一生分のくちづけを
今夜中に交えよう





泥の様に眠った翌日、昼過ぎに目覚めれば硝子からメールが来ていた。怠い身体のまま腕だけを伸ばし携帯を手に取る。寝がえりさえも億劫だ。あの散々な夜がどういう風に終わったのかは未だに分からない。悟に殺される、と思った の予感は殆ど合っていて、散々責められ途中から記憶もない。


翌朝ハッと目覚めれば(というか、あれは覚醒した、に近いのだろう)全裸のまま散々体液を吸ったのであろう布団の上にいた。酸欠のせいか僅かに痛む頭はまるで動かずぼんやりと視線を上げる。


おはよ。片肘をつきこちらを見下ろす五条がいた。え、何この男。ずっと見てたの。凄い嫌なんだけど。五条も当然裸で、こちらもそうで、完全に事後丸出しの姿で朝を無事迎えたようだ。



「あの…」
「金曜の任務最高だよなー翌日土曜だからゆっくり出来るし」
「ちょ」
「一緒に二度寝しよ」



覆い被さって来る男から逃れようと身体を起こしかけるがもう全然動かない。死ぬほど筋肉痛になっている。全身が痛い。ヤバイ。別にこちらだって運動不足なわけでもなく、日常的に鍛錬を行っているというのにどういう事?そりゃ確かに悟と傑の手合わせとか目で追うのもやっとだけど、こいつらフィジカルのバケモノかよ…!


ぎゅっと抱きしめて来る五条の腕の中でどうにか体勢を変え背を向ける。五条の指が胸を揉んで来るのをどうにか阻止したいのだがこちらは全身が痛いし五条の指は長い。厳しい戦いだ。下手に背を向けてしまった為、がら空きになってしまった耳朶を噛み舐める。


ヤダ、ヤダヤダ。五条の指先は乳首を弾いていて目覚めたばかりの身体を火照らせた。昨晩あれだけヤった癖にどういう了見だ。そうこうしている内にぼんやりしていた頭もハッキリして来る。ハッキリしてくれば昨晩の事を思い出す。


あんなセックスは初めてだった。いや、これまで悟とは当然幾度もセックスをした事はあったのだけれど、所謂普通の、というかキスをして愛撫して正常位でセックス、みたいなそういう感じだった。別にこちらも経験値があるわけでもなし、基本的に悟がリードして始まって終わる。最中もこちらを気遣い触れるか触れないかのような優しいセックスで、故に昨晩とのギャップが凄まじすぎる。


分からない。気を遣っていたのだろうか。だからこの男は他の女と浮気をするのだろうか。え、でもあれを毎回やられたら私本当に死んでしまう。そんな事をグルグルと考えていれば腰の上辺りに熱い塊を感じる。え、嘘でしょ。この男、あれだけ出した(はずなのに)まだ勃つの!?



「ヤダ、やめ」
「濡れてるってか、これ俺が出したヤツじゃね」
「あ」



五条の指で左右に開かれた大陰唇にググ、と押し当てられた性器は容易く飲み込まれた。思わず身を屈める。五条は の身体を逃がさないように両腕でしっかりと抱きかかえゆっくりと腰を動かす。



「さ、とる、ヤダって…」
「物足りない?」
「そうじゃ、なくって」
「昨日すごかったもんなー」



超エロかったよ、と耳側で囁かれ否応なしに身体が反応した。え。何々?この人こんな感じだったの?じれったい程ゆっくりとしたストロークで出し入れする五条は の反応を伺うように昨晩の話をする。腹の奥の方、子宮近くがジンジンと疼くような妙な感触だ。五条の左手が の下腹部を撫で子宮の辺りをゆっくりと押した。深く、深く。



「あ、あ???やだ」
「すっごい痙攣してるヤバ」
「ぁああああああああああ…」



こんなにゆっくりとした刺激なのにグッと押された場所から気持ちよさが伝播した。溜息のような深く長く声が漏れ止まらない。自分でも膣内が幾度も締まっている事が分かった。凄い気持ちいい、と囁く五条の声も僅かに震えている。その時だ。



「おはようございます、悟坊ちゃま」
「!」



女将の声だ。隣の部屋に入って来たらしい。五条が指を の口の中に入れ舌を掴んだ。ゆっくり深く出し入れする。



「朝食はどうなさいますか?」
「置いといて」
「準備が終わりましたら、お声がけしますので」
「ありがと」



カチャカチャとご膳の準備と足袋が畳を滑る音が聞こえる。襖一枚挟んだ場所に見知らぬ人達がいて、その隣でこんな真似をしているのだ。声出しちゃ駄目だよ。小さな声でそう耳打ちした五条が深い所に性器を押し付ける。シーツを掴み何度もイった。もうまともに考えられない。昨日はアレ、今日はコレ。もう駄目。悟の事がよく分からない。こんなセックス教えて欲しくなかった。


「朝食の準備終わってますよ」と仲井さんが声をかけてきて、人の気配がなくなった瞬間、五条の動きは俄かに激しさを増し一気に射精まで向かった。混濁する意識の中でも、中は嫌だ、と言っているのに平気で中に出す。事後ピルあるから。お前が子供欲しいってんなら別にいいけど。汗ばんだ肌と上気した頬で五条は言う。全て想定済みという事か。ていうか、あんたどうたって事後ピル手に入れたの。



「…怒ってんの?」
「何でゴムしないの」
「んー何か、お前の中で出したかったから?」
「あのさ」
「生でヤったのも中に出したのも初めて」



俺の初めてに捧げちゃったね、そう言いキスして来る五条に抱えられ内風呂の露店へ向かう。確かに全身汗や体液塗れで気持ちが悪かったが、五条と入るとなると話は別だ。だけれど身体が思うように動かない。何でこの男、こんなに元気なの…。



「身体洗ったげるよ」
「いいって」
「だって 、もう碌々動けないでしょ」
「誰のせいだと思って」
「体力ないのは自分のせいでしょ」



全身にお湯をかけられ、次にシャワーで髪の毛を濡らす。五条の指は長くて手のひらは大きい。美容室でシャンプーを受けているような感覚に陥り、相変わらず器用な男だなと思った。



「毛先が痛んでますねぇ」
「嘘」
「勝手に髪、切るから」



今度俺の行ってるとこに連れてくね、と五条は言う。分からない。この別れで彼は変わったのだろうか?そんな事を考えてしまう私はバカなんだろう。悟は変わらない。これまでもこれからもきっと変わらない。わからない。だったら今どうして見た事のない一面を曝け出すの。



「はーい足、開いて」
「え」
「出さないと」
「自分でやるから」
「俺の方が指長いし」



露天風呂に逃げようとする を捕まえ膝の上に乗せる。両足を に抱えさえ膣内に指を突っ込んだ。膣内で指をぐちゅぐちゅとかき混ぜ体液を掻き出す。先程まで散々性器を突っ込まれていた膣内は充血しており五条の指が壁にあたる度、意思とは関係なく身体が反応する。



「もっ、もういいから…」
「全部出さないとさ」
「あっ、あっ、あ、あ、」
「ここかな」
「やっ、だめっ」
「ビンゴ」



五条が指をくの字に曲げ膣壁を強く押し擦った。勢いよく潮を吹く。こんなの初めてだ。潮ってこんな感じに出るんだ、とか思った以上に爽快感があるんだ、だとか肩で息をしながらぼんやりと思う。



「そこに手、ついて」
「…」
「こんなん見せられたら仕方ないでしょ」



そういう五条の声も上擦っていて、もう言われるがまま露天の縁に手を付く。潮を吹いた後の膣内は洗い流されたようにツルツルで性器を押し返す。五条はバックから性器を押し込んだ。










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という話を例のジョナサンで硝子と夏油相手に披露しているわけなんですけど、自分でもそこまで詳細に言わなくてもよかったかなって思ってます。周りの客とか引いてたからね。ごめん、私も今正気じゃないんだ。ごめん。


因みに冷え切った朝食を食べた後に五条から渡され事後ピルは服用しました。懸念されていた副作用も特に感じず、まあよかったかな、と。



「何も良くないからね」
「!」
「あんた、別にそれ何もよくないからね勘違いしてるっぽいから先に言っとくけどさ」
「で、ですよね」



相変らず厳しい硝子の隣、多少前屈みになっている夏油を見て思わず謝る。



「ごめん傑、勃った?」
「勃ってない」
「きわどくてごめん」



実際勃ったのだけれど、とりあえず体面を保つ為に嘘を吐いた夏油は、素数を数えどうにか窮地を乗り切った。こんなとこでそんな話するなよ …!親しい二人のそういう話、滅茶苦茶興奮する性質なんだな私。



「マジであんな悟初めてで超ビビったし、セフレとあんなプレイしてんのかと思うともう…私といつもヤる時と全然違うしさ」
「どうですか夏油先生!」
「セフレにはそういう事しないんじゃないか?」
「有識者のご意見お聞かせ願いますか!!」



硝子がマイク代わりにグラスを夏油に向ける。



「いや、私の話ではないんだけど」
「先生!!よろしくお願いします!!」



違うって!と言いつつ夏油は語り出した。



「そもそも悟は 以外と付き合う気はないと思うんだよ。今回の行動でそれは立証されたろう?」
「うん」
「あいつの行動を見てると、二度同じ女はないんだよ」
「ほう?」
「本当のセフレ、所謂ワンナイト。その日限り。同じ女と二度目ってのはないんじゃないかな」



まぁこれはあくまで一般的な話として聞いて欲しいんだけど、と謎の前置きをした上で夏油は言う。



「やりたい放題出来るセフレはその為に会うから切らないだろ?仮に彼女に対して憚られるような性癖があったとして、いや。私は違うけどね?私は本当、至ってノーマルだからさ。あ、話戻すけど、基本的にセフレに対する考え方って滅茶苦茶割り切ってるから、そこに情とかってないんだよ。セフレの子がさ、約束を破られたり彼女を優先されたりとかで、彼が謝ってくれない!とかショックを受けてたりするだろ?こんな事ある?みたいな…でも、セフレなのに何で?ってなるんだよ。可哀想とか思わないし、まさかそんなに傷つくとも思わないわけ。何故なら割り切ってると思ってるから。だからセフレを持ってる側は傷つかないし、セフレ側は滅茶苦茶傷つく」
「はぁ~流石よくご存知ですなぁ」
「やめてくれるかな?硝子」
「じゃあ何で悟はセフレを作るの?」



私がいるのに、と呟けば又、二の舞なのだとテーブルに突っ伏す。だからって別れてもこれなんだから詰んでる。本当、詰んでる。



「ま、あんたが悟と切れなきゃどうにもなんないわな」
「悟がここまで執着するなんて意外だったけどな」
「それはそう」
の事は好きなんだと思うよ」
「そうそう、愛し方が異常なだけで」



そんな事言われたって困るんだけどさ、と笑う。一番性質が悪いのはそれでも悟を好きな自分自身だ。










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---同時刻、五条悟---



え?確かにちょっと可哀想だったかなーとは思ったけどさ、まぁ普通に俺が無理。急に別れるとか言われても無理っしょ。そもそもさぁ、浮気浮気って何であんなに騒ぐかね?俺が好きなのは だけだし、遊んでる女の名前も顔も覚えてねーよ俺。だってそういうんじゃないじゃん。俺の生活に何ら関係ねーし。あいつらは。でも は違うじゃん?滅茶苦茶俺の生活に絡んでるっしょ。超大事じゃんそんな女。ああ、そうね。安心できるし。帰る場所みたいなそういうやつ。中々ねー伝わんないけど。


多分ね、何れあいつが俺に愛想尽かすんじゃないの。終わるんならその時だろーね。俺があいつを好きじゃなくなるのはありえねーから、あいつが愛想尽かして逃げてくの待ち。俺はこの通り変われないし変わらない。でも俺は好きじゃん?だから出来るだけ別れたくないわけ。好きだからね。だから、付け込む隙がある間は申し訳ないけどもうガンガン付け込むよ俺は。少しでも情が残ってそうなら全然いくから。性格悪いからさ、俺。それで、もうあいつの中に少しの俺もいなくなるまでしゃぶり尽くすよ。


だから言ってるでしょ。最終的に振られるのは俺。そんなのは分かってるんだけどね。俺はこのとーりダメな奴だから、どうする事も出来ねーってわけ。束縛されるのも嫌だしさ、嫌いになりたくないの。 を。だから自分が嫌な事はしない。 の言う事も聞かない。俺は俺のやりたい事しかしない。別に他の女と遊ぶのはやりたい事じゃないんだけど、わざわざ を理由にやらなくなるような事じゃないってだけ。空気みたいなもんじゃん、あんなの。


え?あいつが浮気したらどうするって?本気なら許さない。でもあいつ、出来なさそーじゃん。浮気とか。だから無傷じゃいらんないんじゃない?相手の男とか…まぁわかんないけど。その時にならないと。別にあいつに不満なんかねーよ。俺の浮気癖をあいつのせいになんてしねーって、あいつに非はない。あいつはマジで悪くねーの。まぁ、強いていうならあいつの罪は俺みたいなのを許すとこなんじゃないの。


で、あんた名前なんだったっけ?