「・・・何でついて来るの?」
「何でち、特に理由はなかよ」
「・・・って言うか」
あんた学校は。
がそう言えば九里虎は笑う。
まあ確かにあの学校の生徒に対し学校へ行けだなんて言う事は余りに馬鹿馬鹿しい。
だからといって(一言でいえば)余りに柄の悪いこの男を引き連れ
街中を歩くという事は余りお勧め出来ない行為の一つだろう。
妙に大きなこの男がの後を歩き出して10分強―
すれ違う人々がこちらを避けているような気がしている。気のせいだと思う。
「はどこに行きよるとね」
「どこって・・・特に決めてないけど」
「今日はこの角のパチンコ屋が新台入替ばい」
「・・・で、何よ。行けっての?」
たまの休みとなればこれだ。
つい最近は仕事終わりまでこの男が待っている始末。
同僚達が一斉にぎょっとした顔をしていた(そしてそれは面白かった)
待っているといっても特に予定はなく、まあ何かを食べに行ったり、
時には疲れたが直帰を希望しコンビニにだけ立ち寄り別れた、なんて事もあった。
それでも九里虎は飽きもせず毎度について回っている。
下手をすれば完全なるストーカー。
只、九里虎がそうならなかったのは悪い印象がなかったから(強面ではあるが)
そうして―まあ嫌でなかったから。それだけ。それだけだ。
「しっかし今日はよか天気ばい。どこに行くね」
「どこに行くって、あんた金あるの?」
「金はなくても遊べる―」
「どこでよ」
この状態を楽しんでいる自分を知っている。
九里虎と共に過ごす時間が当たり前になっている現状、これはマズイと自重する。
相手は子供だ。何を期待するのだろう、バカを見るのは自分なのだ。
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どんな女にも少なからず口癖がある、酷く幼い語尾だったり妙な接続詞だったり。
そんな癖を見るのが好きだった。頭数ばかりが増え
(それでも平等に愛しているはずだ)そんな語尾ばかりが残る。
の語尾は―――――
「ねぇ、どうしていつもいるのよ」
「会いたかったい、俺が」
「ストーカーみたいね」
「まさしくそればい」
「そうなんだ」
「そう」
俺はのストーカーたい。
ヘラヘラと笑いながら九里虎はそう言う。
まさかのストーキング宣言。
そう言えども許される事実を知っているからだ。
妙に計算高いと我ながら思っている。
延々歩き、流石にを連れ、パチンコ屋に向かうわけにも行かないだろう。
彼女の声が聞こえなくなってしまう。
確かこの先には古めかしくも雰囲気のいい喫茶店があったはずだ。
まったく喋らないマスターが異様に上手いコーヒーを淹れてくれるあの店。
「ときに。コーヒーは好きね」
「えぇ?何よ突然」
「この先によか店のあるったい」
「へぇ」
「さては、信用しとらんね?」
「信用してないとかじゃなくて」
似合わないなぁと思って。
何故か妙に意外そうなの腕を掴み先を急ぐ。
の歩幅は短い。身長の差のせいだと分かっている。
ゆっくり歩くのも嫌いではないが、もう、飽きた。
「そこでおいはに愛の告白ばすっとよ」
「えぇー?」
「そしたらは泣きながら―」
「ねぇ、九里虎」
「何ね。話の腰ば折る女やね」
「あんたが言ってた店って、あれ?」
の指差した先、『本日店休日』の文字がうつる。
唖然と立ち尽くした九里虎の横、腹を抱えて笑うがいた。
リクA湊さんへ。
九里虎がいっぱい喋るやつというリクだったんですが、
どうでしょう。話してはいると思うんですけど、けど、
こんなオチの付け方でよかったのかと切実に思う。
しかし!喋り方は正しいハズです・・・地元なので・・・
遅くなってスイマセンでした。そうして有難う御座います。