まず出会い、すれ違い様の視線、横行。
何かの式典の帰り道だったと思う。
堅苦しく詰まらない挨拶を年寄り達の為に行い、
それこそ辟易とした白蘭はくたびれた身体を引き摺っていた。
毛の長いレッドカーペットの引かれた廊下を歩く。
金を基調とした外装をぼんやりと眺めていた。
古い映画だったら恐らく落ちてくるであろうシャンデリアだったり、
狂ったカラスが今にも飛び込んできそうな飾り窓だったり。
どうにかこの退屈を紛らわそうとした結果の妄想だ。
狂ったカラスは飛び込んで来なかったものの、まぁそこで出会いはした。
すれ違い様感じた、それこそ直感的に。
あえて視線を残しはしなかったけども脳裏に焼き付ける。
翌日来賓者のリストを虱潰しに辺り名を知る。
聞きなれない肩書きではあったがちゃんとしたお客様ではあった。
か。ポツリと名を呟き指先でリストを撫でる。
聞きなれない肩書きに見慣れない紋章。
思い出せそうでまったく思い出せない薄い記憶が僅か揺れる。
やはり思い出せない。
それならば大した記憶ではなかったと把握する。
まぁ兎に角に接近しようか。
簡単に答えは出、まずは偶然の演出を。
わざとらしい演出を好むものだから、まずは抱えきれない程の花束を発注した。
「・・・うぅ、」
送り先はの所属する組織、それも本部にだ。
送り主は隠さず白蘭で。
何かしらの反応はあるだろうと思ってはいたが、
送り出した直後にではない(恐らくもっと偉いヤツだ)
老いた男から感謝の電話が届いた。まずは外壁から固める。
誰からも祝われる環境を作り上げ、
もうお前は何もしなくてもいいんだよと知らしめる。
の上司はすぐにを連れ挨拶にみえた。
マシュマロを差し出した白蘭はニコリと笑いの反応を伺う。
戸惑ってもいるのだろうし、緊張もしていたのだろう。
それにしても笑顔に無理が見え、又白蘭の頭の奥の方で記憶が揺れた。
ほんの少しだ。
「・・・」
老人の力もあったのだろうが、
それからは週一程度の間隔で顔を出すようになった。
何だかんだと白蘭が用件を告げ、その返答にが送られる日々だ。
彼女はどう思っていたのだろうか。今になりふとそれを思う。
腹を括ってもいたのだろうし、半ば諦めてもいただろう。
どう足掻いても逃げられないのだ。
あの日もは書類を手渡す為に白蘭の元を訪れた。
挨拶から始まり、他愛もない会話を一言、二言。
出来るだけ口数を少なく、極力早く帰りたがるを知っている。
だから弾いた。
まずソファーに座らせ真正面に陣取る。
恐らくはこの時点で気づいていた、諦めていた。
視線を僅かに逸らしながら奥歯を噛み締め、笑う。
口角だけが辛うじて上がっている。
手を握りニッコリと笑い、そのまま何も言わせず口づけた。
一瞬の身体がビクリと震えた。
その為だけに置いていたソファー、
リモコン一つで全ての出入り口がロック出来るこの部屋。
こういう事はよくある、だから皆あえて口に出さないだけだ。
初回は比較的無言のまま終了した。
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「もう嫌!嫌よ、嫌!」
「突然元気になって」
「ふざけないで白蘭!あたしが、何で、」
例のソファーに押し倒されているは
すっかり人が変わってしまったようで、
今もご覧の通り暴れ喚いている。
それでもマウントポジションは
白蘭に取られてしまっているからどうにも出来ない。
それにしてもの喚く声を聞けば
何か大事な事を思い出せそうで眉間に皺を寄せるのだ。
何かを忘れているような気がしてならない。
左手での両手を掴み、右手の己の服を脱ぐ。
それでもとっくに挿入済み―余りに煩く喚き散らすもので、
そんな口にはマシュマロでも詰めてやろうかと思いはしたものの、
それは忘れている事を思い出してからにしようと思った。
「なぁ〜んか、思い出しそうなんだけどなぁ」
「止めて!」
「昔、会った事ある?」
「知らないわよ!」
最初に一撃を加えれば
大概の女は大人しくなるはずなのにこれは多少の誤算だ。
まあ、大人しくなればその時点で興味はなくなる。
それを考えると嬉しい誤算にはなる。
好きになる過程がようやく発生したのだ。単なる興味から愛せる候補に変わる。
大して濡れる前に突っ込んだ性器は
どんな痛みをに与えているのだろうか。
想像する事しか出来ない痛みを何となく妄想、
息を大きく吸い込んだは(相当痛かったのだろう )
そのまま数秒息を止めた。
只濡れていない性器に挿入をするという事は
白蘭にも多少なりとも痛みを与えるわけで、少々ミスったかと思えた。
動き辛い上着を脱ぎ捨て準備は完了。
緩々と動き出せばの声が止まった。
白蘭の腕を掴み必死に突っ張る。逃れたいと。
「・・・っ、う!」
「擦れて痛い」
「ぅ、ぁ・・・!」
もう少し、もう少し。後少しで埋もれた記憶が蘇ると思う。
の顔をじっと見つめていれば
しっかりと閉じられた眼に薄っすらと涙が滲んでいる。
その時だ。その瞬間に思い出した。あれはいつだ、随分昔の事だ。
記憶の映像はまったくカラーではなくセピア色に保存されている。
所々にノイズが混じるように。確か殺して、そして足元に死体。
まだ十代中頃の事か?ああ、それなのに誰を殺したのか、そこが分からない。
何故殺したのか、そんな事は、
そういうものに理由なんて存在しないのが常だから気にはならない。
「ぁ、」
「・・・!」
「お父さん似かな、顔は」
「何」
「はは」
クローゼットの中から微かな物音が聞こえじっとそちらを見る。
恐る恐る顔を出した可憐な少女が白蘭の姿を目の当たりにし固まった。
血に塗れてもいるし、足元には数分前まで生きていた父親が伏しているのだ。
仕方がない。それこそ、その生きている数分間の間、
白蘭と談笑をしていたのだから。
動く事さえ出来ない少女に近づいた白蘭は
血に塗れたままの掌で少女の頭、そうして顔を撫でた。
視線を合わせとびきりの笑顔を向ける。
可愛いね、だったかお利口だね、だったか。
放心状態の少女にそう告げた。
「あ、んた」
「あんなに昔の事、覚えちゃいないよね」
「いったい、」
ボクだって忘れてたよ。
徐々に上がる感覚と体温。
の目が僅か空きこちらを見ている。
その眼差しがまるであの、
クローゼットからひょっこり顔を出した時のものと同じで
一瞬背筋がゾクリと冷えた。何ともいえない感覚が全身を包む。
絶頂にも似た、それでも少し違う。
口付ける為に近づけた唇はの唇に触れる前にポツリと告げる。
荒い息の中。あの時放心状態の彼女に囁いた同じ言葉を。
リクC56さんへ。
白蘭、エロというリクだったんですが、どうでしょう。
というかまず、遅くなって本当スイマセン(死んでもいい)
エロ、というかもう何か気持ち悪い(主に人が)話になったんですけど・・・
というかもう色気もクソもありません。本当すいません。
そうして又しても勝手気ままな過去の妄想。許しがたい。
リク、有難う御座います。