入れ墨

哀しいと呟いたのは果たして何故だろうか、そんな事を考えていた。
自分が悲しいのだろうか、否哀しいのか。それともこちら、自分がか。
何れにせよ余り気に入る類の言葉ではなくムゲンは不機嫌になる。

繊細な気持ちの揺れ動き等まったく興味がない、共感も出来ない。
あいつにでも、ジンの野郎にでも任せろと出る寸でのところで飲み込んだ。
口先ばかりが逸り後悔する羽目になるのは目に見えていたからだ。
弱いか強いか、それでしか判断出来ないのだから仕方がないと思う。
歩んできた人生にて判断方法は決まる。
気が強かろうが強くなかろうが結局は己の力で決まる。
だから自分はこうも力を求めるのだと、それも知っていた。

じき は立ち上がり出て行くだろう。
ジン相手に相談なんて下らない事をする。
気持ちを知るのは己だけだというのにだ。

そんな事がやたら閃くもので流石に辟易としたムゲンは目を閉じた。
どの道曝け出さないのであれば本心なんてどうでもいい。
口に出したところで信用する道理はどこにもない。
思い次第でどうにでもなる。
それにしてもだ。まったく、この思いとやらは入れ墨のように
一度入り込めば消えないのだから性質が悪いとムゲンは思った。

名前変換が一つしかないという事よりも
まさか入れ墨という文字を使った話の次が
入れ墨という題名だとは夢にも思わず。