確かにあの頃は飢えていたのだろうと思う。
大罪と呼ばれる全ての欲に対して飢えていて、
そうすれば自ずと怒りが増えるわけで、
ロクなものではなかっただろうと我ながら思った。
まあ、何故今そんな事を思っているのかといえば、
ぼんやりと目の前で行われている若者どもの遊戯を見ているからであり、
少々強引に女の腕を引く若いクルーだとか、
半ば無理矢理気味に女を担ぎ上げているエースだとか、
まあそんなものを目にしていた。
若さには勢いがあり、パワーがある。
それが暴走し、あんな行動を取らせるのだろうと、
まあそんな事を考え始めたとなれば
随分歳を取ってしまったのだろうと一人で笑った。
「何してるのよ、マルコ」
「?何だよぃ、お前。戻って来たのか」
「今戻ったわ。疲れた」
「お疲れさん」
親父から所用を申し付けられたは、半月ほど船を離れていた。
「ていうか、戻ったらこの有様って…何よこれ」
「昨日から飲みっ放しだよぃ」
「元気よねぇ」
「お前も飲めよぃ」
何だかんだと理由をつけ、皆よく飲む。
静けさを憎むかのように騒ぎ続ける。
誰もが通り過ぎた道で、
だから少しだけ離れた場所からマルコは皆の様子を見守っているわけだ。
隣に座ったがこの道を通って来たのかどうかは分からないが、
彼女も見守る位置を選んだらしい。
そういえば、が泥酔した様なんて見た事がないと気づく。
しかし。酔わせてどうこうするような歳ではないと自重した。
「おい、どうした?それ」
「え?」
「その、傷」
「ああ、これ?」
が笑う。
「自分でも信じられないんだけどさぁ、厄介なのに遭遇しちゃって。まぁ、当然ながらやり合う事になっちゃったんだけど、その時にもらっちゃった」
「昔の男かよぃ」
「昔ったって、相当昔よ?恨まれてたわぁ」
笑いながら恨まれていたと言うの首筋には赤い線が走っている。
確かに相当恨まなければ狙わない箇所だし、
本気でなければも負わない傷だろう。
自分はどうなのかと考えるが、生憎こちらは男では女だ。
付け狙うような真似はしないだろうと、安易に思う。
「あいつらもさぁ、同じ目に遭えばいいのに」
「そりゃ、ねェだろよぃ」
「そうなのよ。ズルイわよねぇ」
「仕方ねェさ」
お前は女だからと、うっかり口を滑らせてしまった。
食ってかかられるかと思っていれば、
が笑い出すものだから驚く。
「何だよぃ…」
「い、いや…マルコがあたしの事を女だって言うから、意外で」
「はァ?」
「そういう風に見てくれてたの?」
「…」
何故だか急に気恥ずかしくなり、一気に酒を煽った。
空気の変わる瞬間だ。
こんな瞬間を迎えたのはいつ振りだろうか。
いや、それなら俺も言うけどよぃ。
「お前も俺を男だって思ってたのかよぃ」
「えぇ?」
大人はズルイ生き物だから、決して己の口から確信を伝えない。
相手に言わせようとする。
互いに答を保留したまま、身体だけが正直に動き出そうとする、
それをどうにか抑えている状態。
言葉一つ繋げる事が出来ず、僅かな時が過ぎ去れば、
がこちらにもたれかかってくるものだから、
何も言わずに肩を抱いた。
マルコ書いてねえ(キッドにかまけすぎて)
と思い、書いてみたんですが甘いなあ。
え?甘くない?99GIRLS内では相当な糖度を…
エースは男の子、マルコは男。という話です。
書き手の年齢がばれるよね…!
2010/8/25
蝉丸/水珠
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