を完全に舐めきり笑っているだけだ。
収穫がないとでもいうのだろうか。
男達は男達で普段そうお目にかかる事のないタイプの女を目前に
やたらテンションが上がりきっており空振り具合が悲しささえ誘った。
次々に空くジョッキを片し怒涛の如く入るオーダーを運ぶ。
面倒な客だとさえ思った。

結局閉店まで騒ぎ通した一団の会計をしている際に―
酔い潰れ意識さえ朦朧としている男達を横目に
全額を支払った女はやけに凛としており黒澤が思わず声をかけた。
労いの、とでも言うのだろうか。
大変っスね、だったかどうだったか。
黒澤のそんな言葉にニコリと笑った彼女を見送る。
ヒールの音を響かせる彼女の後姿がやけに印象的だった。

その数日後 は突然居酒屋に姿を見せる。
似合いもしない場所に、そう思った。
その日はどうやら彼女一人での来店だったらしく、
それはそれでやはり似合わないと思った。

閉店後お疲れ様でした、等と挨拶を交わしながら店を出る。
がいた。
終点に乗り遅れでもしたのだろうか。
見るつもりはなくとも何となく視線が合ってしまい一礼した。
今度は が話しかけてきた。
少しだけ心拍数が上がったような気がした。


「・・・何してるの?あんた」
「お前・・・携帯見ろよ」
「・・・」


その事には一切触れず、それでも
中に入る、等と聞くものだから少しだけ苛ついた黒澤は
無言のまま押し入った。
まったくこれでは只の詭弁続きの日々ではないか。
何も変わっていない。
テーブルの上に置かれた飲みかけのグラス二つ。ああ。


「何か飲む?和」
「・・・客、来てたの?」
「ちょっとね。あんたが来る少し前に帰った」


新しいグラスの氷を入れる音が響いている。
そんな事よりも先にこの飲みかけのグラスを片付けろよと思いながらそれでも言わない。
何の気なしにテレビを付ける。すぐに消した。

ちょっと大人っぽい(ここに限る)話を書こうと思い、
まあ被害者は黒澤くんなんですが。
どうやらここの黒澤は引っ込み思案なのかという疑惑が。
そんな馬鹿な