そういえば少し前にメールを受信していたと思い、携帯電話に手を伸ばした。
20時という妙な時間に寝入ってしまっていたらしく、
受信時刻は20:18、差出人は天地だ。
目覚めた時刻は23時過ぎで、付けっぱなしにしていたテレビには
中途半端な立ち位置の芸人の番組が流れていた。
天地からのメールは毎度ながら酷く簡素だ。
彼の気持ちばかりが優先される。
その癖、滅多に送られてくる事がないものだから、
うっかり付き合っている事実さえ忘れてしまいそうだ。
の方から会いに行く事もなく、天地がの部屋を訪れる事も稀、
となればどこで会うというのか。
あの酷く斜めに向いた眼差しを時折懐かしくも思うが、
どうやら住む世界が違うと断定されてしまったらしい。
そんな事は出会った時から既に分かりきっていた事だろうと思ったが伝えなかった。
数日前に街中で天地を見かけた。
似たような背格好の男達と一緒にいた天地は、
恐らくの視線に気づいていただろう。
それでもこちらに視線一つ寄越さなかった。だから納得をしてあげた。
何もかも全てを知る必要もないし、分かりたがる奴等が多い中、
隠そうとするのならば詮索する必要もない。
傍から見ても柄の悪さは変わらないのだと、
そんな事実ばかりを再認識しただけだ。
この部屋以外で天地が何をしていようと、
それはきっとには関係のない事で、
少しばかりその光景を目の当たりにしてしまったとしても、
何かを感じてはいけない。
確かに天地には、人を動かしたがる節があった。
思い通りに動かしたがる節が。
それでもには全てを受け入れる事が出来ず、
意思だけはその都度伝えるようにしていた。
あんたの事は好きだけど、あたしはあたしの事も好きなのよ。
だから全ては変えられない。
天地は詰まらなさそうに頷くだけだったが、頷いただけマシなのだろう。
それからは下手に口出ししてくる事もなくなった。
だから、天地は知らない。
天地といない間が果たして誰といるのか。
いや、その誰かも本当の事は知らない。だけが知っている。
だから、何れは地獄に堕ちるのだろうと思っている。
この狭い街の中、誰とも繋がりを持たない事の方が難しい。
「もしもし?」
天地からのメールはたった一言、
『連絡をくれ』それだけだった。
『今、何やってんだ』
「家だけど」
『お前の家か』
「他に、なくない?」
『どうだかな』
「…何よ、それ」
『…いや』
沈黙が訪れるなんて、予想はしていた。
『裏切るなよ、』
「分かってる」
『俺だけは、裏切るんじゃねぇ』
多くは語らない割に、やはり意向だけは伝えるのだから、
だからあたしは迷走するんだと、そんな事を思っていた。
天地の事をよく知っている彼も同じような事を言うだろうか。
いや、恐らくは言わない。
顔も見せない癖に裏切るなと言える男とは違うという事だ。
「あんた、ちっとも顔を見せないわね」
『忙しいんだよ』
「いつもそう言うのね」
『じゃあな』
一方的に切られる通話はいつまで続くだろう。
もし、明日にでも電番変更をしたら天地はここへ来るのだろうか。
そんな詰まらない事を考えてしまえば、又眠れなくなるので、
は溜息を吐きながら携帯をベッドへ投げ捨てた。
メールを頂戴したので、ワーストから天地。
いや、天地なんですよこれでも…
イマイチ把握出来ていない感満載という。
しかし、久々に海賊以外を書いてみたんですが、
どうやら脳内が完璧に海賊一色になっているようだ。
故に、馬鹿みたいに暗い話になってしまった。
彼、は拓海とかでどうだろう(何がどうだろう、だよ…)