お前はどうしてそうくだらない話をもちかけるんだと

呆れたように呟いた伊武はどうやら機嫌が悪いらしく
そんな彼の様子を受け も機嫌を悪くする。
頭の中がサッカーだけだという事は重々承知だが
ここ最近まったく相手にされていないのだ。
挙句の果てには武者修行だと言い海外に逃亡する始末。
連絡手段も何もない。
その癖アポなしに帰国し携帯に連絡をいれず部屋へ来る。

「何してやがった」
「何って・・・仕事よ仕事!」
「仕事と俺とどっちが、」
「それはこっちの台詞でしょうよ」
「おう」
「何でちょっと素直なのよ」

久方振りに見る。
の髪が伸びたなあ、だとか少し痩せたんじゃねぇのか、だとか。
言いたい事は山ほどあるわけだ。
それでも余り上手く自分の気持ちを伝える事が出来ないと知っているから言わない。
姿を見れただけで構わない。何て案外質素な心の中も言わない。
どうしようかと思いふと視線を落とせば雑誌があった。
手持ち無沙汰も何なのでそれを手に取る。
女性用のファッション雑誌。
ページを開けば今年流行の化粧がどうの、だとか(伊武からみれば)
どうでもいいような事が書いてある。
ああ、そんな事よりも。
ルージュもとろけるキスをして

言わせたかったのさ、ああ、そうさ!
殺せ(あたしを)いっそ、殺せ(あたしを)