僕を憎んで、どうか僕の思惑のままに





どうか俺と一緒にいてくれ、そのような言葉を笑わずに言う事が出来る。
じっと相手の目を見つめ、それこそ真摯な眼差しで。嘘ではないからだ。
口にしている間は決して嘘ではない。まあ、放たれた後は分からないだけだ。
もう俺のものじゃねぇよぃ。
それにしたって はちっとも心を開かないのだ。
優しくしても厳しくしても何をどうしても開きはしない。
こちらは、こんなにも開けっ広げに待っているというのに。
どうにも詰まらない男との腐れ縁を切れないでいるから、友達の体で露骨に接近した。
すると野朗は、こちらも露骨に嫉妬なんてするものだから引けなくなった。
情なのか何なのか、いい目を見てもいない癖にずるずる引き摺っている。
他人が口を出す部分ではないが、どうかな、 。俺の方がいいんじゃあねぇか。


「ちょっ…マルコ」
「無防備に、こんなトコに来るお前が悪いんだよぃ」
「だって、あの」
「俺の気持ちは知ってた癖に」


だから、いよいよ最終局面を迎えたかったわけだ。
マルコにしてみれば。故の強行。
あの男が出かけた隙を見計らい に手紙を出した。
彼女が疑いもしない花売りの子供をメッセンジャーに仕立て上げて。
エメラルドグリーンの薔薇と一緒に。


「もう諦めて、俺と一緒になりなよぃ」
「こんなの」


ずるい。だったか。
が口走るより先に口付けていた為よく分からない。
細い手首をきつく握り締め、身体を近づけ口付ける。
この夜が終われば はいつもの生活に戻り、
そうして悩み苦しむだろう。夜に苛まれ。
天使だとか悪魔だとか、その類は信じてもいないが
例えるなら自分が悪魔だったとしてだ。
もう何を考えても の頭の中から消えてなくならないようにしたかった。
ほんの些細な日常の隙間にでも思い出すような存在、そうなればじきに隙間を越える。
お前をそこまで餓えさせるんなら、そいつは大した女なんだろうな。
エースはそう言っていたが、同時に厄介な女だとも言っていた。
二人の男を狂わせるたいしたタマだと。
狂わされてるのはどっちだ。


「ずるいのはどっちだよぃ」
「何…」
「ずるいのは 、お前の方だろ」


熱に侵された身体を止め切れず、
頭の中から消えやしない の扱いに手を焼き結局はこんな有様だ。
まるで童貞のように震える指先で頬を撫で唇に触れる。
お前も俺みたいに狂っちまえばいいんだよと掠れた声で囁いたが届いただろうか。





焦がれるマルコ。
何故だか今回の更新は二つとも
彼氏持ちに手を出す男という…
2009/12/12

AnneDoll/水珠