なぁ、何をしてんだ。

ゆっくりと立ち上がりながらエースは呟く。
今の今まで戦っていたようだ。きな臭い香りが鼻腔をつく。
殴られたか蹴られたか。
何れにせよ攻撃を喰らったのだろうエースは口元を軽く拭った。
余り細かな表情の分かる男ではないようで変化は分からない。
大体が笑顔、時にそれが消える。
そう。今目前のエースからは笑顔が消えているのだ。
違和感の理由はそれだった。
なぁ、お前は何をしてんだ。
エースがもう一度呟く。


「あんたこそ何、してるのよ」

「何してたと思う」


転げ落ちていた帽子を拾ったエースは微かに笑い表情を戻した。
何がこんなに怖いのだろう。何に自分は怯えているのだろうか。
エースが何をしていたのかを聞きたくない理由は何だ。
彼は石に座り込む。よいしょと呟きながら。


「・・・何してたの」

「お前をモノにしてた」


じっと目前、埃舞う大地を見つめる。
エースはを見ていない。


「何?」


「頑張ってみました」


何故彼の目は果敢ないのだろう。
まるで蜃気楼を見るような眼差しをしている。
焦げた大地を見ているのだろうか。焦がしたのは恐らくエース自身だ。
近寄ろうと一歩前へ踏み出せば立ち眩みのような感覚が襲う。
エースはこちらを見ているのだろうか。分からない。


「いつか死ぬわよ」


「誰だって、いつか死ぬんじゃねぇか」


そう呟いたエースは笑っていて、は愛していないのだと思った。
哀しさを覚えた刹那、何て身勝手な男だろう、
そう思い直し空しさを覚えた。

別れの時が咲き乱れ

エースが見たいなあ。